e-Day:王者BEAに噛みつく挑戦者のエリソン

【国内記事】 2001.06.08

 4日目を迎えたJavaOneカンファレンスで,オラクルの総帥,ラリー・エリソンCEOが,WebアプリケーションサーバのリーディングベンダーであるBEAシステムズに牙をむいた。

 この日の基調講演は,サンのパット・スルツ執行副社長がモスコーニセンターに集まったデベロッパーたちにJavaコミュニティーへの貢献を促す内容で始まった。彼女は,かつてIBMでJavaデベロッパーのサポートを統括しており,そのときJavaOneで基調講演を行い,喝采を浴びたこともある。小柄だが,彼女の話し振りには人を動かす力強さがある。ちょうど女子高の生徒会長のような存在だろうか(もちろん歳はかなり離れているが……)。

 エリソンが痛烈な一撃を加えたのは,スルツのアジテーションでJavaデベロッパーたちが,パートナーシップによる標準の確立こそが革新をもたらす,という理念を共有し,Java 2 Enterprise Editionの標準策定に貢献するBEAシステムズの創設者,ビル・コールマンCEOもJavaコミュニティーを賞賛した直後だった(Webサービス対応やアプリ統合を売り込むBEA )。

 エリソンは,自らの出番がやってきて壇上に上がるなり,「Javaコミュニティーはチャレンジに直面している」と,いきなり冷や水を浴びせた。

「私は.NETなんかより,オープンなJavaが好きだが,いま市場に出ているJava 2 Enterprise EditionベースのWebアプリケーションサーバは性能とスケーラビリティで問題を抱えている」(エリソン)

 彼の直前に基調講演を行ったBEAへの「口撃」はこんなものでは収まらなかった。エリソンは,J2EEを最初に実装したベンダーとして尊敬しているとしながらも,2週間前にオラクルがリリースした「Oracle9i Application Server」がトップシェアのBEA WebLogicを遥かに凌駕したとアピールした。

 彼は,「これこそが事実」と,ベンチマークテストの結果を提示しながら,WebLogicにはスケーラビリティに弱点があると指摘した。Webアプリケーションのレスポンス性能を計測したものだが,Oracle9i ASが1000ユーザーになっても1.5秒なのに対して,WebLogicは20秒もかかったという。

JavaOneの雰囲気を一変させたエリソン

 さらにエリソンは,この市場で2番手につけるIBMにも噛みついた。

「IBMはBEAの2倍の性能をうたっているが,われわれがテストしたら逆だった」(エリソン)

 トランザクション処理性能を計測するベンチマークだが,Oracle9i ASは,WebLogicの4倍,WebSphereの10倍という結果を誇らしげに紹介する。

「“こんな結果を公表したら,みんな傷ついてしまう”と反対する人もいたが,これこそがオープンではないか? 1社に縛られないオープンなアプローチをBEAも受け入れなければならない」(エリソン)

 エンターテイナーのエリソンだから,強烈な「口撃」の割には会場のJavaデベロッパーはどっと沸く。

「Javaはマイクロソフトではない。より良い実装が出てくれば,それに移行すればいい。だからJavaが好きだ。コールマンはまだいるかい?」(エリソン)。

 Javaデベロッパーの前で名指しで恥をかかされたBEAのビル・コールマンCEOは,基調講演後のプレスQ&Aセッションで怒りを隠さなかった。エリソンがQ&Aセッションへの同席をキャンセルしたから,さらに火に油が注がれた。

「彼は事実をねじ曲げている」と,エリソンが座るはずだったディレクターチェアを睨みながらコールマンは売られた喧嘩を買った。

プレスQ&Aのコールマン(右)とスルツ。左はエリソンが座るはずだったディレクターチェア

「彼らのアプリケーションサーバ製品は,開発しては捨てられ,その繰り返しだ。オラクルがわれわれに勝てるのなら100万ドルの賞金をあげたい」と,皮肉たっぷりに,やり返すのも忘れなかった。

 サンのスルツは,「利益を産むのがパートナーシップ」というスコット・マクネリCEOの言葉を引用し,同市場でのBEAとの蜜月ぶりを印象づけ,コールマンをなだめた。

 エリソンが同席していたら,きっと取っ組み合いの喧嘩が始まったに違いない。それもオープンでいい。

[浅井英二 ,ITmedia]