ドイツ電子出版業界:Amazonにより生じた変動期

ドイツにおける電子書籍の普及は進みつつあるが、出版企業と書店はここ数年の電子書籍の急激な成長に対して備えができていなかった。新たなパラダイムへ対応するための変化の過程にある同国の業界動向は他山の石となるだろうか。

» 2013年04月03日 16時50分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
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 2年前、ドイツにおいて読者が電子書籍を選択する割合は全体のわずか4%だった。それが現在、消費者の11%がテキストに対する渇望を電子書籍、電子教科書、電子雑誌で満たしている。iPadとAmazon Kindleは拡張的なエコシステムを持ち、その場に加わるよう出版社を刺激したことが、この成長を促している。ドイツの出版業界は嘆かわしいほどに電子化への備えがなく、業界全体は新パラダイムへ対応するための変化の過程にある。

 過去数百年、Suhrkamp、Hanser、Ullstein、Fischer、Rowohltといった出版社が最も魅力的な書籍制作の先頭に立っていた。書店は形勢が不利になり、これら出版社の一部は、より多くの読者が電子プラットフォームへ引き寄せられるにつれ、危機を感じている。「出版業の黄金期、つまり読書、思索と文学教育はどうやら最期を迎えたようです」と、ドイツ出版界の最後の重鎮の1人とされ、ミュンヘン拠点の出版社Hanserの社交的なマイケル・クルーガー社長は言う。

 クルーガー氏だけではなく、ドイツの複数の書籍専門家も「何十年もの間、出版ビジネスには変化がありませんでした。初めて危機を迎え、その後すべてが変わって見えるでしょう」と述べている。

 ドイツの書籍販売業界はIndigo、Barnes & Nobleで顧客が目にしているのと同じような顧客体験を提供している。本の販売は減少し、独占的に文学書を販売する代わりに、これらの企業はすべて動物のぬいぐるみ、キャンディー、キャンドル、季節のアクセサリーの販売を開始している。Thaliaといったドイツの書店はすべて書籍の比較的安価な価格を維持するための新モデルを試行しており、電子書籍と競い合っている。

 ドイツはApple、Amazonという世界的な2大企業とどのように競い合えるだろうか。Weltbild、Hugendubel、Bertelsmann Club、Deutsche Telekomは先日、電子書籍リーダー「Tolino Shine」に魅力を沿えるべく連帯し、電子書籍ストアを従えている。これらの企業が連帯してAmazonに代わる選択肢を提示し、広域の販売店網を通じてハードウェア販売を行うのは初めてのことだ。30万冊以上の書籍が購入可能で、国内のベストセラーと地元の作家に重点を置いている。

 これらの企業は電子メールとソーシャルメディアによる読書の中断を制限し、読書に重点を置く新電子書籍リーダーを共に立ち上げるために連帯した訳ではない。AmazonとAppleが出版社に共有していない顧客データへのアクセスを獲得するためだ。デジタル領域を理解し、そこでうまくやっていくために、顧客が誰で、何をしていて、何を買っているのか知る必要がある。新たな電子書店を立ち上げ、主要な書店がその支援に回ったのはそのためだ。

 紙書籍と電子書籍ということになると、ドイツでは大きな変化が生まれている。国内で書籍の価格は固定されており、小規模書店が大規模チェーン店と競合するのに一役買っているが、高価格の紙書籍の代替として国外企業が市場を安価な電子書籍で溢れさせている。紙書籍の存在を再度強調するために、Leipzig Book Fairと一体となった新キャンペーンが立ち上がった。読書にセクシーさを取り戻すべく非常に洗練された一連のCMと新聞記事が制作されている。しかし、これはあまりにも小規模で、タイミングが遅すぎ、ダメージコントロールとしてさえ機能しないかもしれない。

 出版企業と書店はここ数年の電子書籍の急激な成長に対して備えができていなかった。特にドイツでは自主出版するための方法がなく、野心的な著者は海外企業にアプローチする必要がある。教科書出版企業は電子化への歩みを進めておらず、雑誌企業もまた同様だ。状況は大きな変化を必要としており、さもなくば昔ながらの書店は2015年までに倒産し始めるだろう。

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