本屋探訪記:高円寺の知る人ぞ知る本の秘密基地「古本酒場コクテイル」
BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は本と酒と肴を楽しめる高円寺の「古本酒場のコクテイル書房」を紹介。
もう何の本か忘れてしまったが、一読して「ここは行きたい!」と恋い焦がれていた高円寺の本屋さん。なかなか行けずにいたのだが天気も良いので本を肴にお茶とお酒を飲んでやろうと高円寺に行くことにした。今回の本屋探訪記は「古本酒場コクテイル書房」である。
看板がない!
高円寺駅の北口を出て、西側の北中通り商店街(セントラルロード)を歩くと、趣のある古民家が見えてくる。
表には古本が置かれている。古本屋さんなのかと思ってよく見るが看板はない。中に入って普通の民家だったら……。しかし季節は冬。日もくれて寒いばかりだ。できることなら早く中で暖まりたい。男は度胸。引き戸を勢い良く開けて中に入った。
炭火が暖房
中に入るとどこか優しい暖かさに包まれた。何だろうと思って見渡してみると足元に炭火が置かれている。これが暖房代わりというわけだ。古民家なことも手伝って、まるで今にも明治期の文士が出てきそうだ。
店内を見渡すと、カウンター席をメインに、入り口横には本棚に2方向を囲まれた板の間のようなスペース。低めのテーブルであぐらをかいて寛ぐ場所だ。ゆっくり本を読むならもってこいの席でもある。カウンターのそばには古トランクをテーブル代わりにした席も。全部で10席ほどの店内だ。奥に階段があるので2階にも席があるようだが、雰囲気に負けてしまったのかかしこまってしまって見せてもらうようにお願いすることはできなかった。
本棚は前述した板の間の2面、入り口周辺、そして壁沿いにもズラリ。さらにカウンター上にも。ちなみに本棚はすべて時代物の家具。この雰囲気、たまらん! ふらりと立ち寄り、目の前の文庫本を手慰みにお酒を飲むなんて素晴らしく贅沢ではないか。
購入できるブックバー
本が置いてあるカフェやバーではよく読むだけで購入できないお店があるが、コクテイルは素晴らしいことに購入することができる。
これの何が素晴らしいかというと、何げなく手に取った本が面白くて目が離せなくなってしまったとする。ところがすでに閉店時間。こんなとき他のお店なら近所の本屋で買ったりネット書店を利用しなければいけないのだがコクテイルは違う。その場で買えば良いのだ。
これで家に着くまでの電車の中でも読めるし、盛り上がった気持ちそのままでの読書ができる。ただし、ここは古本酒場。帰り道のあなたはきっとほろ酔い気分だ。読みながら歩いての帰宅はお勧めしない。夢中になりすぎて気づいたら電信柱に衝突なんてことになり兼ねないからだ。
コクテイルで読みたいほろ酔い本3冊」
そんなコクテイルで読みたい3冊がこれだ。ほろ酔い気分で読んだら最高の3冊である。
- 『文学の中の酒』
- 『ウィリアムモリス全仕事』
- 『昭和の子ども遊びと暮らし』
テーマは「レトロ」と「文学」。せっかくの雰囲気を大事にした本にしてみた。当然、3冊とも店内にあった本だ。ノスタルジーに包まれながらの読書もたまには良いものである。
文学作品からメニューを拝借
ひととおり見終わったので席に腰を落ち着け、フードメニューを見ていると品名の下に文学作品の名前が書いてある。どうやら文学作品に登場する料理を出しているようだ。僕は最近読んで好きになった『壇流クッキング』から平成コロッケを注文した。生姜醤油がきいておいしい。炭火にあたりながら文学作品に出てくる料理を食べつつ読書する。最高なひとときである。
知る人ぞ知る本の秘密基地
文豪が出てきそうな趣ある古民家に分かりにくい入り口。古い作品から最近のベストセラーまで、少ないながらも吟味された本棚。文学作品から拝借した選りすぐりの料理。カウンターでは出版関係者と思しき人たちが出版談義に花を咲かしている。一夜の夢のような濃密な時間だった。
高円寺にお寄りの際は勇気を出して飛び込んでほしい。最初は驚くだろうがまず間違いなく満足できることは保証しよう。
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