大日本印刷と紀伊國屋書店、合弁会社を設立――出版流通市場の活性化を目指す
ハイブリッド戦略を採る両社のノウハウを生かし、出版流通市場が抱える問題を調査・研究し、新たなビジネスモデルを提案していく。
大日本印刷(DNP)と紀伊國屋書店は3月19日、出版社流通市場の活性化などを目的に合弁会社を設立することを明らかにした。会社名は「株式会社出版流通イノベーション」。設立は4月1日を予定している。
この合弁会社では、リアル書店とネット書店のハイブリッド戦略で挑む両社のノウハウを共有し、Amazonの拡大による出版業界秩序の危機、返本率上昇による著者や書店への利益循環モデルの崩壊危機など、出版流通市場が抱えるさまざまな問題を調査・研究し、新たなビジネスモデルを提案していくという。
検討予定のテーマには、両社の提供するポイントサービスの統合、仕入れ・物流システムの共有化・合理化、倉庫の共有化、両社が海外で展開する店舗やPODを活用した販売強化、リアル書店の相互連携による付加価値創造、ブックカフェのような他業種との連携などを挙げている。
紀伊國屋書店が運営する電子書店「紀伊國屋書店 Kinoppy」と、DNPグループのトゥ・ディファクトが運営する「honto電子書籍ストア」のブランド名はそのままに、コンテンツ供給元の1本化を図るなど一歩踏み込んだ案も聞かれたが、まだ明確に決まっているものはないという。
4月から順次取り組んでいくが、実際にサービスが一般の人々に届くようになるのは、2016年以降になるだろうとしている。
「会社設立は、出版流通業界を変えていくんだという覚悟の現れ」という高井氏。合弁会社設立は1年ほど前から考えており、両社の取り組みに共通項が多いことなどを理由に、より強固に連携できるとしてDNPとパートナーシップを結ぶに至ったという。
出資金は1億円(資本金5000万円、資本準備金5000万円)、株式は両社が50%ずつ持つ。代表取締役社長には紀伊國屋書店代表取締役社長の高井昌史氏、代表取締役にはDNP常務取締役の北島元治氏、取締役にはそれぞれ、紀伊國屋書店から藤則幸男氏、DNPから五味英隆氏が就く。
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