インタビュー
» 2013年06月14日 12時00分 公開

「まだ紙の雑誌でないとできないことはある」――紙にこだわって新創刊、双葉社「月刊アクション」が目指すものとは (2/3)

[山口真弘,ITmedia]

スマホで漫画を読む習慣は、単行本で一番人気の作品だけ

月刊アクション創刊号 月刊アクション創刊号

── 創刊号は約800ページ、5センチ強というかなりのボリュームで、ネット上でもその厚みが話題になっていました。このページ数と厚みは最初から狙っておられたんでしょうか。

野中 ページ数に関しては、普段週刊誌や中綴じ誌しか見ない方からすると、とんでもない厚さに見えるかもしれませんが、いま月刊で800ページ越えというのは、各社一誌くらい持っているのが現状です。

 われわれも、軽くて読みやすいから500ページで、という妥協はしたくなかったですし、創刊に当たってこのページ数と厚みにこだわったというのは正直あります。ただ、800ページに合わせて作家を揃えたわけではなく、きちんと描きたいページ数のイメージ通りにやっていたら、なぜかちょうど800ページに収まった、みたいなところもありますが(笑)。

── (笑)。発売からおよそ一週間が経ちましたが(編注:インタビューの実施日は発売翌週の水曜日)、ここまでの反響はいかがですか。

野中 発売日初日に、アクション仮面のスーツを着用した人間を……いや違いますね、本物のアクション仮面を連れて(笑)、秋葉原の書店をいくつか回ったんですが、通行する方に「アクション仮面だ!」ってTwitterでツイートしてもらったりして、盛り上げはできたかなと。おかげさまで初日に完売した書店さんもあるとの報告も受けてます。まだ数日なので具体的な数字は見えていませんが、手応えは感じていますね。


WEBコミックアクション WEBコミックアクション

── 今回の掲載作品のうち、Web媒体の「WEBコミックアクション」で公開している作品とそうでない作品がありますが、どのような基準で分けられているんでしょう。

野中 Webとの連動としては、発売前の試し読みが何作品かと、ニコニコ静画さんで全編を公開しているもの、また冒頭何ページかを公開しているものもあります。これらはコンテンツとして楽しんでもらう側面もあれば、販売促進のための試し読みな面もあるので、この作品はこのページ数にした、この作品は載せた載せなかったというのに深い戦略はないです。作り手としてここは目に留めておいてほしい作品を中心に無料公開しています。


ニコニコ静画内にある月刊アクションとニコニコ静画のコラボページ「月刊のアクション」

── 「ニコニコ静画」と「WEBコミックアクション」の位置づけはどう違うのでしょうか。

野中 ニコニコさんはレギュラーでページを持たせてもらっていますので、1つのコンテンツとして月2回更新していて、WEBコミックアクションはあくまで1号ごとのプロモーションでの試し読みという扱いです。

── 最近はタブレットやスマホで読みたいというニーズも増えてきていますが、現状はどちらかというとPCでの閲覧がメインということになるのでしょうか。

野中 スマホも一応試し読みに対応してはいますが、技術面も含めて自社でやる限界は感じています。今後はタブレット端末やスマホが市場の中心になってくるでしょうから、連動は高めていかなければと思いますね。

── 講談社の週刊モーニングがiOS向けに「Dモーニング」をリリースし、紙と電子の同時配信を始めましたが、この仕組みをご覧になっていていかがですか。

野中 週刊モーニングさんは、思い切ったことをするなと感心しているのと、あの部分やこの部分はどう折り合いをつけているんだろうと興味を持って見ているのと、その半々ですね。うちも前向きな対応を考える必要はありますが、既存の読者への影響などデリケートな部分もあるので、モーニングさんが本当に好評で、かつ問題なく続くかは様子を見たいですね。

 スマホで漫画を読む習慣というのは、いまはまだ単行本で一番人気の作品だけに留まっていると思うんです。これが日常化して、評判を聞いたからちょっと買って読んでみよう、といったところまで習慣として高まってきて初めて、雑誌が参入できるジャンルになるのかなと、個人的には思いますね。

