Interview:無料の聖杯で開発者を囲い込むオラクル

【海外記事】2001.12.06

「Oracle9i JDeveloper」(JDeveloper9i)の発表は,「Oracle OpenWorld 2001」の目玉の1つとなった。凝ったキーノートでJDeveloper9iを聖杯になぞらえたジェレミー・バートン上級副社長は,担当する製品ラインでも,特にツール開発へのコミットが深いという。そこで,同氏にJDeveloper9iについて話を聞いた。

JDeveloper9iの開発をリードしたジェレミー・バートン上級副社長

ZDNet キーノートでJDeveloper9iが紹介されましたが,9iブランドで初めて出荷する背景には何があったのでしょうか。

バートン われわれには,3つのブランドがあります。「オラクル」という社名そのものがブランドですし,技術としての9iブランド,そしてアプリケーションのE-Business Suiteです。

 JDeveloperを9iブランドとして出荷したのは,これがベストな開発環境としてユーザーに理解してもらうためです。われわれは,Oracle 9i Application Server(9iAS)を最も人気のあるアプリケーションサーバとして認知してもらいたいのと同様に,J2EE開発環境であるJDeveloper9iもポピュラーなものにしたいのです。

 このツールをベストと考えてもらえれば,長期的に9iASやデータベース製品を買ってもらえますから,戦略的なアプローチでもあります。

ZDNet これまでボーランドからツールをライセンスしていましたが,今回のものは違うようですね。

バートン 1998年に出荷を開始してから,バージョン1〜3は,ボーランドのソースコードがベースになっていました。これを,今回からJavaですべて書き直しました。

 ただ,ここできちんと認識してもらいたいことがあります。われわれは,これでボーランドがライバルになったと考えてはいません。ボーランドは,昔からツールにフォーカスした企業です。彼らのファンは非常に多く,開発者たちのハートをつかんでいる企業と言っていいでしょう。

 それでも,自分自身でJDeveloperを開発したのは,これからの戦いに備えるためです。是非マイクロソフトやIBMの開発環境とJDeveloper9iを比較してください。ボーランドは,開発コンセプトなどを見ても素晴らしいですが,マイクロソフトやIBMの製品は,そんなに大したものではないですよ。なお,われわれがボーランドのソースコードを盗んでいないことも明言しておきます。

ZDNet ガートナーから高い評価を得たというリリースもありましたね。

バートン 実は,彼らがレビューしたのはバージョン3.2で,9iブランドの製品ではないのです。彼らは,次回のアップデートでJDeveloper9iをレビューするはずですが,それでさらなる評価を得られると確信しています。

ZDNet OTN(Oracle Technology Network)から無償でダウンロードできるそうですが,実際のところ,どれくらいの時間でダウンロードが完了するのですか?

バートン 私は,開発者たちが「軽い。すぐダウンロードできる」と言うのを信じていなかったのですが,実際にやってみて驚きました。DSLの1.5Mbpsなら約5分,会社の回線ならもっと速くダウンロードできるはずです。サイズは50Mバイトで,インストールはわずか30秒で完了します。

ZDNet 米国ではデータベース,アプリケーションサーバ,そしてツールと3番目に重要な製品と見なされているようですが,日本でのプレゼンスは低いようです。これをオラクルが提供するツールとしてどのようにプロモーションする計画ですか。

バートン 開発者が気にするのは,フリーソフトであるか,無料で使えるようになるか,そして「使えばいっぱいお金を儲けられるか」という3つです。また,彼らはツールを買うより盗むことを好むものです(笑)。われわれは,「どうせ盗むならオラクルはタダですよ」というアプローチを取ります。

 開発者には無料でダウンロードしてもらって,OTNで勉強してもらって,もちろんコピーしてもらっても構いません。われわれは,開発者からでなくITマネジャーにJDeveloper9iを使ってアプリケーションを構築したいと考えてもらうことで,儲けようと考えているのです。

 ツールの売り上げが下がっているのは私の責任ですが,むしろ9iASやデータベース製品を買ってもらうための先行投資と考えてください。開発者をオラクル好きにして,IBMやマイクロソフトに差をつけたいですね。

関連記事

▼探し求めたOracle9i JDeveloperという聖杯

関連リンク

▼日本オラクル

[聞き手:浅井英二&井津元由比古 ,ITmedia]