Interview:迅速なエンタープライズ機能の実現がLinuxビジネス成功のカギ

【国内記事】2001.10.10

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は10月10日,同社のサーバ製品ブランドである「IBM eServer」シリーズの最新動向をプレス/アナリスト向けに紹介する「IBM Intelligent Infrastructure Event」を都内ホテルで開催し,UNIXサーバやPCサーバの最新テクノロジーを紹介した。そこで,来日した米IBMのLinux担当副社長,スティーブ・ソラッゾ氏に,同社のLinuxビジネス戦略について話を聞いた。

米IBMのLinux担当副社長,スティーブ・ソラッゾ氏

eWEEK 企業向けのLinuxビジネスも提供するベンダーにより少しずつフォーカスが違ってきました。現在,IBMのLinux戦略では,どのような分野にフォーカスしていますか。

ソラッゾ われわれがLinuxビジネスで常に意識しているのは,エンタープライズクラスのシステム構築でLinuxをいかに効率よく利用できる環境を顧客に提供することが可能かと言うことです。そのために現在では,「ワークロードの統合」「クラスタ技術」「分散エンタープライズ」「アプライアンス」「ハイボリュームLinux」の5つの分野にフォーカスを当てています。

 例えば,ワークロードの統合では,数多くのLinuxサーバで運用されていたシステムを,1台のIBM eServer zSeriseに統合して運用管理やリソース面での大幅なコスト削減を実現した事例が既にいくつも存在しています。また,クラスタ技術では,年末までにハード/ソフト/サービスが完全に統合された新製品をリリースする予定です。アプライアンス製品も年内に新製品を発表することになっています(関連記事参照)

eWEEK IBMにとって,Linuxビジネスは儲かるのですか。

ソラッゾ もちろんです。IBMのLinuxビジネスは,われわれが提供するハードウェア,ソフトウェア,サービスのすべてのビジネス分野に密接に関わっています。Linuxは,IBMのビジネスに既に溶け込んでいるのです。

 2000年にLinuxビジネスをスタートしたときには,IBM eServer xSeriseしかサポートしていませんでした。しかし,2001年現在,xSeriseをはじめ,zSerise,ソフトウェア,サービスとビジネスが拡大しています。さらに2002年には,pSerise,iSeriseのすべてのIBM eServerでLinuxをサポートします。

 われわれのLinuxビジネスの範囲は,どんどん拡大しています。

eWEEK しかし,同じハードウェアを販売するのであれば,z/OSやAIXを搭載したほうがより多くの売り上げを実現できると思いますが。

ソラッゾ われわれは,顧客が最も必要とする最適なソリューションを提供することが重要だと考えています。ですから,始めにお話した5つのフォーカス分野には,Linuxベースのソリューションを推奨します。一方,z/OSやAIXを提供した方がいい場合もあるのです。例えば,z/OSであれば大量のトランザクションを高速に,高い信頼性の上で処理しなければならない場合に有効です。またAIXは,ERPシステムの構築や,特にマルチプロセッサ(SMP)による科学技術計算の分野などで有効です。

 現在のLinuxでは,これらのソリューションを実現することはできません。今後,こうした機能もLinux上で実現されるでしょうが,それでもz/OSやAIXなど,ほかのOSが不要になることは無いでしょう。

eWEEK IBMでは現在,大規模なLinuxシステムの実現に注力していますが,中小規模ビジネス市場におけるLinuxの可能性をどのように見ていますか。

ソラッゾ もちろん中小規模ビジネスを忘れているわけではありません。Linuxを利用するメリットは,エンタープライズ機能がモジュール化でき,信頼性,安定性の高いシステムを低コストで実現できることにあるのです。まさに,中小規模ビジネスに最適なプラットフォームといえます。

 ただし,中小規模ビジネスでLinuxを利用するためには問題も残っています。それは,Linux対応のアプリケーションの不足です。中小規模ビジネスでWindows 環境と勝負するためには,さらなるアプリケーションの充実が必要です。

 どれだけ迅速に,エンタープライズ機能を実現できるかがLinuxビジネス成功のカギと言えるでしょう。

eWEEK HPがコンパックを買収したことで,新会社はIBMに次ぐ第2位のコンピュータベンダーに成長することになります。HPもコンパックもLinuxビジネスに力を入れていましたが,両社の合併がIBMのLinuxビジネスに影響を及ぼしますか。

ソラッゾ 難しいですが,全く影響しないということはないでしょう。両社ともわれわれ同様に,Linuxビジネスを強力に推進していますから……。しかし,両社はしばらくの間,Linuxビジネス以上に力を注がなければならない仕事が待っています。それは,2つの会社の文化を統合するという作業です。

 Linuxビジネスだけを見ても,両社が戦略を1つにまとめ,再スタートするまでには,ある程度の期間が必要になるでしょう。

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[山下竜大 ,ITmedia]