Case Study:ミラポイントのメールアプライアンスでサービスを安定させた東京大学(3)

【国内記事】2001.11.05

管理権限委譲で柔軟な運用を実現

 M2500を核としたメールホスティングサービスには,ほかにもいくつかメリットがある。

 まず,セキュリティ上必須の要件とされたSSLに対応しており,リモートからのアクセスについても通信の安全性を確保できること。また,ドメインごとの管理(バーチャルドメイン。ミラポイントではこのような機能を「デリゲーティッドドメイン」と称している)が可能なため,それまで要望の高かった,組織ごとの独自ドメインが利用できるようになったことも大きい。

 現在,東大で使用しているM2500には400GB以上の容量を持つRAIDディスク装置を接続してバックアップに利用しているが,仮にこのディスク容量が逼迫したとしても,RAID側に最大580GBまでディスクを増設していくことで対応でき,メールシステムそのものには影響を与えない。これも,もはや落ちることが許されないメールサービスにとっては重要なポイントだ。

 さらに,メールホスティングサービスでは,ユーザーの追加や変更などの日常的なメンテナンス作業は,Webブラウザを通じて各組織の担当者が行うことにした。

 これも,M2500とデリゲーティッドドメインの組み合わせによって可能になった運用だ。ドメインごとの管理者がそれぞれユーザーの追加や変更を行うことによって,センター側の負担を減らすとともに,組織側の変更に迅速に対応できるようになった。現在では,5人から数百人単位のデリゲーティッドドメインがM2500で運用されている。

「トラブルらしいトラブルは皆無」

 現在,M2500はメールホスティングサービスの核として導入,運用されている。これとは別に,ウイルスチェック用にトレンドマイクロの「InterScan VirusWall」を搭載したマシンを2台導入し,手前にファウンドリネットワークスのマルチレイヤスイッチ「ServerIron XL」を置くことで,ウイルス検出の負荷分散を行う仕組みとした。M2500にもウイルス検査の機能が搭載されているが,パフォーマンスの観点からこうした仕組みが取られたという。また同様の理由から,WebメールについてもM2500ではなく,トランスウェアの「Active! Mail」をこれも2台用意し,組織ごとに使い分けている。

 新システムの導入作業,特にM2500の導入は,あっけないほど早く終わった。「正直に言うと驚きました。一般にはメールサーバを導入するとなると,テストをしたり,チューンナップしたりといろいろと手間がかかるものですが,M2500は,入れてから動かすまでが非常に早かった。ほんの数時間で終わりました」(安東氏)。その後も,特にトラブルに見舞われることもなく順調に稼働しているという。

 新サービスが稼働してから数カ月が経つが,東京大学情報基盤センター情報リテラシー教育支援掛 文部科学技官で,このシステムの運用を担っている中山仁史氏は「トラブルらしいトラブルがない」と語っている。

システム運用に当たる中山仁史氏によれば,ほとんどトラブルはないという

 強いて挙げれば,既存の勝手メールサーバからメールホスティングサービスに移行する際の手順には若干注意を要するそうだが,これについては必要事項をまとめたドキュメントをWebで公開していることから,それほど大きな問題は発生していない。

 また,汎用的なUNIXシステムとは異なり,一部コマンドが利用できないという問題もあるそうだ。ただ,そもそも新システムの第一の要件として,汎用性よりもメールに特化した機能を求めていたことから,これも許容範囲内の問題だという。

 今後もメールサービスの需要は,増えることはあっても,決して減ることはないだろう。安定性と信頼性を備え,ますます増えるデータ量にも耐えうるメールインフラの例として,東京大学メールホスティングサービスの意味は大きい。

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[高橋睦美 ,ITmedia]