世界を守るために14歳の少女に与えられた使命は、きぐるみとのキスだった? 人気漫画家の星野リリィさん作、『きぐるみ防衛隊』1巻をレビュー。
「眠れる森の美女」で、魔法によって永い眠りについていたオーロラ姫は、王子様のキスによって目を覚ます。
童話を基にしたアニメの世界では、キスをするということは魔法が解けてしまうぐらいロマンティックなことなのだと、子ども心に思ったものだ。
だが、童話の世界にかかわらず、物語全般、そして現実世界においても、唇を重ねるという行為は、その単純な動作とは裏腹に、複雑な意味を併せ持つ。
それは、今回ご紹介する『きぐるみ防衛隊(ガーディアンズ)』(KCなかよし)においても同様だ。
中学二年生、14歳の笹倉はっかは、素直で明るい女の子。勉強は苦手だけど、仲良しの友達はたくさんいて、今日も下校途中にあこがれの生徒会長、鏡チガヤの姿を見つけては頬を染めている。
そんなどこにでもいるような普通の女の子、はっかだが、ある日家に帰ると、彼女がいままで過ごしてきた平凡な日常は、がらりと姿を変えていた。
なぜなら、そこにきぐるみがいたから。一般家庭の住む家に、あろうことか怪しげなきぐるみがいたからである。
申しおくれました
わたくし『ジンジャー』と申します
怪しげなきぐるみこと、ジンジャー。
きぐるみなのに頭がとれないジンジャー。
きぐるみだから喋れない、フリップで会話するジンジャー。
はっかの母親が言うには、これはどうやら学校の新しいカリキュラム導入実験で、はっかはみんなの中から特別に選ばれたらしい。
怪しすぎるジンジャーに納得ができないはっかは、翌日、どういうことなのか説明を受けに向かう。
はっかが向かった先にいたのは、宮森のばらと那須五月という2人の生徒。彼らの下にもまた、バジリコとフェンネルというきぐるみがそれぞれやってきており、説明を受けに集まっていたのだ。
ともあれ、ジンジャーとはっかを合わせて3体のきぐるみと3人の人間がいるという異様な場で、あこがれの生徒会長、チガヤによって告げられた説明は、彼らの思いもよらないものだった。
きみたちの元に その着ぐるみたちが行ったのは
ほんとうは学校のカリキュラムのためなんかじゃないんだ
この世界を守ることが真の目的
きみたちはガーディアン 選ばれし戦士なんだよ
突然そんなことを言われても冗談にしか思えず、理解できないはっかたちだが、目の前に突然、敵と思われる怪しげな人物が現れ、襲われてしまう。
攻撃を受け、意識を失いかけながら、はっかが目にしたものは、いつの間にかきぐるみのジンジャーが消え、その代わりに黒髪のカッコイイ男性が敵を倒し、自分にキスをしようとする姿だった。
この世界はねらわれている
きみたちは彼らと協力してこの世界を守るんだ
『ガーディアンズ』として
何とかその場を切り抜けた彼らだが、チガヤによれば、世界の危機は過ぎ去っていない様子。こうして、はっかとジンジャー、のばらとバジリコ、五月とフェンネルの、世界を守るためガーディアンズとして戦う日々が始まったのだった。
本作の掲載誌は、言わずと知れた少女漫画誌『なかよし』。けれど、かわいいきぐるみや女の子、イケメンのお兄さんといった要素が絡み合うミステリアスなストーリーは、小さな女の子だけに留まらず、幅広い年代の方に楽しめる内容である。
特に、主人公であるはっかの真っすぐでピュアな行動には、誰もが思わず応援したくなる。そんな不思議な魅力に溢れたキャラクターが満載の作品だ。
また、フェンネルや五月といった男子コンビの活躍には、大人のお姉さま方が脳内にエクスクラメーションマークを何個も浮かべながら、熱心に読み進めることは必至だろう。
個人的には、毎度的確なジンジャーのフリップツッコミに笑わされながらも、その無尽蔵のフリップは一体どういう仕組みなのだろうと気になってならない。いつか、そちらのなぞも解明される日がくることを期待しながら、はっかたち、ガーディアンズの活躍を応援したい。
(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)
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