国際電子出版EXPO前後の電子書籍市場:eBook Forecast(2/2 ページ)
「電子書籍ってどこを押さえておけばいいの?」――忙しくて電子書籍市場の最新動向をチェックできない方のために最新動向を分かりやすくナビゲートする「eBook Forecast」。今回は、先日開催された「第15回国際電子出版EXPO」前後に起こった出来事を中心にお届けします。
Amazonタブレットの死角でNOOK2が高評価
国内の電子書籍市場では、いまだ外資勢の国内参入もはっきりとしない状況ですが、それぞれのプレイヤーが忙しく動き回っています。
その筆頭はやはりAmazon.com。5月ごろからうわさになっているタブレットが8月、いや10月、と人によってまちまちですが、リリースが迫っているようで、Appleとの競争が激化しそうです。
市場ではAmazonタブレットの話題で持ちきりですが、米非営利調査機関Pew Research Centerのレポートによると、米国ではタブレット端末より電子書籍端末の方が普及しており、電子書籍端末の保有率は過去6か月間で倍増したと報告されています。そうした中、Barnes & Nobleの新型電子書籍専用端末「NOOK2」が米消費者団体の評価で初めて「Kindle」を抜き、IDCが発表した2011年第1四半期(1〜3月)における電子書籍端末出荷調査でも、Burnes & NobleがAmazonを追い抜き初の首位となるなど、Burnes & Nobleが勢いを増しています。NOOK2については、「タッチスクリーン採用新型『NOOK』ファーストインプレッション」をご覧ください。
そんなAmazonからは、毎日のように電子書籍関連のニュースが発表されていますが、大きな動きになりそうなものが、学生向けにKindle版の教科書を貸し出す「Kindle Textbook Rental」サービスです。最大80%のコストセーブが可能な点なども魅力ですが、若いうちから電子書籍に慣れさせておくというのは、長期的に電子書籍市場にプラスに働きます。こうした取り組みが日本でも今後起こることに期待しましょう。
Google eBookstoreに対応した電子書籍端末も登場
Amazonに負けじと、IT業界のガリバーであるGoogleも大きく動き出しました。同社のGoogle eBookstoreは、数十万冊の有料タイトルだけでなく、著作権切れ作品を中心に300万冊の無料タイトルを取り扱う巨大な電子書籍ストアですが、このGoogle eBookstoreに対応する電子書籍リーダーがiriverから登場しました。それが「iRiver Story HD」で、AmazonのKindleの価格帯に近い約140ドルで販売されています。Wi-Fi接続経由でクラウド上の電子書籍を直接読むことができるようになっています。
正確には新製品というより、iRiverが2009年に発売した「iriver Story」の後継に位置づけられるStory HDが、米国発売に合わせてGoogle eBookstoreに対応したというものですが、AmazonにおけるKindle、AppleにおけるiPad、Barnes & NobleにおけるNOOKに相当する製品です。もっとも、Google eBookstoreはAPIが公開されていますので、今後同じような製品が登場してくる可能性は高いです。初物は避ける、という賢明なあなたのために、Story HDについては近日レビューをお届けする予定です。
この動きとは直接関係はありませんが、Googleは現在、書籍全文検索サービス「Google Book Search」(現Google Books)について、米国著作者協会(AG)や米出版社協会(AAP)から訴訟を起こされており、その和解締結でもめています。オプトイン方式への和解案修正にGoogle側が難色を示しているというもので、裁判が再開されるシナリオが濃厚になってきているようです。エンドユーザーというよりはコンテンツプロバイダー向けのトピックですが、気になる方はチェックしておきましょう。この問題については、過去のeBook Forecastでも取り上げていますので、まずはそちらをご覧ください。
8月は楽天の電子書籍ストア開設をはじめ、大きな動きがありそうです。ではまた次回。
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