eBook USERがお勧めのマンガ作品を毎週ピックアップしてお届け。今回は繊細なイラストと作り込まれたストーリーが魅力的な『蟲姫』を紹介。
今回紹介する漫画は、『鬼畜島』『犬神』などの作品で知られる漫画家・漫画原作者の外薗昌也さん(原作担当)と、新鋭イラストレーター・漫画家の里見有さん(作画担当)によるホラー作品『蟲姫』。ホーム社のWebコミックサイト「画楽ノ杜」で連載されていた作品で、全3巻で完結している。
主人公の高砂陵一は、毎日ある悪夢にうなされていた。夢の中で陵一は小さな手こぎの舟に乗っている。周りには水に浮かんだ無数の死体。そして、必ず現れる美少女。少女はこちらを見やり、それから――。
作中でも早くから言及されているため書いてしまうが、本作の元凶ともいえる存在がこの美少女だ。名前は宗方聴久子(キクコ)。キクコはあろうことか陵一の在籍する高校に転校してくる。普通、異性の転校生といえば、漫画では「出会い」や「恋」がスタートするきっかけになる存在として描かれることが多いが、陵一にとってこの展開は最悪なシナリオの幕開けだった。
転校手続きをするため職員室へ向かう途中、キクコの腕を引っ張った教師。だが手のひらを針のようなものを刺されてしまう。腫れがひかないため病院を訪れた教師だったが、原因は“虫刺され”によるものだと診断される。時を同じくして、各地で発生しはじめる昆虫による事件……。一体彼女の正体は何なのだろうか。人なのか、それとも――。
全3巻と短い作品ながら、展開に無駄な回り道がなく、物語の先へ先へと読者を引き込む力がある本作。単純なホラー要素としてだけでなく、危うげでなまめかしいオーラを放つキクコは、陵一の敵でありながらもヒロインともいえる存在だ。物語の最下層にたどりつき、彼女の正体を知ったとき、あなたにとってこの作品はただのホラーではなくなるかもしれない。
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