電子書籍の未来はソーシャルリーディングにあるか?

ソーシャルリーディング――読書という孤独な作業に彩りを添えるこの機能は電子書籍の魅力として喧伝されたが、実際のところはどうなのだろう。

» 2013年03月21日 14時00分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 過去、ソーシャルリーディングを行うには、自分の近所にいる誰かを探さなければならなかった。しかし、インターネットの出現により、自分と本の好みが重なる人を探すのはそれほど難しいことではなくなった。電子書籍や電子書籍リーダーについて言えば、読書という孤独な体験をソーシャル化する新技術の開発に企業は腐心してきた。

 AmazonとKoboの電子書籍リーダーはコミュニティーでの議論に参加する手段を提供しており、GoodReadsのようなWebサイトは大きなコミュニティーを形成している。電子書籍の未来は純粋にソーシャルな体験にあるのだろうか。

 数年前、KoboはReading Life、Pulseという名のプログラムを開始した。これにより、ユーザーは読書することで友人とリワードおよび読書量などのアチーブメントを共有できる。Pulseは何人のユーザーが読書中か、何人のユーザーが所有している本を読了したかを知ることができる方法も提供している。コメントしたり、ある本が好きな人とチャットしたりすることもできる。最も優れた機能の1つは、ネタばれ防止機能かもしれない。ユーザーは自分よりも読み進んでいる人のコメントを非表示にできる。

 これらのプログラムはKoboが提供するあらゆる電子書籍リーダー、タブレットにバンドルされている。同社は基本的にソーシャルリーディングに関して最も先進的で、プログラムの立ち上げ当初はPulseを利用して数人の著者とチャットする機会すら提供していたが、それ以降は特に何も行なっていない。

 Barnes & Noble、Amazon、ソニーといった電子書籍リーダー端末を製造している企業はすべからく読書体験にソーシャル的な要素を提供している。Pulseほどのインパクトはないかもしれないが、Facebook、Twitter、Evernoteを利用してノート、ハイライト、引用をシェアするのはかなり容易だ。Amazonは最近、本を読み終えたことを友人に自動的に知らせる新機能をKindleに導入した。読書はここ数年で確実にソーシャル化しており、ソーシャル機能のない専用リーダーを探すのは難しいのではないか。

 GoodReadsのようなソーシャルコミュニティーを利用すれば、互いに読書リストをシェアし、読みたい本についてコメントし、読了した本、読書中の本についてスレッドを立てることができる。著者、そしてレビューを書き、気の合う人をフォローする本の愛好者がかなりしっかりとしたコミュニティーを形成している。また、ScribdもFacebookにログインすると、友人がシェアしていることと、Facebookで「いいね!」したデータと趣味・関心リストに基づいてパーソナライズされたお勧めコンテンツを表示する新ソーシャル機能を開発した。何か楽しめるものを見つけて、「いいね!」ボタンをクリックすると即座に友人とシェアできる。

 しかし、率直にいって、これらすべての読書コミュニティーはしばしばインディー著者が自主出版した書籍を販売する場になってしまう。実際、ソーシャルリーディングとはそんなものなのだろうか。どうもそのようだ。

 ソーシャルリーディングは、ほかの読者と意味のある関係を形成する実際的な解決策ではなく、基本的には最近のバズワードにすぎない。ソーシャルリーディングはFacebookとTwitter上でハイライトをシェアしたりノートを取ったりする機能を中心に開発されることが多い。多くの本好きは内向的で、どのようなソーシャルアクティビティを採用できるか何のアイデアも持っていない。何冊本を読んだか、ある特定の本がどれほど好きかを自慢する必要があるのは往々にしてナルシストだ。

 電子書籍リーダーと電子書籍の興隆により地域のブッククラブはほとんど死に絶えてしまった。大手電子読書企業は適切な仮想ブッククラブを形成するための施策は何もなく、また、そうするつもりもないだろう。ソーシャルコミュニティーはある本の好きなところを語り合う場というより、恥知らずな宣伝の場と化している。電子書籍の読書習慣をシェアすることはFacebookのウォールを読んでいる本に関するアップデートで埋め尽くしたり、Pinterest上で本の表紙をシェアしたりといったことにしばしば帰着する。これがソーシャルリーディングの未来なら、筆者はそれには加わりたくない。

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