Life Sciences Day:オラクルが「Life Sciences Day」で医薬業界への取り組みを明らかに

【海外記事】2002.4.09

「Oracle AppsWorld 2002 San Diego」を開催中のオラクルは4月9日,サンディエゴ市内のホテルで「Life Sciences Day」を行い,医薬業界向けの「Information Architecture for Life Sciences」を発表した。

 コンベンションセンターから程近いホテルのボールルームには,約300人を超える医薬業界の関係者が詰め掛けた。Life Sciences Dayは,昨年12月,Oracle OpenWorld San Francisco 2001の会期中にも行われている。

 Information Architectureは,可用性とスケーラビリティに優れたOracle9iを基盤とし,シングルデータモデルを構築,その上にさまざまな業務プロセスをプラグインできるアーキテクチャを表現したもの。特定の業界向けに使ったのは初めて。医薬業界に取り組む同社の姿勢がうかがえる。

 医薬業界版のInformation Architectureでは,E-Business Suiteの各種アプリケーションや,Oracle Clinicalをはじめとする医薬業界向けのパートナーアプリケーションを組み合わせる。

 オラクルでデータベースサーバを統括する執行副社長のチャック・ロズワット氏は,「化合物の発見から,新薬の開発,商品化,およびセールスとマーケティングまで,すべてのバリューチェーンにおいて,エンドツーエンドの自動化とシームレスな情報の流れをつくりだす必要がある」とし,Information Architeture for Life Sciencesを売り込んだ。

データベースのトップ,ロズワット執行副社長

 この日のセッションには,多くのゲストが欧州から招かれ,医薬業界が直面している課題についてディスカッションが行われた。

 英国のプライスウォーターハウスクーパーズで医薬業界や化学業界を担当するリードパートナー,スティーブ・アーリントン氏は,医薬業界全体の収益率低下を指摘し,新薬開発のさらなるイノベーションと商品化までの迅速化が生き残りには欠かせないとした。

 化合物を発見しても,商品化まで漕ぎ着けるのは5000件に1件という厳しい医薬業界だが,「ベストセラーに頼る構造は変わっていない。しかも,その特許が永遠に保護されるわけではない。今売れ筋のトップ100のうち53までが2005年までにはその権利を失ってしまう」とし,この業界には新しいモデルが必要だとした。

 アーリントン氏は,新しいモデルでは「医療コミュニティー」の構築が重要だと指摘する。このコミュニティーは,単に研究所から臨床試験部門,製造部門,販売部門など製薬会社の内部にとどまるものではない。米国であれば,FDA(米国食品衛生局)のような規制当局や,病院,医師,患者まで至るまで,一連の流れを情報基盤でつなぐものだ。

 プライスウォーターハウスクーパーズは,この日発表されたInformation Architeture for Life Sciencesのパートナーにも名を連ねている。Oracle9iを核とし,Oracle ClinicalやE-Business Suiteを基盤としたシステムのコンサルティングを展開していくという。

 オラクルのロズワット氏は,こうした基盤の中でも,自らが統括するOracle9iデータベースに比較的多くの時間を割いた。

 彼が特別に「Oracle9i Discovery Platform」と呼んだOracle9i製品群は,堅牢さやスケーラビリティはもちろん,病気と関連性のあるパターンを探しだしてくれるデータマイニングの機能や,フラットファイルや他社データベースも統合できる柔軟性を備えている。

 バイオインフォマティクスの分野では,外部のWebサイトやデータベース,あるいは構造化されていないテキストデータを活用することも多いといわれ,こうしたデータ統合の柔軟性や,Oracle Textのほか,「Distributed Query」「Ultra Search」といった検索機能も生きてくる。

 なお,Information Architeture for Life Sciencesのパートナーとして,プライスウォーターハウスクーパーズ以外にも,MDLインフォメーションシステムズやアセロ,ジェネティックエクスチェンジ,デンドライトが発表されている。

 MDLは化合物発見のフェーズをサポートするアプリケーションで1000社以上の顧客を抱え,デンドライトも医薬品会社向けのSFAではリーディングベンダーだ。また,ジェネティックエクスチェンジには,60以上のバイオ関連データソースやアルゴリズムにアクセスできるようにしてくれるデータアクセスソリューションを提案するという。

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[浅井英二 ,ITmedia]