ファンコミュニティー、違法なコミック共有に対して呼びかけ

北米で日本の漫画・アニメの翻訳出版などを手掛けるViz Mediaが運営する「SuBLime」のコピーライト保護システムは2つの部分から成立している。1つは電子透かし、もう1つが忠実な読者コミュニティーだ。

» 2013年05月22日 16時57分 公開
[Brigid Alverson,Good e-Reader Blog]
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 北米で日本の漫画・アニメの翻訳出版などを手掛けるViz Mediaが運営しているSuBLime。やおい系またはボーイズラブなどのコミックを出版しているレーベルだ。電子版は基本的にはDRMフリーのPDFで提供されている。デバイス間の移動も楽で、出版社やアプリがなくなっても消滅しない。まさに多くのファンが望む電子コミックのフォーマットで提供されているわけだ。

 PDF版の問題はその長所と同じくデバイスからデバイスへ簡単に移動できることで、海賊版でもよく見かけるファイル形式となっている。SubLimeはPDFに電子透かしを導入し、事態を成り行きにまかせているところが、SubLimeにとって有利に働いていることはもう1つある。それはコミックの読者同士が強いコミュニティー感覚を共有していることだ。ある作品が海賊版サイトにアップロードされていた際に、ファンはすぐに同社に通報した。SubLimeのスタッフはこのことを自サイトで以下のように取り上げている。

ファンがシステムを乱用し、海賊版サイトへのアップロードを行う場合は、作品をすぐに入手不可にすると初めから明言していました。その重大性を理解してください。作品の販売が中止になるばかりか、日本の出版社も作品を電子化させることへの関心を徐々に失うでしょう。あなたの行動で、このジャンルやそのほかのジャンルのファンを痛めつけないでください

 海賊行為の結果はこうなる。

海賊版サイトへのアップロードを行った場合、ユーザーアカウントを停止し、そのアカウントで購入したすべての作品へのアクセスができなくなります。――中略――ほかにどのようなことが考えられるでしょうか。スキャン・翻訳済みコミックのアグリゲーターサイトを定期的に閲覧していて、その継続を望むなら、法務部門を持つ出版社の注意を引くのは良い考えではありません。彼らは不法コンテンツを求めてそうしたサイトの隅々まで確認することもあります。そんなことをあなたは望みますか。
われわれはファンに向けて書籍を出版したいのであり、海賊版の取り締まりに対処したいわけではありませんが、出版を行うには、これらの書籍を読者に届けるために懸命に働いている多くの従業員とフリーランサーに経済的サポートを提供することは言うまでもなく、ライセンス契約・出版費用を支払うために書籍販売によって利益を上げる必要があります

 SubLimeではストリーミングアクセスとダウンロードが可能なので、対抗措置によりストリーミングアクセスができなくなると考えられる。海賊版サイトが不法な海賊版を削除するかははっきりしないが、SuBLimeの読者はフォーラムで取り上げてアップロードを非難している。

 これは腹いせに海賊行為を働きたくなるほどユーザーが出版社を嫌いになるある種のDRMと比較して素晴らしい代替手段のように思える。まとめると、SuBLimeのコピーライト保護システムは2つの部分から成立している。1つは電子透かし、もう1つが忠実な読者コミュニティーだ。ユーザーを邪魔するものは何もない――コンテンツを盗もうとしない限りは。



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