Readium SDKベースのEPUBビューワを世界初で商用化、ACCESSの狙い(2/2 ページ)

» 2013年11月07日 12時00分 公開
[西尾泰三,eBook USER]
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「Readium Web」に対する見解

―― ところで、Readiumでは「Readium Web」というブラウザビューワの開発も行っています。ACCESSもブラウザビューワ「PUBLUS Reader for Browser」を出していますが、こちらもReadium Webの成果を取り入れるのですか?

浅野 PUBLUS Reader for Browserもレンダリングは同じものを使っていますが、レンダリングをクラウド側で行うのが特徴です。eBookJapanで9月に採用が発表されたものがそれですね。

 ブラウザのエンジンにレンダリングを託す考え方もあるのですが、特に日本語の表現などがうまくできないところにぶち当たってしまうので、Javascriptなどでがりがり書くか、クラウド側でレンダリングするか、どちらかのアプローチになります。われわれはすべてのビューワで同じ見た目を実現したいというものもあり、クラウド側でレンダリングしているわけです。処理をクラウドに持ってくるのは今後のことを考えもいいんじゃないかと考えています。

―― それはReadium Webのアプローチとは少し違うようですね。

浅野 Readium Webは逆ですね。Readium Webはブラウザのレンダリングに託していますので。横書きで左から右にローマ字などで記述される言語なら、ルビも振られませんし、難しい禁則などもないでしょうから、ブラウザのレンダリング結果もさほど変わらないのでそれで困ってない、というのが現状です。

―― ブラウザもブランチしている現状、Readium Webの方向性は複雑な組版もある日本語表現には簡単にフィットしない。加えて主要な開発は北米で、縦書きなどの優先順位が開発の中でさほど高くない、それゆえそうした事情をしっかりとコードに反映していくのも容易ではない、と。

浅野 そうですね。ただ、我々がなぜWebKitやBlinkにもコードを入れているかというと、最終的にはやはりブラウザの表現だけでできるような時代が来るべきだと思っているからです。ちゃんとブラウザエンジンの方にもコミットし、ブラウザの表現が縦書きに関してもそろってくるよう、きちんと貢献していきたいからです。今後はアラビア語やタイ語などが入ってくるかもしれませんが、特殊な言語は癖がありますので、そのあたりをしっかり表現できるという点で我々は強みを持ち続けたいと思っています。

教科書などを見据えて

―― BOOK☆WALKER、Koboと大手2社がACCESSのビューワを採用していますが、この成果はどうお感じですか?

浅野 期待したほどのシェアは取れてないです。われわれのように、アプリビューワとブラウザビューワの両方を取りそろえている競合はいない認識ですが、それぞれの領域でぶつかるんですね。現状、出回っているシンプルなEPUBであれば、ReadiumやWebKitを使わなくてもできてしまうので、各社のEPUB対応ビューワと価格比較になる案件も多々あります。きちっとEPUBに準拠した、そのきちっとというのが定量化されていなく、あいまいなんですが、そこの反省を踏まえて、PUBLUS Reader v2.0では圧倒的な優位性をうたいたいと思います。

ACCESSの電子出版プラットフォーム「PUBLUS(パブラス)」全体像(同社サイトより)

―― PUBLUS Readerの海外展開は?

浅野 北米とアジア市場には製品を出せていますが、ビッグプレイヤーを期待するのは、やはりアジアですね。インドネシアがいい例で、テレコムインドネシアという大手のキャリアに弊社のソリューションをご採用頂いたように、アジア各国で展開できると思っています。

―― マルチプラットフォーム展開のほかに、PUBLUS Reader v2.0以降で見据えているのは?

浅野 我々はEPUBを今後、教科書などの教育方面に活用したいと考えています。一般書籍の電子書籍化はかなり進んだと思いますが、その次に来るのはやはり教材、教科書だと確信していますので、その分野の強化が我々の計画上にあります。

―― そのために作り手には、何を求めたいですか。

浅野 求めるというか、問題は、教材の世界では実際にEPUBがないことですね。これは製作者、あるいは版元を支援しないと進まないので、無償でお配りしてとにかく作ってもらう。あるいは既存のツールからどうEPUBに落とすかなど、作り方のアドバイスやガイドラインを提供したいですね。それとビューワの開発を両輪で回し、EPUB化する価値を感じていただきたいと思っています。

 大手のツールベンダーは基本的に、KindleやiBooks、Koboでの表示を前提としたことをやってくるので、我々はそこと同じような表現力があるビューワをそろえる、というところに競争力を感じています。特にKindleやiBooksとの互換性をしっかり訴えていきたいですね。

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