インタビュー
» 2013年05月13日 08時00分 公開

「ゲームセンターあらし」を無料連載、その意図とは? 太田出版の“web連載空間”「ぽこぽこ」に迫る (3/3)

[山口真弘,ITmedia]
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電子書籍で“再放送”をどんどんやればいい

人気のある作品はやはり吹き出しが多く、単行本の売上もいいと林氏。今後は他社もうまく巻き込んで行ければと話す

── 今回のあらし公開時の反響はすごかったようですが、Twitterでのリツイート数も目に見えてすごかったですね。

 そうですね。PVでいうと、ぽこぽこがオープンしてから3番目、オープン初日、2日目以来のアクセスでした。さすがにあらしは強かったです。

── 今後、第2弾や第3弾はあるんでしょうか。

 やりたいですね。本当は毎日1作品ずつ旧作を上げていきたかったんですよ。あらしも、本当は夕方17時にアップしたかったくらいで。

 僕らが子供のころ、夕方17時にアニメの再放送をよくやってたじゃないですか。その時間に、アニメの再放送を観る感覚で、ゆる〜く、懐かしく楽しんでください、という感じでやりたかったんです。あらしが成功したので、毎日夕方17時スタートという枠を設けられるといいな、とは思っているんですけど。

 あとは、こういうやり方があることが分かったから、今後はうまく他社さんを巻き込みたいですね。僕としては、他社でプロモーションを検討している作品があれば、ぽこぽこで吹き出しコメント付きで掲載、読者も巻き込んで盛り上げて行ければ絶対効果があるのになって思いますよ。それこそ『キン肉マン』や『北斗の拳』、あと『ガラスの仮面』とかがぽこぽこに載ったら、みんな、ものすごく吹き出しを書きたいハズなんですよ。だから、この記事を見て、どこかのアグレッシブな版元の方が声を掛けてくださるといいんですけどね(笑)。

 ぽこぽこは“場”として機能しているだけなので、他社の作品が載っていても全然おかしくないですし、極端な話、あらしがうちだけじゃなくJコミに載っても、僕らはウェルカムなんですよ。両方であらしが公開されることで、1人でも多くの人が作品に触れて、さらにコメントを書きたい方はうちに来てくれれば良いわけですから。

── 当時の人だけじゃなくて新しい読者も巻き込めるわけですからね。

 Twitter上のツイートを見ていると、あらしを初めて読んだ方が多くてびっくりしました。僕自身、あらしが新連載という形で読める21世紀が来るとは! と思ってます(笑)。

── ぽこぽこのトップページではあらしの下に『週刊 超ファミコン』が並んでますからね(笑)。あらしとファミコンがそろって連載されている21世紀。

 いつの時代だこれ? みたいな。でも、みんな意外とひとつの作品を通しで読んでいないんですよ。『巨人の星』なんかもそうですけど、もし無料で読めるのなら、この機会に最後まで読んでみようかな、となる。そういうムーブメントを作り出せれば、漫画というものが、もっともっと豊かになると思いますね。

── 先日どなたかが、今の漫画家さんは同世代の漫画家さんが描く作品だけじゃなく、過去の作品とも戦わなきゃいけない、という話をされていましたが、まさにそのパターンですね。

 そうなんです。うちの連載作家さんでもあらしを(ライバルとして)意識する人は意識するでしょうし。それこそ“手塚治虫の新連載”があってもいいと思うんですよ。例えば『ブラックジャック』がWebで週刊連載されていればすごく読みたくなりませんか?

 さっきの夕方17時の話じゃないですけど、『ガンダム』でも『エヴァンゲリオン』でも、再放送で大きくブレイクしましたよね。再放送というのはテレビ屋さんの発想だと思いますが、電子書籍でもそういうのをどんどんやればいいと思います。誰かの足を引っ張るわけでもないし、いい作品は何回読んでも面白いですし。

── 太田出版は社是に「根源的、挑発的」というのを掲げていますが、ぽこぽこにもその血脈が感じられますね。

 それは、あるんじゃないですかね。最初にお話したように、とにかく僕たちは「紙が一軍、Webは二軍」っていう認識というか、先入観をひっくり返したかったんです。今後はWebを一次媒体として作品を発表していくケースが絶対増えると思いますから「むしろ、未来はこっちでしょ」って。

 ぽこぽこは「電子書籍元年」と言われた2010年にコンセプトを固めて、翌年の4月14日にオープンしてますから、意識としては“現状”に対するカウンター以外の何物でもないんですね。名前はフワッとしてますけど(笑)、そこは常に戦っている意識はあるんです。あとタイミングとして赤松(健)さんのJコミの正式オープンと2日しか違わないっていうのは、決して偶然ではないと思うんですね。

 あらしはJコミで公開するんじゃないかと思われてましたけど、うちで公開して「やったー!」みたいなことを言ってて(笑)、これもある種の挑発ではあるんですよ。これで赤松さんがイラッとされて、さらに面白いことを仕掛けていただけたら、僕たちも「やられたー!」「負けないぞー!」って思いますから。そういうキャッチボールをやっていくことで、Webをめぐるマンガの状況がドンドン面白くなっていければな、とは思うんですけどね。

 竹熊さんがTwitterでマンガの未来に関して刺激的なことを書かれているのも、そういうところがあると思うんです。そういう意味では、ぽこぽこは竹熊さんの『マヴォ』と近いものがあるのかもしれないですね。もともと竹熊さんと僕らの距離が近かったというのもありますし、『同人王』のコミックスも当社から7月に発売されますからね。

── 最後になりますが、今後、ぽこぽこに掲載される作品の方向性として志向されているものはありますか?

 ちょっといい話よりも、むしろ心に傷を残すもの。バイオレンスとまでは言わないですけど挑発的で、刺激的なものをやれればな、とは思ってます。あと、漫画家さんには高いテンションをキープしてやっていただきたいので、原則的には1巻完結でぎゅーっと絞った形で勝負しましょうという方針はありますね。

 いまは新連載を仕込みまくってるんですけど、今年の秋辺りに大攻勢をかける予定なので、乞うご期待! ですね。

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