それは“ライブ会場”のような電子書籍――「ぷよぷよ」米光氏らが作る「電書カプセル」とは(2/2 ページ)

» 2012年12月13日 11時19分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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「雑さ」を楽しむのも電書の魅力と米光氏

 書き手がWebのツールから簡単にコンテンツを配信できる利点を生かし、イベントの内容を電書としてタイムリーに提供する、といった使い方も開発陣は想定している。具体的には、トークショーなど各種のイベントをその場でテキスト化し、電書として配信。イベント参加者が「帰りの電車でイベントを電書で振り返られる」ような、スピード感のあるコンテンツ提供を可能にしようというのだ。実際、米光氏が過去に行ったイベントでは、終了後に電書を発行して来場者に提供したことがあるという。イベント会場の運営者がカプセルの作者アカウントを持ち、その日のイベントの様子を電書で提供するような態勢が作れれば面白いと、武田氏は期待を寄せた。

 内容を完璧に作り込んでから販売する紙の書籍とは異なり、電書には「ちゃらんぽらん」、あるいは「雑に」に作れる楽しさがあると米光氏は話す。読者が間違いをコメントで指摘したら、アップデートをかけて内容を修正する――そんなコメント機能の使われ方も想定しているそうだ。読み手にも書き手にも気負わず電書を楽しんでほしいという思いは、カプセルトイを思わせるアプリ名にも表れている。


 電書カプセルの企画は元々、米光氏、八田氏、畦地氏らが“ノリ”で作り始めたものだったが、サービスに将来性を感じ、持続できるものにしたいという思いから、カイユウとタッグを組み本格展開することにしたという。収益モデルとしては、無料作品の広告収入のほか、有料作品のレベニューシェアがある。有料作品の売上の分配は、Appleが3割、運営が3割、著者・編集が4割という比率になっているが、アプリの利用者が増えれば運営のシェアを減らして書き手の割合を増やす予定だ。

 電書カプセルに作品を投稿する作家は、現状では運営者側により限定されている。しかし、Kindle ダイレクト・パブリッシングのような個人出版サービスがいろいろと登場している昨今、より幅広いクリエイターが使えるプラットフォームへと進化する方向性もありそうだ。もし投稿機能が開放されるようなことがあれば、市井の作家志望者や同人作家などにとっても、興味深いプラットフォームになるのではないだろうか。

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