日本通信,音声に加え営業マンなど企業向けにモーバイルデータ通信サービスを提供へ

【国内記事】 2001.08.22

 モーバイルインターネット分野で企業向けのソリューション事業を展開する日本通信(JCI)は8月22日,PHSデータ通信サービスを大口利用することでDDIポケットと先ごろ合意したことを受け,その通信インフラを利用して企業向けにMVNO(Mobile Virtual Network Operator)事業を展開すると発表した。新サービスの名称は「bモバイル・データサービス」。10月1日から32kbpsのサービスを開始し,11月からDDIが128kbpsの通信サービスを投入することに対応して,同社も128kbpsのサービスを追加する予定という。企業向けのモーバイルソリューション拡大に向け,注目されている。

三田社長。ハーバード大大学院,米メリルリンチ,日本モトローラ,アップルコンピュータなどを経て1996年に同社を設立した。

 同社の三田聖二社長は,「われわれはあくまでもソリューションを売る。顧客企業の課題を基に戦略を打ち出し,ハードウェアやソフトウェア,通信インフラを最適な形で組み合わせ,ソリューションを提供することで価値を生む新しい業態」と話す。

 顧客企業は,通信周りのシステムをアウトソーシングすることになり,自社のコアコンピタンスに経営資源を集中させることが可能になるわけだ。

 具体的なサービスの一例としては,1000人の営業マンから携帯端末を通じて注文データをインターネットやイントラネット経由で収集し,在庫や納期の調整をしたり,売り上げのトラッキング,営業マンに支払われるコミッションの計算などを行うシステムを構築および導入することなどが挙げられる。

 システム全体の構成を末端のユーザーから順に見ると,まずユーザーがノートPCやPDAから入力した情報は,JCI専用のPHSカードを通じて通信事業者に送られる。通信事業者とJCIのデータセンターは専用線で結ばれており,この専用線を使ってデータはJCIに入って来る。JCIのデータセンター内には,ワンタイムパスワードによる認証を行うRADIUSサーバやメールサーバ,アクセス制御などを行うIPメディエーションサーバなどが装備されている。そして,JCIのデータセンターは,インターネットや顧客企業のイントラネットに専用線やVPNでつながっており,ユーザーの入力データが目的地である企業のデータベースなどに送られる仕組みだ。

 特徴的なのは,ユーザーが使うJCI専用のPHS端末。JCIのデータセンター以外にはアクセスできない設定になっているため,顧客企業は,すべてのトラフィックを把握できる。また,bモバイル・データサービスでは,顧客は月々のサービス価格のみを支払えばよく,通信費は無料となっている。

 さらに,同社のロバート・ケリー副社長によると,顧客と要件を定義する段階で,顧客管理や生産管理などの分野に要望が及んだ場合に備え,CRMやSCM,ERPなどのパッケージベンダーと提携してソリューションを提供できるような体制を考えているという。

 また,ケリー氏は,MVNO事業者の新規市場参入も積極的にサポートしていくとしている。通信の分野では,課金やコールセンター,物流,電話機など特有のインフラが必要な場合が多く,整備するのが大変という。「いろいろな会社がやるべき。1つの業種にしていきたい」と話している。

 なお,MVNOは,日本語で仮想移動体通信事業者と呼ばれる。携帯電話やPDAなどのワイヤレス通信インフラをほかの企業から借り受け,多くの場合独自のデータ通信サービスを付加して再販している事業者を指す。日本ではまだあまり発展していない業態だが,欧州では英バージングループの「Virgin Mobile」など多くのMVNO事業者がいる。

 JCIはこれまでは,音声通信のMVNOの先駆けになることに力を入れてきており,武田薬品やパイオニア,バンダイなど大手を中心に1000社以上のクライアントを抱えているという。

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[怒賀新也 ,ITmedia]