スタートアップ企業、電子書籍読書データのトラッキングに集中

読者が電子書籍をどのように読んでいるかというデータは、今後さらに活用が進みそうだ。

» 2014年02月12日 12時52分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 誰かがある本を読み終えるまでにどれくらい時間が掛かるのか。エロチックな小説を読んでいるとき、セックスシーンを読むのに時間を要しているか。読者は読み始めた書籍を読了しているだろうか。あるいは最終部分までスキップしているのだろうか。スタートアップ企業は新たなソフトウェアを利用してこれらの質問に回答しようとしている。

 Oysterのようなスタートアップは少ない月額費用で大量のタイトルにアクセスする購読者の重要なユーザーデータを企業に販売している。これらの電子書籍は無数のiOS・Android・モバイルデバイス上で読むことができる。

 「自主出版著者はデータをしゃぶりつくすでしょう」と、大規模な独立系出版社Smashwordsのマーク・コーカー氏は語る。「多くの著者は自分の子どもよりも作品を評価しているようです。より多くの読者にリーチする助けになるものは何でもほしいのです」。

 Smashwordsは最近、Harper Collinsの子会社Scribdと契約し、自社プラットフォームに25万以上のタイトルを追加した。その前に、Oysterとも契約し、同社のタイトルも加えている。その目的はSmashwordsが自社では通常捉とらえることができない可能性がある自社タイトルの大量データを取得することだ。

 読書データを分析することはAmazonとBarnes & Nobleの進歩的成長に不可欠な役割を担っている。これらの大手2社は何年も自社のデータを秘匿し、出版社に渡していない。このデータはいつでも流行中の書籍、読者が最初から最後まで読む傾向にある書籍を宣伝するために利用されている。

 Scribdは10月に電子書籍購読プラットフォームを立ち上げたばかりだが、すでに貴重なデータを大量に集めている。ミステリー小説が長ければ長いほど、読者は誰が犯人かを知るのに最後まで飛ばし読みしがちだ。読者はビジネス書よりも伝記を読了する傾向にあるが、ヨガ本の1章が読者のすべての必要を満たす場合もある。宗教書よりも恋愛ものを読むスピードは速く、エロチックな小説は中でも最速となっている。Scribdのトリップ・アドラー社長は「このデータを共有するのに特に制限を設けるつもりはなく、利用者はより優れた書籍を出版するために活用できます」という。

 一方、Oysterのデータは読者が細かく章立てされた書籍を読了する割合は25%ほど高くなるとしている。これはiPhone上で日中に読者が細切れに読書をすることを考えると当然の結果といえる。

 さて、ScribdとOysterはどのように自社データを他企業に販売しているのか。2社は自社ビジネスモデルの公開を拒否したが、出版社はScribdとOysterではやや異なる契約を提示しているという。Oysterの場合、読者が本を10%読むと、正式に読んだと見なされる。Oysterはその後、出版社に標準卸売手数料を支払う。Scribdの場合、事情はより複雑だ。読者が10〜50%を読むと、10分の1の売り上げと見なされる。50%を超えると、完全な売り上げとなる。

 著者がこのデータにアクセスすることはできるのだろうか。大手出版社と契約すれば、電子書籍購読を提供する企業からのデータを取得する契約を結ぶことになるのだろうか。Smashwordsはどうだろう。データが流入し、それをモニターするソフトウェアを同社が開発すれば、プラットフォーム上のデータを著者に提供してくれそうだ。特定ジャンルの大まかな概要を提供する統計データとなれば、著者に最も人気が出そうな作品は何か、そして恐らく何を書くべきかをアドバイスしてくれるだろうか。とりあえず、そういったことは現状ではいちじるしく不足している。

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