Gartner Column:第29回 2002年の動向を予測する(1)〜地味な分野にこそ注目を!
| 【国内記事】 | 2002.01.07 |
2回に分けて2002年に注目されるであろうIT投資分野について予測してみたい。新年なので派手に夢を語りたいところだが,企業は今まで以上に堅実な分野へとIT投資をフォーカスしていくことになるだろう。結果として,2002年は,今まで比較的地味で泥臭いと考えられていた分野に注目が集まる(というよりも,集まるべき)年になるだろう。
今年,再注目が集まるであろう分野としてTCO削減を挙げたい。ご存じとは思うが,TCO(総合保有コスト)とは,元々ガートナーが提唱した概念であり,システムのコストを単にハードやソフトなどの目に見えるコストだけではなく,運用管理,そしてエンドユーザーがシステムのお守りに費やす時間の人件費などの隠れたコストまで全部込みにして考えようという発想である。
TCOという言葉は,日本国内においては,1996年頃に流行語としてもてはやされた後,今はやや古くさくなってしまったかのようだ(つまり,ハイプ曲線の底にあると言えるだろう)。しかし,史上最悪の経営環境と言える今こそTCO削減を重要案件ととらえるべきだ。
TCOの考え方は,デスクトップPCだけに適用されるものではない。さまざまなシステムに対してTCO調査を行ってみると,共通した事実が明らかになってくる。それは,「物のコスト」に比べて「人のコスト」が高いということだ。結局,システムの管理容易性を向上し,管理負荷を下げなければシステムのコストは下がらない。
過去,TCO削減の価値をあまり認めていない企業の言い分に,「TCOを削減したところで,人が減らせるわけではないのだから意味がない」というものがあった。つまり,「人がいるから仕事を作らなければならない」という発想だ。しかし,このような発想が今後通用しなくなるのは明らかだ。
2002年はシステムの運用管理を支援するシステム管理,ネットワーク管理,デスクトップ管理などのTCO削減効果が高い製品には,今まで以上に注目が集まることになるだろう。また,第27回でも述べたが,今後の企業内のストレージ容量の飛躍的増大を考えると,ストレージ管理ソフトウェアはとりわけ重要な市場となるだろう。
TCO削減に関連する特に重要な案件として,サーバ統合(ガートナーではサーバ集約と呼ぶことが多い)がある。サーバ集約とは,企業内で地域的に分散した多数のサーバを再集中化し,さらには,より少ない台数の大型サーバへと集約することである。
ここ5年間,ほとんどの大手企業が何らかの形でサーバ集約を実施してきている。一般に,サーバ集約によるTCO削減効果はきわめて大きい。さらには,分散した多数のサーバの管理負荷が高すぎて,何とか策を打たなければにっちもさっちも行かなくなっているという企業も多いだろう。
サーバ集約について2002年に特に顕著な動きは,UNIXサーバだけではなくインテルサーバの分野においてもサーバ統合が現実的になってきたことだ。過去においては,インテルサーバの集約では,サーバのスケーラビリティが考慮点となることが多かった。少数のサーバにアプリケーションを集約する以上,サーバには十分すぎるほどの余力が必要となる。サーバの処理能力が上限にきてしまい,アプリケーションを分割しなければならなくなるとするならば,そもそものサーバ集約の意義が半減してしまう。
それでは,多数のインテルサーバをUNIXサーバに集約するのはどうかというと,パッケージ中心型の展開であればまだしも,独自開発アプリケーションを集約化のためだけに移植するのは難しいケースも多かった(特に,Visual Basicが使用されている場合などは移植が容易ではないだろう)。
今まで,このようなサーバ集約向けのハイエンドインテルサーバの需要にこたえる製品としてユニシスのES7000があった。この製品は最大32CPU構成をサポートし,サーバ集約において有効性が高い区画分割機能(1台のサーバを分割して複数のOSを稼働する機能)も備えた強力な製品だ。
性能的にはハイエンドUNIXサーバに匹敵するが,価格もUNIXサーバ級であり,発表当初はどの程度成功するか懐疑的な声もあったが,予想以上に売れた。今年からはIBMがxSeries 360でハイエンドインテルサーバ市場に参入する。さらに,IPFにコミットしているHPとコンパックが同様なサーバ製品を出す可能性も高い。(HPの場合には,PA-RISC自体をIPFに移行しようとしているので,必然的にハイエンドUNIXサーバがそのままハイエンドIAサーバになることになる)。
業界標準のコモディティ技術にベンダー独自の付加価値を加えたこれらのハイエンドインテルサーバは,2002年の要注目製品のひとつであると考えている。
TCO削減のように地味だが効果が上がりやすい分野に堅実なIT投資を行う企業の体力は高まるだろう。また,このような企業の要望にこたえられるソリューションを提供できるベンダーは,2002年でも確実に成長して行くことができるだろう。次回は,このようなIT投資分野についてさらに述べていきたい。
関連リンク
Gartner Column:第30回 2002年の動向を予測する(2)〜「あるものを生かす」という発想
[栗原 潔 ,ガートナージャパン]
