低コスト,低リスク,短期間で導入可能なCRMサービス「salesforce.com」

【国内記事】2002.4.12

 今年2月に,エンタープライズ向けCRMサービスを発表し,SAPやオラクル,シーベルなどに宣戦布告したばかりの米セールスフォース・ドット・コムの日本法人であるセールスフォース・ドットコムは4月12日,エンタープライズ向けCRMサービスの国内展開に関する同社の戦略を明らかにした。

ベニオフ氏は,13年間のオラクル時代に数多くのWebビジネスを実現した実績を持つ

 同日開催されたCRMの導入を検討している企業の経営者向けのセミナーの基調講演のために来日した,米セールスフォース・ドット・コムの会長兼CEO(最高経営責任者),マーク・ベニオフ氏は,「ただ水が飲みたいだけなのに,わざわざ井戸からほる必要があるだろうか? CRMを利用したいだけなのに,高いコストを払い,何年もかけてSAPやオラクル,シーベルを導入するのはナンセンス」と言う。

 ベニオフ氏は,「われわれのユーティリティモデルを利用することで,ソフトもハードも管理者も不要。低コスト,低リスク,短期間でエンタープライズクラスのCRM導入が実現できる」とした。ガートナーによれば,パッケージによるCRM導入の55%は失敗しており,メタ・グループでは,導入およびカスタマイズに必要な費用はライセンス費の2〜6倍と報告されている。

 同社のエンタープライズ向けCRMサービス「salesforce.com Enterprise Edition」(salesforce.com EE)は2月1日より,既に国内でもサービスが提供されているもの。サービス開始から1年で250社以上が利用している既存CRMサービス「salesforce.com Professional Edition」(salesforce.com PE)に,XMLベースのWebサービス機能や統合管理コンソール,収益の予測機能,「salesforce.com Offline Edition」(salesforce.com OE)が搭載された大規模企業向けのCRMサービスだ。

 従来,営業支援が中心だったCRMサービスに,キャンペーンマネージメントおよびカスタマーセルフサービスという大規模CRMに不可欠な2つのサービスも追加されている。

 salesforce.com EEの国内での本格展開にあたり同社では,NECとNECソフト,日立製作所と日立ソフトウェアエンジニアリング,および東芝と新たに提携を発表。ERPシステムやデータウェアハウスなどのバックエンドシステムとの統合や,PDA,携帯電話などのフロントエンドシステムとの連携などを実現するインテグレーションサービスも展開していく計画だ。

 インテグレーションサービスの実現のためにsalesforce.com EEでは,XML APIを提供。このXML APIを利用するための「Webサービスインテグレーションキット」を,4月15日にリリースする。同ツールキットを利用することで,salesforce.com EEのXML APIを呼び出し,さまざまなシステムとXMLベースのWebサービスで統合することが可能という。

Microsoft .Net技術を採用し,非同期処理が可能な「salesforce.com Offline Edition」

 また,salesforce.com OEは,salesforce.comの機能をオフラインで利用できる新しいCRMサービス。例えば,飛行機や電車などの乗り物の中や外出先など,ネットワーク環境が利用できない場合でも,salesforce.comの機能を利用することが可能になる。オフライン中に更新されたデータは,ネットワーク環境にアクセスした時点で同期することができるので,データを常に最新の状態に保つことが可能という。

 salesforce.com OEの最大の特徴は,ほかのサービスと同様に,同サービスを利用するためのソフトウェアを一切導入する必要がないことだ。オフライン機能を利用する唯一の条件は,Microsoft Internet Explorer 5.0以降を利用していること。これは,同サービスが,Microsoft .Net XMLアーキテクチャを利用して実現されているためだ。具体的には,XML Communication to Service,Microsoft XMLスタイルシート,ActiveX XMLデータストアなどが利用されている。

 そのほか,キャンペーンの企画から実行,そして結果を分析しマーケティングに対するROI(費用対効果)を計測可能な「salesforce.com Campaign Management」機能や,24時間×365日ノンストップで顧客自身が問題を解決できる「salesforce.com Self-Service」機能も利用することができる。

 さらに2002年中には,salesforce.com EEの機能に,課金システムや請求書管理,契約管理,受注管理などのバックオフィスアプリケーション機能を追加した「salesforce.com E-Business Suite」もリリースされる計画という。

セールスフォース・ドットコムの代表取締役社長,北村彰氏

 セールスフォース・ドットコムの代表取締役社長,北村彰氏は,「今年の4月で,日本法人を立ち上げてちょうど2年になる。まだまだ,CRMという文化を企業に導入することは難しい状況にあるが,新しいサービスや新しいパートナーと共に,幅広い業種,企業規模に向けてビジネスを展開していきたい」と話している。

サービスの価格と提供予定
サービス 価格 提供開始予定
salesforce.com PE 月額5000円/ユーザー 提供中
salesforce.com EE 月額1万円/ユーザー 提供中
salesforce.com OE 月額2500円/ユーザー(EEは標準搭載) 提供中
Campaign Management 月額3万円/ユーザー(EEは標準搭載) 5月後半
Self-Service EEに標準搭載 5月後半
Webサービスインテグレーションキット 年間250万円 4月15日
E-Business Suite 未定 2002年第4四半期

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[山下竜大 ,ITmedia]