デジタル化が進んだことで、漫画家になるハードルは下がった

── Webでの配信や電子書籍化が広まりつつある中、作家さん側の変化はお感じになりますか。

野中 Webは自由度が高いので、例えば今回はページ数を少なくする、といった判断も許されます。Webだけで描いている方の中にはその自由度があるからこそ面白いものが描けていたという方もいて、紙にあるページ数などの縛りに不安を感じている作家さんはいましたね。今回は創刊号ということで自由度が高く、特に支障は出ませんでしたが、次からは課題になると思います。

── Webや電子書籍がメインの漫画家さんの中には、もうモノクロじゃなくてカラーの時代だとおっしゃっている方もいますが、例えば紙に載せる際に、カラーでやりたいという要望が出るケースはないんでしょうか。

野中 今回の月刊アクションではありませんが、実際そうしたことをおっしゃる作家さんはいますね。ただやっぱりそこは紙の限界があって、カラーが増えればそれだけコストが増えますから、じゃあどこが負担するのか、定価に反映させていいのかという話がどうしても出てきますね。

── 野中さんがご覧になってきた中で、ほかに変化をお感じになるところはありますか。

野中 デジタル化が進んで、一人でできる作業の範囲は広がりましたし、プロアマ問わず発表の場も増えているので、漫画家になるハードルは下がりましたね。一昔前だと、持ち込みをする、新人賞を取る、有名作家のアシスタントに入る、ネームを何度も編集とやり取りする、そしてようやくデビューという段取りだったのが、いまはWebやpixivで面白い漫画をアップする、編集の目に留まる、単行本が出る、みたいなことが普通に行われていますので。

── 漫画家さんの立場が強くなってきて、編集さんとの立場が逆転したということでしょうか。

野中 いえ、むしろ漫画家はこれまでもずっと“先生”だったんですよ。先生と呼ばれる方に原稿をもらいにいく編集者、という関係性だったのが、若年層でデビューできる数が増えてきたことで、編集者の方が年上だったり、年齢が近いケースが増えているのかなと。馴れ合いという言い方はよくないですが、友達感覚になる漫画家と編集者は増えている印象ですね。

── 創作という意味では、どちらが好ましいんでしょう。先生と呼ばれる作家さんにつくスタイルと、同格で話せる関係性から生まれる作品のクオリティと。

野中 作家さんの個性にもよりますね。堅苦しい中でやると自分が発揮できない人もいるし、持ち上げてもらって初めてポテンシャルが出る方もいる。逆にそれは編集が臨機応変に、作家さんに合ったうまい付き合い方をできるようになると、より良い作品になるのかなとは思います。編集も、自分のスタイルを押しつけてはいけないだろうし、作家のやりにくいカタチに型をはめてもいけない。そこをうまくできる編集が、いい編集だと個人的には思いますね。

── 一方で編集者の側に目を向けると、若い人材が入ってこないために高齢化している編集部もあるとよく耳にしますが、その点はいかがですか。

野中 各社さんの雇い方によって違うでしょうが、全体としてはやはり高齢化してきていると思いますね。10年前に新人編集者ばかりだった雑誌でも、10年いれば10年選手ばかりの雑誌になってくるわけで、漫画編集者自体の平均年齢は日々上がっていると思います。皆が出世して役員とかになっているわけではなく、定年間際まで編集をやっている方もいくらでもいますから。

── その点、作家さんの場合は、年齢うんぬんよりも作品ありきなのでしょうか。

野中 ええ、そこは実力の世界ですね。70歳を越えていまだ現役バリバリで連載を持っていらっしゃる作家さんは何人もいますし、16、17歳ぐらいで単行本が10万部も20万部もいっちゃうような作家さんも少女漫画ではざらにいますし。60〜70代の漫画家が今も現役でやっているなんて、数十年前は誰も思っていなかったでしょうしね。

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