前回は「映画モデル」のマネタイズ手法として、販売開始から一定年数が経過したマンガ作品を、フリーミアムで提供するというビジネスモデルについて触れた。実際にこのモデルで、スマホアプリとして提供される作品も増えている。
では具体的に、それが「何年前のマンガ」なのか? を検証してみよう。絵柄の古い、30年前の作品ばかりなのか。それとも数年前の作品が、早くも読めるようになっているのか。
本稿執筆時点(2014年11月10日)で、実際にApp Storeの「ブック」カテゴリでダウンロードできる5作品について、連載開始年と、終了年の関係をまとめてみた。
結果は以下のとおり。横に伸びた棒の左端が連載開始年を、右端が終了年を示している。
対象となるアプリは、いずれも何らかの形で「全巻無料」「全話立ち読み」をうたっているもの。毎日、1話ずつ公開していくタイプのマンガは、ここでは対象外としている。『ラブひな』については単体のアプリとしては公開されていないが、弊社のアプリ「ハートコミックス」などでは全巻無料で読めるので、グラフ内に含めた。
これを見る限りでは、連載終了年ベースで1997年〜2001年、つまり今から13〜17年前のマンガが読めるということになる。これを古いと見るか、新しいと見るかは意見が分かれるところだが、ポイントは1996年当時がコミック誌の“黄金時代”であったこと。前回の連載を参照頂きたいが、当時のコミック誌の推定販売額は、2010年時点と比較して、2倍近い。この時期に、マンガに慣れ親しんだという30代〜40代のユーザーも多いのではないだろうか。
参考までに、1996年〜1998年の間に週刊少年誌で連載を終了したタイトルをざっと並べておく(括弧内は連載終了年)。マンガファンとしては、いずれ劣らぬ名作ぞろいのラインアップに、ため息が出る。
もちろん、作品それぞれに事情が異なるだろうから、上記タイトルの中でもフリーミアムモデルに乗りやすいものと、乗りにくいものが存在するだろう。とはいえ、ある程度の経済力がある30代のユーザーに、懐かしの「十数年モノ」をぶつけて収益化するモデルには、一定の合理性がある。今後、どんなタイトルが「無料読み放題」になっていくか、マンガファンには楽しみな時代になったといえるだろう。
電子コミックアプリ「ハートコミックス」の主担当者。ITmediaで5年間記者を務めた後、MBA留学(南カリフォルニア大学)、A.T.カーニー、DeNAを経てソフトバンクグループに復帰。新規事業であるハートコミックスを牽引する。
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