.Netの本格始動は「BizTalk 2002」から

【国内記事】2002.3.07

 BizTalk 2002 Serverが2月に発表された。企業向け製品であるため派手さはないものの,XML Webサービスであらゆるコンピュータをつないでしまおうという.Net構想を実現する上で,一番の中核となる製品は実はこのBizTalk Serverだ。

 BizTalk Serverは,簡単に言えば,XMLデータを利用して,企業間のシステムやアプリケーションをつなぐためのソフトウェア。Visual Stuido .Netと共に,企業間のシステム連携を実現する。

 例えば,パソコン部品メーカーは,BizTalkによって部品のサプライヤーとオンラインでシステム連携することで,相互に取り決めたルールにしたがって在庫を管理できる。在庫が足りなければ,BizTalkが自動的にサプライヤーに部品の発注を行ってくれるわけだ。在庫水準を適正化できることや,自動化することによる人件費の削減により,BizTalkベースの企業間システムを導入した企業は,コスト削減のメリットを受けることができる。

 米国では,HIPAA(医療保険の携行性と責任に関する法律)に関して,医療業界全体でシームレスにデータ連携や管理ができるBizTalkのソリューションが既に展開されている。米マイクロソフトは,HIPAAに特化した「BizTalk Accelerator for HIPAA」をリリースしている。

 日本では,電子部品に関する標準化団体であるロゼッタネットに関して,「BizTalk Accelerator for RosettaNet」がリリースされている。Acceleratorは,ターゲットとなる企業や市場向けの基本的なビジネスロジックとデータ変換機能をBizTalkに組み込むためのコンポーネントだ。

 新製品のBizTalk 2002について,マイクロソフトの製品マーケティング本部,.Netエンタープライズサーバ製品部で部長を務める北川裕康と,同部のe-ビジネスサーバグループの中野雅由マネジャーに話を聞いた。

北川氏と中野氏(右)

「B2BよりEAIが先決」と話す北川氏。BizTalk 2000まで同社は,BizTalkをB2Bを実現するソフトウェアとして強くアピールしてきた。しかしながら,実際に企業間をつなぐためには,まずはEAI(Enterprise Application Intreface)によって企業内のシステムを統合しなくてはならない。そのため,マイクロソフトはBizTalk 2002において,企業内のシステムを統合するEAIとしての特色をまずはアピールする考えだ。

 中野氏は,一般に企業システムではSAP/R3を部門のみに導入するなど,「全体としての効率化が図られておらず,部分最適だった」と話す。これを改善する方法としては,既存のシステムをすべて捨てて,ERPを全社導入する方法が1つ。しかし,そこまで大げさなことはできないという顧客企業に提示するソリューションが,BizTalkによるEAIだ。メリットは,既存のシステムを捨てなくて済むことと,そして「何よりもトータルコストが1ケタ2ケタ違ってくる」という。

ERPとCRMも楽に統合

 BizTalkによってEAIを実現するシステムをインテグレーションする企業に,米マイクロソフトと日立製作所の合弁会社であるシステムインテグレーター,ネクスタイドがある。同社は,技術者教育を兼ねて,自社のシステムをBizTalkによるEAIで構築している。

 社内システムの構成は,販売管理や会計などの基幹システムにSAP/R3,営業活動やサポートサービスにはCRMツールのOnyxなどとなっている。これらの製品同士を,BizTalk 2002でデータマッピングし,XMLでデータ連携することで,全く異なるERP製品とCRMソフトをシームレスに連携している。

 これと同じ機能を提供するシステムを構築するには,ERPの全社導入が最も「美しい」ことは間違いない。しかし,BizTalkを利用すれば,ずっと低コストかつ短期間でシステムを開発することが可能なわけだ。

BizTalk 2000からの改善点

 北川氏によると,BizTalk 2002の大きな特徴は,「ロングトランザクション」のサポートだ。例えば,発注システムと受注システムの間のデータ受け渡しで,トランザクションの処理が遅れたとしても,それをキューにためて処理が実行されるのを待つことができる。処理が部門間に渡り,実行が遅れるようなケースにも対応できるという。

 また,BizTalk 2002では,HTTPによる送受信のパフォーマンスが大幅に向上しているという。BizTalk 2000ではASP(Active Server Pages)を介していたが,2002ではHTTPやHTTPSで受信したデータを直接扱えるようになったからだ。

 さらに,BizTalkオーケストレーションサービスのパフォーマンスの最適化や,XML Webサービスをサポートするツールの提供,BizTalkエディタやBizTalkマッパーの向上,エンタープライズ製品のすべてのサーバでシステム状態とサービスの可用性を監視する「Microsoft Operations Manager」(MOM)に対応していることも新しい機能だ。

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[怒賀新也 ,ITmedia]