インタビュー
» 2013年06月14日 12時00分 公開

「まだ紙の雑誌でないとできないことはある」――紙にこだわって新創刊、双葉社「月刊アクション」が目指すものとは (3/3)

[山口真弘,ITmedia]
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Webとの親和性が高そうな作品は、Webで新作を公開していきたい

── デジタル化による変化という点で、ほかにお気づきになった点はありますか。

野中 デジタル化というよりはIT化に関してですが、読者の感想や意見を作家がフィルターなしに見られるようになったのが善し悪しですね。以前はファンレターにせよ読者アンケートにせよ、一旦編集部に届くので、間違った読まれ方をしていたら「こういうハガキが来てるけど、この人が間違えているからね」という話を作家とできていましたが、今はそうしたフィルターなしに掲示板やTwitterで感想をその作者がばんばん見ることができて、それに影響を受けてしまう。

 純粋な感想であれば悪い意見も取り入れるべきでしょうけど、明らかに悪意の場合もあって、それによって描けなくなってしまう方も実際います。ひとりで部屋に閉じこもっての作業なので、どうしても目にするものが悪い方へ悪い方へいっちゃう。少数意見であっても否定的な意見の方がより目に留まったりするので。

── そういう作家さんに限って、逆にエゴサーチは定期的にされていたり(笑)。

野中 実際そうですね(笑)。

── 作品の評価や連載継続の判断は、アンケートはがきなどが中心というのは、今でも変わらないのでしょうか。

野中 アンケートは悪くても単行本が売れる漫画は多々存在するので、一概には言えないですね。アンケートも当然見ますが、できれば単行本はどの作品も1巻は出したいし、きちんと完結するまで出し続けるのが読者に対しても理想的ですので、よほどのことがない限り、単行本化は心掛けたいと考えています。

── Web上でコメントがたくさんつく作品は売れやすいというのを、以前太田出版さんのインタビューで伺ったのですが、WEBコミックアクションでもそうした傾向はありますか。

野中 そうですね、うちの場合も、アクセス数とコミックスの売上は比例しますね。うちはWebで無料公開しているので、タダで読み続けることもできますが、無料で多く見られていればきちんとお金を出して買ってもらえる割合も高いです。

── 今後、Webのプロモーション活用で、こういうことはやっていきたいというのはありますか。

野中 Webだけの新作をやることで人気の漫画をより広めたり、特定の作品をより売っていきたいという思いはありますが、作家の負担も増えるので、どれもこれもいうわけにはいきません。Webとの親和性が高そうな作品は連載と並行してWebで新作などを積極的に公開していきたいと思っていて、すでにニコニコさんでそうした取り組みをいくつか始めています。

── お話を伺っていると、Webは苦労も多いので、マーケティングツールとしてはいいけど、運営上は紙の編集だけに閉じ込めたいという思いがどこかにおありなのかなと感じたのですが。

野中 商売として漫画を作っている側からすると、Webの最大の難点は「お金が取れないこと」なんですよ。何百万人、何千万人が読む漫画って、世の中にワンピースぐらいしかない業界なので。

 普通のWebサイトのように広告収入を当てにするわけにもいかず、自社の持ち出しでサイトを作って漫画を公開するのは限界がある。PCで有料課金をやってらっしゃる出版社さんもありますが、どこもうまくいっていない。世間ではWebのコンテンツは無料と認知されてしまっているので、われわれはそのあと紙の単行本を出すくらいしかできないわけです。

 もちろん、より多くの人に見てもらった方がいいので、Webで持ち出しだから一概に損というわけではないですが、ひたすら無料で配信し続けるのは、われわれの業務としては違うのかなと。だからと言って、どんどん課金してWebばかりやりますというのも、これまた違う。

 いまは過渡期で、今後スマホがどういう課金のされ方をするかもまだあやふやなところがあります。かつてガラケーの時代はキャリアが集金してくれるので携帯漫画というジャンルが成り立っていたわけで、スマホになったことで、漫画というジャンルはむしろ後退したように思いますね。

