Linux Column:再度Linuxでのデスクトップ分野の可能性を考える

【国内記事】 2001.10.09

 7月17日付けの本稿「Linuxのデスクトップ分野での可能性」で,Linuxでのデスクトップ分野の可能性について論じた。そのときに挙げたポイントは,「フォントの取り扱い」「日本語入力」「印刷」の3点だ。

 しかしもうひとつ隠れた課題がある。それは,「使いやすいオフィス製品の存在」だ。

 オフィススイート製品に関しては,良くも悪くも「Microsoft Office」に「一日の長」があり,Windows環境だけでなくMacintosh環境においてもシェアを確保している。こうなると,どうしてもLinux環境でも比較対象にせざるを得ないところだが,これまでのLinuxは残念ながら不戦敗だった。

 いや,不戦敗という以上に単体で見た場合の完成度についても難があったと言える。「MS Office for Linuxが出て欲しい!」と嘯く向きもあったぐらいなのだ。

 だが,ここに来て少し風向きが変わってきた(だからこそ,このテーマを蒸し返しているのだが……)。

 サン・マイクロシステムズが,以前買収し開発を進めてきた「StarOffice 6.0」(日本名では「StarSuite」)をベータリリースしたからだ。先日の「LinuxWorld San Francisco」でデモンストレーションを見たが,完成度もかなり高く,MS Officeに遜色無い,といっても言い過ぎでないできだ。

 しかし常々「MS Officeは機能が多すぎる」と言われてきただけに,豊富な機能を装備するということが必ずしも先行しているソフトに追いつくことではないのではないだろうか?

 日本のオープンソース系のユーザーコミュニティでも,期待を込めていることもあるだろうが前評判は上々で,リリースが来年になるというのがちょっともどかしい。こんな製品だからこそ,こまめなリリースとそれに対するフィードバック,そしてさらなるリリース,というような体制で開発は出来ないだろうかと思う。

 サンは,StarSuiteを「OpenOffice」という形でGPLライセンスでオープンソース化している。すでにサン自身は,StarSuiteのMac OS X対応をOpenOfficeの手に委ねており,開発が進められている。

 これは言ってみれば,NetscapeとMozillaの関係のようなものだ。両者の開発が相互に支援し合う形になれば,より良いものが出来上がっていく可能性は高い。ただ,うまくいかなかったら……。

 今はそういうネガティブな考えを持つのはやめよう。

 少なくとも私の聞く範囲では,MS Office XPへの移行というのはそれほど進んでいない。私もそうだがMS Office 2000の機能で十分だからだ。データ復旧機能も,痛い目にあったことのある人間は,昔のMacユーザーの如く,こまめなセーブを欠かさない(私も昔からのMacユーザーだ)。

 そんなちょっとした閉塞感のある状況に出てきたStarSuiteは,輝ける星となれるか,それとも流れ星に終わるのか……。もし後者だとしても,願い事を3回言うのだけは忘れないようにしよう。

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[宮原 徹びぎねっと]