富士フイルム、コマの分割や吹き出しの白塗りなどを自動化するソフトウェアを発表
富士フイルムは、独自の画像処理技術を用いて漫画の電子コミック化に必要な作業を大幅に効率化するソフトウェアを発表した。
富士フイルムは7月5日、電子コミックの制作・配信工程を効率化するソフトウエア技術「GT-Scan」「GT-Quality」「GT-Balloon」を開発、同技術を搭載したソフトウェア製品を7月下旬から順次発売する。
これらの技術群は、いずれも漫画の電子コミック化を効率化するもの。電子コミックの中には、1コマずつ表示するようなものも少なくないが、これらを制作するには、コマを分割し、各コマの遷移を指定しておく必要がある。しかし、一般的なコミックは、作者によってコマの境界線に用いる線の種類やコマ間の余白、コマ割などが多種多様で、パターン化するのが困難なため、手作業で行われることが通例だった。
GT-Scanは、コミックのページ全体を分析してコマ割りを高精度に自動検出、ひとコマごとに分割して読む順番を自動設定できる技術。これにより、コミックの電子化で大きな比率を占めるコマの分割や、読む順番を指定する工程がほぼ自動化され、作業時間の短縮につながるという。
このほか、配信前の高解像度なマスターデータを独自の画像処理エンジンで圧縮し、配信先となる各種モバイル端末に合わせた最適な画像配信を可能にする「GT-Quality」技術、吹き出し内のセリフを海外向けに翻訳する際に吹き出し部分の抽出および塗りつぶす作業を自動化する「GT-Balloon」技術などが開発された。
GT-Scanを搭載したソフトウエア製品は7月下旬から、「GT-Quality」「GT-Balloon」を搭載したものは今秋に発売予定。7月7日から東京ビッグサイトで開催される「第15回国際電子出版EXPO」で展示予定となっている。
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