新生活の始まるこの季節にぴったりな作品を紹介します。
卒業、進学、就職などに伴って、新たな世界への一歩を踏み出す多くの方々。そんな皆さんの前途を祝して、ラノコミどっとこむでは、本日から数回に渡り、新生活にオススメのコミックスをピックアップ!
今回は、学生のあなたに捧げるコミックスとして、瀬川藤子さん作、『VIVO!』(マッグガーデンコミックスアヴァルスシリーズ/全3巻)を特集しちゃいます。
新しい学校、新しいクラスメート、新しい先生――。そんなあなたの新学期の始まりに、もし、こんな先生が現れたらどうしますか?
仲村渠 豊寛(なかんだり とよひろ)
まぁ 書類上は担任だな
面倒くせぇから ナカムラでいいよ
自己至上主義で気ままに生きる男、ナカムラ。彼は、ひょんなことから、学生時代からのくされ縁――井崎千加子(いざき ちかこ)によって、高校教師を1年間勤めるハメになります。
不本意ながらもとりあえず1年間は、「人は人」「自分は自分」のスタンスを変えることなくやっていこうとするナカムラですが、彼と入れ替わりで離任する教師、吉井によって、強制的にとある生徒の家庭訪問をすることに。
その生徒とは、2年の冬から急に不登校になり、ひきこもってしまった生徒――住吉結子(すみよし ゆいこ)でした。
結子の部屋の前で思いの丈を必死に語る、熱血教師の吉井。そんな吉井の様子を、読書しながら冷めた目で一瞥するナカムラ。実は、結子の不登校の原因は、他ならぬ吉井にあったのでした。
あんたに名前で呼ばれるのが気持ち悪ィってよ
ん? ちょっと違うな……あ 生理的に嫌、だったな
学園ドラマの教師と生徒を理想とし、周りが少しも見えていない、自己陶酔しているだけの吉井を、どうしても受け入れることができなかった結子。
そんな自分の気持ちを代弁してくれたナカムラに対し、もしかしていい先生なのかもしれない……? と淡い期待を寄せる結子ですが、ナカムラから発せられたのは、更なる衝撃の一言でした。
大体ねぇ 分かるわきゃねぇんですよ 生徒のことなんて
考えてみて下さい 高校生ですよ?
10代女! この世で一番面倒で鬱陶しい年頃ですよ
しかし、このナカムラの行動によって結果的に救われた結子は、やがて、ナカムラが顧問となる同好会の一員となり、後にこの同好会に(半ば強制的に)入部することとなる佐野徹平(さの てっぺい)や、蓮田一臣(はすだ かずおみ)らとともに、通常とはだいぶ異なる学園生活を送ることになります。
といったこれまでの紹介でお分かり頂けたかと思いますが、この物語は、いわゆる学園モノの王道、熱血教師モノとは180度違った物語です。
何せナカムラは放任主義で面倒なことが嫌い。しかし、そんな彼の存在が、これまでうまく学園生活になじむことができなかった生徒たちにとって、やがて一番必要な場所となっていきます。
自分本位でありながら、その分、誰にでも同じように接するナカムラ。老若男女関係なければ、社会的地位なんかも一切関係ない。それを平等と取るか、正直と取るか、はたまたただの傲慢(ごうまん)と取るか……考え方はさまざまですが、ナカムラのような人がいると、なんだか楽だな後思ってしまう、結子のような人間もいることも事実。
ナカムラの言っていることが説教臭くなく、すとんと心に落ちてくるのも、彼自身、歯に衣着せぬ物言いで、うそ偽りなく自分の本心を発しているからなのでしょう。それでいて、押しつけがましいところがない。
正しい意味での適当さに救われる人って、案外多いのかもしれません。
普通じゃない教師と、普通の生徒たちが繰り広げる1年間だけの学園生活。1年間という短い期間と同様に、本作は全3巻で完結しており、もうちょっとだけ先を読みたいなあという読後感は、振り返ってみるとなんだか学生生活そのもののように思えます。
今、学生の皆さんには、結子たち生徒の目線で。そして、卒業し、大人になってからは、ナカムラや井崎など、大人目線で楽しめるようになるかもしれません。自分の成長とともに、視点の変化を感じられる作品。それが『VIVO!』です。
さて皆さん、いかがでしたでしょうか? 次回、第2弾は社会人のあなたにオススメのコミックスをご紹介します!
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)
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