Kindle対抗へ──ドワンゴが「i文庫」「読書メーター」を買収した理由、川上会長に聞く(3/3 ページ)

» 2014年11月07日 11時00分 公開
[岡田有花ITmedia]
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電子書籍は紙の本より高くなる?

 出版社が発行する電子書籍は、紙の書籍と同等の価格で販売されるケースが多く、「紙代も印刷費もかからないのに高い」という声もある。だが川上会長は、電子書籍は紙よりも利便性が高く、「安い」と感じているという。

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 「コンテンツの価格はそもそも幻想」と川上会長は指摘する。コンテンツの価格は、原価に利益を上乗せして設定されているわけではなく、同じようなものの価格、いわば“相場観”をベースに決まり、消費者はその価格に慣れていく。電子書籍の今の価格も、紙の書籍の価格に慣れているから受け入れられている――という考えだ。

 コンテンツのフォーマットが変われば値段は「上がるべき」とも。「日本ではアナログレコードからCDになった時、価格が上がった。原価はレコードよりCDのほうが安く、安いものを高く売ったことになる。ゲームも、パッケージ時代は5800円や6800円だったが、ソーシャルゲームには何万円も使ってしまう。ゲームの客単価も上がっている」

 原価が下がったのに価格が上がれば、消費者は「ぼられた」と感じるかもしれないが、川上会長は、「コンテンツの価格はそれでいい」と言う。「コンテンツは理不尽な利益が出るほうが発展する。もうかるマーケットでは、もうけたい人がよりお金をかけてコンテンツを作るのでクオリティは上がり、もうからないマーケットではクオリティは下がる。エンタメは、合理化でレッドオーシャンになっている市場より、ぼろ儲けできる市場で新しく面白いものができる」

「2番手勝負」が好き

 日本の電子書籍市場は、Kindleをはじめとした強いプレイヤーがひしめいているが、川上会長は、他社が強い市場であえて後から仕掛けていく「2番手勝負が好き」だと笑う。「ニコニコ動画はディー・エヌ・エー(DeNA)の『モバゲータウン』対抗で作った。モバゲーがゲーム+SNSなら、こっちは動画+SNSだと」

 ただ、正面から挑むことはしない。「直接対抗するのは嫌い。切り口、軸を変えていく。ニコニコ動画がモバゲーとまったく違うものになったように、軸を変えるうちにそもそも違うものになったりするんですよね」

 今後登場する同社の電子書籍サービスは、既存のサービスとは全く違う、新たな読書体験を提供してくれるかもしれない。

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