図書館を地域活動の拠点に――来館者に電子書籍サービスを提供する中野区立中央図書館
館内2カ所に設置してあるiPadや、持参したスマートフォン/タブレットなどを使い、名作文学や絵本、コミックなどを閲覧できる。
中野区立中央図書館で2月17日から、電子書籍閲覧サービス「なかの いーぶっく すぽっと」が展開されている。
これは、同図書館の指定管理者であるヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体が、凸版印刷のサポートを受けて実施しているもの。館内に構築された専用の無線LAN環境にアクセスすれば、用意されたコンテンツをブラウザビューワで読むことができる仕組みとなっている。館内には閲覧用端末としてiPad(据え置き6台、貸し出し用4台)が用意されているが、来館者が持参したスマートフォンやタブレットからでも利用できる。
同サービスで提供されるコンテンツは、絵本80点、名作文学63点、コミック450点。絵本は東京子ども図書館の選書基準を念頭に置きつつ、電子書籍の形態に合った本を代表企業ヴィアックスのテクニカルサポート室が選書。名作文学は、『不思議の国のアリス』『ピーターパン』などパブリックドメインの作品、コミックは手塚プロダクションからレンタルを受けた。閲覧ページのキャラクターはヴィアックスがデザインしており、そのほかのページデザインやWi-Fi構築などはすべて凸版印刷が手掛けているという。
図書館での電子書籍の貸し出しというと、図書館流通センター(TRC)や、OverDrive(オーバードライブ)、日本電子出版協会(JDLS)などが取り組んでいる「自宅から借りられて」「期間が過ぎると自動で返却される」という形態のものが一般的になっているが、なかの いーぶっく すぽっとは、図書館に足を運ばなければ利用できない。
一見すると不便に思われる仕組みだが、ヴィアックスの担当者によると「今回の取り組みは地域活性の一環としての意味合いもある」のだという。図書館に来てもらうことで利用者の増加を図り、図書館が地域活動の拠点となることを目指すとともに、電子書籍を体験してもらうことでその普及につながればとの意図もある。
主な利用者層は小さな子どもとその親だが、同館に足を運んでみると、興味深げに端末を操作する高齢者も多い。現状では、中・高生を中心とした若者の図書館利用率は低く、いかにして図書館に来てもらうか、電子書籍の活用法を模索中だと担当者は話す。
サービスは現在のところ2016年3月31日まで継続される予定。今後は、名作文学のコンテンツ数を増やすほか、満足度や追加してほしいコンテンツなどのアンケート調査を実施予定。結果次第では、都内のほかの図書館などにも取り組みを拡大したいとヴィアックスの担当者は話している。
(写真提供:中野区立中央図書館)
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