── 紙の部数は増やしたい、かつWebでの存在感も上げていきたい、でも課金はだめとなると、どうすればいいのか難しいところですね。

野中 それぞれの客をこちらがきちんと見極めて、それぞれ向きのコンテンツを作り分けるのが理想なのかなと思います。Webで個人が出している作品で、10万PV、20万PVとかなりのアクセス数を稼いでいる作品でも、絵や展開に難があると紙に載せても読み飛ばされてしまうんですね。漫画ではなくエンターテイメントとして面白い作品はWeb向きだろうし、絵やページをめくる展開、構成などのクオリティが高い作品は紙でやる、という棲み分けが図られるのではないでしょうか。

── 逆に言えば、Webで活躍されている作家さんを、編集なしでそのまま紙に持ってくるのはないということですか。

野中 それをやってはいけない理由はありませんが、心情的にやってはいけないんだろうなとは思います。誰しも彼しも漫画家になれるわけではなく、線引きはきちんとされるべきだと思いますし。

まったく新しい漫画だけで揃えているので、創刊号から誰でも入っていける

── 創刊号が出て、次号もすでに目処がついてらっしゃるところかなと思いますが、今後の構想があればお伺いしたいのですが。

野中 創刊号は好きなものを集めたと言いつつも、雑誌として世間にアピールするために、移籍した『つぐもも』、過去に実績のあるシリーズの『王様ゲーム』、それからキャラクターとしてきっちり押せる『アクション仮面』、この3本は戦略性の高い作品なんですが、それ以外の新規の漫画がどれだけ世間の評価を得られるかですね。それがうまくいかない限りは、この雑誌は成功と言えないので。

── 創刊号を拝見していると、中堅の作家さんが中心のようですが、新人さんを育てていくという方向性についてはいかがでしょう。創刊号では新人さんはまったくいらっしゃらなかったのでしょうか。

野中 創刊号に関しては一人だけですね。ただその方もこれまでWebでやっていて紙の単行本が出ている実績があるので、純粋な意味でのデビュー作というのは、創刊号にはいないですね。2号目以降は、そういう作家さんも入れていく形にはなります。

 先ほどのWebと紙の話になりますが、Webで名も知らない新人が突然アップされても見に来られませんが、紙は他の目的で買って、ちょっと絵がいいと読んでもらえる傾向があるので、新人は紙からスタートしないと広がりが出ないですね。新人をWebに入れるのは楽なんですよ。いつ始めてもいいし、いつ辞めてもいい。限られた誌面にわざわざ新人を載せるより、お客を持っている作家を載せた方が華やかだし、雑誌の売上にもつながる。ただ、いいと思っている新人を広めて売っていくには、Webは適さないですね。

── ということは、今後は新人を売っていくようなプラットフォームとしても機能していくと。

野中 と思いますね。もちろんこちらが自信のある新人ということになりますけど。

── 次回以降、新人さんが加わるということは、今よりページ数が増えるということなんでしょうか。

野中 いえ、一話目ということでページ数が多かった漫画もありましたので。どうしても一話目、少ないページ数でやっていると、自己紹介だけで終わっちゃいがちなんですね。なので敢えて長いページ数を取って一話目は二話分ぐらいのボリュームでやっている作品もあったので。今後大きくページ数を変更する予定はないですね。

── 中堅さん新人さんを問わず、新しい作品を中心に展開していくことへのこだわりを感じます。

野中 うちがいわゆる平綴じ誌と違うのは、人気作を横流しした増刊ではないことですね。厳密には「つぐもも」一作あるので完全にないとは言い切れませんが、基本的にはまったく新しい漫画だけで揃えていますので、創刊号からきちんと誰でも入っていける作りになっています。あと、いわゆる月刊の平綴じ誌はどうしても漫画を読み慣れている人向けに作られがちですが、今回はそれこそ4コマしか担当したことがないような編集も関わっているので、いい意味でハードルが低いです。ライトな漫画読みの方でもきちんと入っていける作りをしていますので、幅広く手に取っていただきたいですね。

双葉社の社内には巨大なアクション仮面のポスターも
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