「愛すべき最悪」のキャッチフレーズにふさわしい、最低で下衆に徹したラブストーリー。ハッピーエンドなんてありえないのに、こんなにも引かれてしまう……。イケナイことほどのぞいてみたい……そんな怖いもの見たさのような感覚に突き動かされて、ページをめくる手が止まらなくなってしまいます。もう普通の幸せなストーリーでは満足できない、BLジャンキー必読の1冊!
ストーカーに悩む、クールビューティー系オカマのミユキが主人公。犯人を捕まえるべく、働いているニューハーフバーのお姉さんや、お気に入りの常連客・鎌田さんと作戦を練りますが……。ストーカーの正体に迫るラストシーンで、ミユキの意外な本性もあらわに! このどんでん返し見たさに、何度もページを行き来してしまうほど、中毒性アリの作品です。
ドMで借金まみれのクズニートの龍太郎(20)と、笑顔が凶悪かつゲスい金貸しの一(30)という、カップリングからしてゲスな作品。救いようのない設定ですが、主役2人の振り切ったクズっぷりと、キャッチーな絵柄、そしてキレのいいギャグのおかげで、不思議と爽やかな(?)読後感をもたらしてくれます。
正気と狂気の境界線はどこなのか? 暴力・共依存・SM……と、並べるだけでゾクッとするテーマですが、いずれも相手を愛するが故にゆがんでいく愛の形が描かれていて、不思議と嫌悪感は少ないです。そのエンディングは果たして悲劇なのか? 本当の幸せとは? 狂気の果てに、そんなことを考えさせられるアンソロジーです。
椎名は幼なじみの葵を抱きたいけれど、葵は強迫性障害で他人に触れられることに過剰な拒絶反応を起こしてしまうため、キスすらできない。そんな中、ある事件が起こり、2人はようやく結ばれることになるのだが……。悲しい話ですが不思議と、2人は幸せなのだろうと思える作品。切ないです。
スクールカウンセラーの神部は、赴任先の高校で「訳あり」の3年生・有森と出会う。カウンセリングから始まった神部と有森の交流だったが、いつしか職務を大きく外れていく。2人が共依存に陥っていく様子が、短いページ数ながら丹念に描かれています。
「暴力を振るうことは愛すること」という前提のストーリーのため、ある意味、最も後味の悪い作品といえるかもしれません。しかし、ここまでのめり込める恋愛に、一抹の憧れを抱く人もいるのでは?
いろいろな泣き顔と泣きシチュエーションを堪能できる、「涙」をテーマにしたアンソロジーです。「血涙」「共涙」「紅涙」など、涙にまつわる言葉から展開する9つのストーリーが収録されています。悲しいだけじゃない、うれしいだけじゃない、いろいろな人生が詰まった涙。1つ1つの泣き顔を愛で、それぞれの涙の意味を考えながら読んでみてください。
テーマは「血涙」(強い怒りや悲しみのあまりに流れる涙)。花火を見た夜に結ばれた、高校生の奈津と陽。幸せはずっと続くと思っていたのに、大学生になった陽に、奈津は陽に思いを寄せる秀明と付き合えば? と、ひどい言葉を投げかける……。
その理由がとても切なく、お互いの気持ちは通じあっているのに、どうにもならない状況に、胸を締め付けられます。まさに「血涙」というテーマにふさわしい作品であり、陽と奈津の泣き顔には、読者も号泣必至です。
テーマは「鼻涙」(目と鼻から涙を流して号泣する様)。 兄の卒業式の日、ぐちょぐちょの泣き顔の清春と出会った海。清春はさぞやナイーブかと思いきや、先輩風を吹かして厚かましさ全開! 何かとからんでくる春と、「やれやれ」という体でつきあう海の、友情なのか恋愛なのか、お互いにはっきりしない青春の1ページが描かれています。容赦なく鼻水を垂れ流す、春のぐちゃぐちゃの泣き顔はとにかくかわいいです!
アンソロジーの魅力は、1冊でさまざまなテイストや作家の作品を楽しめること。そして、新たにお気に入りの作家さんと出会うきっかけにもなります。初めて読むジャンルは、まずアンソロジーから入ってみると、自分の好みが分かるかもしれませんよ。
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