e-Day:DataSlimやポケボーの派生商品が面白いシチズン

【国内記事】2001.11.07

「超時計」を掲げるシチズンが11月6日,7日の2日間,東京国際フォーラムでプライベートカンファレンス「CITIZEN FORUM 21」を開催した。

 シチズンといえば,われわれの世代は1978年に発売された「デジアナ」なんかが今でも印象に残っている。液晶表示とアナログ時計のコンビネーションで,不思議な先進性とファッション性を併せ持っていた。これがかなりヒットし,1機種で100万個を売ったという。

 ちなみに1980年にはアナログ時計の部分を大きくした「アナデジ」も商品化された。

 PC関連でいえば,「DataSlim」シリーズだろう。米フランクリンにOEMされ,米国では「REX」という名前で1997年から販売されたPCカード型のPIMデバイスだ。新しモノ好きはみんな,ラスベガスのCOMDEXやシリコンバレーに行くと買って帰ったりした。現在米国でのビジネスは終了しているが,国内版はDataSlim2へと改良も進み,累計出荷は60万台に達する。

 CITIZEN FORUM 21では,「DataSync Card」と呼ばれるDataSlim2の後継製品も参考展示され,人垣をつくった。ひと回り大きい縦型になって,微弱なワイヤレス通信でPCにUSB接続されたクレドールとデータを交換する方式に変更される。このPIMカードなら携帯電話と一緒に何とかワイシャツの胸ポケットにも入るし,240×320ピクセルで16階調表示になって,画像もきれいに表現できるようになる。

 ワイヤレス通信の方式は,Bluetoothではなく,シチズン独自のもの。通信範囲が1〜5メートルと短いものの,Bluetoothと比べると10分の1という低い電力消費が魅力だ。CITIZEN FORUM 21では,このワイヤレス通信機能を搭載した腕時計のプロトタイプが多数参考展示されていた。

 ちなみにLinux搭載で話題を振りまく「WatchPad」は,Bluetoothが社会のインフラとして普及するのを睨んで,同通信機能を搭載するが,腕時計がバッテリー切れで止まってしまっては洒落にならない(シチズンの携帯デバイスはLinuxがお好き?)。

 DataSlimの系譜としては,NECのノートブックPC,「LaVie T」に付属する携帯シリコンオーディオプレーヤーの「InfoAudio」もある。InfoAudioはシチズンとNECが共同開発したもので,LaVie Tの専用スロットに差し込んで,CDやインターネットから音楽をダウンロードできる。

 なぜDataSlimの流れを汲んでいるかというと,LaVieの独自性を打ち出したいNECの思惑もあって専用スロット対応となったが,当初シチズンではPCカードタイプのMP3プレーヤーを試作していたからだ。さらに,DataSlimらしいところとしては,メールを取り込んで読めるように16字×3行を表示する液晶ディスプレイも付いている。

 あの一世を風靡した「ポケットボード」もシチズンの開発によるものだ。1997年暮れ,10円メール機能を搭載して,NTTドコモから発売されたポケットボードは120万台を売り,新しいメール文化を築いた。その後,ポケットボードは「ポケットボードパレ」へと熟成が進んでいるほか,今年初めにはWebブラウザを搭載した「カラーブラウザボード」といった派生商品も登場している。

 このカラーブラウザボード,P-inComp@ctの拡販ツールとしての立場に甘んじているが,実力は十分に備えている。6800円程度で売られていて,リーズナブルな携帯端末といえるだろう。商品企画の担当者によると,PDA機能を組み込んだ商品の企画も進んでいて,中国をはじめとするアジア市場に投入したいとしている。

「ポケットサイズのグループウェアサーバ」というユニークすぎる「Party's Link」のプロトタイプが参考展示されていたが,これもポケットボードのチームが開発しているものだという。ポケットタイプの端末でLinuxとWebサーバを走らせ,グループスケジューラーのCGIアプリを載せた変わりモノで,いわゆるクライアントはiモード端末だ。

 ポケットボードは,携帯電話の表示と入力を拡張して,メールを読み書きしやすくしたものだが,今回はiモード端末からParty's LinkのWebアプリケーションにアクセスしようという,いわば逆転の発想といっていい。キーボードの付いているポケット端末よりも,iモード端末の方が親しみやすいと感じる人たちが多いと踏んでいるわけだ。主客の立場が逆転している。

 DataSlimでは液晶ディスプレイの付いたPIMをPCの中に差し込んでしまおうという凄い発想を見せたシチズンだが,Party's Linkも負けてない。

[浅井英二 ,ITmedia]