インタビュー
» 2013年03月14日 10時00分 公開

KDPによる個人出版ブーム、老舗サービスの辿る道は:ブクログ吉田氏に聞く「パブー」の今後 (2/4)

[山口真弘,ITmedia]

外部ストア連携機能が生まれるまで

パブーのプロ版

―― 分社化によって露出やマネタイズをより積極的に行う必要性も出てきたのではないかと思いますが、その辺りの変化はいかがですか。

吉田 いまの事業はブクログとパブーの2本柱ですが、ブクログは以前と特に変わりはないですね。最近はiPhoneなどスマートフォンのアプリを使うユーザーさんがかなり増えるなど、利用デバイスの変化こそありますが、読書管理・蔵書管理としてお使いいただいていることに変わりはないので、それをどうマネタイズするかということで、出版社さんのプロモーションをお手伝いする企画を増やしています。先ほどの献本は効果を認めていただいていて、頻繁に話をいただくようになりました。

 それ以外だと、出版社さん向けにマーケティングデータを提供していきたいと思っています。発売された本がブクログに登録され、さらにレビューが書かれるまでにタイムラグがあるわけですが、それは本の種類ごとに違う傾向があります。そこに販売データやPOSデータ、ランキングなどを合わせた相関が出版社さんのアカウント単位で見られると面白いんじゃないかと模索しているところです。

 あとはレビューデータ自体の外部提供です。GoogleさんであればGoogle PlayブックスやGoogleショッピングなど、いろいろなページ上でブクログが保有するレビューを表示していますが、hontoさんやBookLive!さんといった他の電子書店さんも、レビューがあった方がいいと思われているはずですので。かといってゼロから集めるのは大変ですから、紙と電子で同じタイトルが出ている本に関しては、ブクログの中のレビューデータをご活用いただく提案を考えているところです。

―― なるほど。パブーに関してはいかがですか。

吉田 一番大きな変化としては2012年の夏、Koboさんとの連携を皮切りに、Kindleストアなど外部ストアでの販売を始めたことです。いわばディストリビューターのポジションですかね。契約上、我々は出版社という扱いになっているので、KoboさんやKindleさんのところでは「出版社:パブー」と書いてありますが、実際には従来の出版社がやっていることとは違っていて、ディストリビューションに近いところがあります。いまはGoogle Playブックスさん向けの準備をしています。

―― これはプロ版という有料の機能なんですよね。

吉田 はい。月額525円のプロ版で外部ストア連携機能を使えます。今のところ5冊という制限があって、Koboに5冊、Kindleに5冊と、別々に出すこともできます。

―― 5冊という制限は、どういう理由で生まれたんですか?

吉田 外部ストアに出すときに、一冊一冊チェックする人手が掛かるからです。Koboさんの場合、フォーマットはEPUBなのでそのまま表示できるはずですが、Koboのリーダーだと制御文字周りの扱いでダメだったり、またKindleの場合は変換でエラーになる場合もありますし、そのチェックに人手がかかるので、冊数を無制限にするとパンクしかねない。なのでいったん5冊という制限付きでスタートしました。

 今年に入ってからノウハウも溜まってきて、問題のアタリもつけやすくなってきたので、もう少し増やしても大丈夫だろうということで、近い将来に増やす予定です。上位のプランを作るか、拡張するかはまだ分かりませんが。

―― なるほど。この連携機能によって、パブーが個人出版をされる方を束ねる形での「出版社」になるというわけですね。

吉田 そうです。商業出版物中心の電子書店関係者の方で個人出版に興味がない方はほとんどいらっしゃらないと思うので、そういったところにパブーがくっつく形でやれるといいんじゃないかなと。

―― 著者の側から見て、直接ではなくパブー経由で出すメリットはどうお考えですか。

吉田 Kindleに関しては、KDPでも料率が35%と70%の2種類から選べますが、35%の方ではパブー経由で出しても同じ料率をお返しできるので、純粋に税金や小切手などにまつわる手間が掛からないことが強みです。米国とのお金のやりとりに関する部分がなくなり、普通に銀行振り込みされますので。70%の料率に関しては張り合えるところがありません。なので、メリットとなるのは手間がない部分ですね。

 あと、Kindle以外にもKoboにも出せて、Google Playブックスも準備をしていて、その他にもiBookstoreなど、出せるところには全部出したいというスタンスでいるので、ワンストップでできるという点もメリットとして感じていただきたいです。大きく分けて「手間が掛からない」「ワンストップでいろんなところで出せます」という2つだと思います。

―― 2年前はプロの漫画家さんやジャーナリストの方が参加されたことで話題になっていましたが、最近の売れ筋はいかがですか。

吉田 最近は漫画と、それ以外では技術書が数もあって売れていますね。

―― 技術書ですか。エンジニアなどの職種の方は、そうした本に対する投資が積極的なのかもしれないですね。

吉田 それはあると思います。うち以外でも、達人(出版会)さんなどはその範疇に入ると思うんですが、エンジニアの方たちはDRM付きの本を嫌がるので、うちや達人さんは買っていただきやすい感じはしますね。

 漫画の場合は、必要なのは画像を連続的に作っていくことだけなので、パブーでもJPEGをzipで固めてアップすれば済みますが、技術書だとソースコードをどう書くか、レイアウトを考えなくてはいけない。その点パブーだとHTMLが使えるので、技術書を書けるレベルの方なら自分でクリアできるのかなと思います。別途作ったファイルをインポートすることもできるので、自前でTeXで書いて、PDFに整形してそれをアップしている方もいらっしゃいますし。

 漫画以外でも、パブーで最近一番売れてるのが言論誌で、「言志」という、尖閣諸島の話題などに触れた本があるのですが、これがほぼ毎月、これまでに7冊発刊されていて、定期的に買われる方がいらっしゃいますね。新しい号が出たら前号も同時に売れることもよくあります。漫画も同様で、シリーズで続き物を出した時に、新しい読者がちょっと増えて、その前の巻もちょこっと動いたりと、続き物で出すことで動きがよくなる傾向がありますね。

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