Case Study:既存のソフト資産を有効活用してWindows 2000移行を実現した東北電力

【国内記事】2002.4.18

 東北電力は,Windows 95で稼動していた同社のシステムを,Windows 2000に移行するために,1台のPC上で複数のOSを同時に稼動させることを可能にする米VMwareの仮想化ソフトウェアの最新バージョン「VMware Workstation 3.1」を採用。既存のソフトウェア資産を有効に活用しながら,Windows 2000への移行を実現した。

 同事例は,米VMwareの実質的な国内総代理店であるネットワールドが4月18日に開催した「VMware Conference」で紹介されたもの。同日,ネットワールドが国内販売を開始したVMware Workstation 3.1では,東北電力のシステム構築における経験がフィードバックされている。

東北電力のシステム移行を担当したTOiNXの設備構築部 設備技術G,叶野孝文氏,横田勇一氏,白井陽子氏(写真左より)

 今回,東北電力が利用していたWindows 95ベースの業務システム「WING」(Wide-area Information Network system for Groupwork)を,Windows 2000ベースに移行するためのシステム構築を担当したのは,東北電力の関連企業である東北インフォメーション・システムズ(TOiNX)だ。

 同社は2001年7月に,東北コンピュータ・サービス,東北オー・エー・サービス,東北情報ネットワークサービスの東北電力企業グループ情報系3社が合併して設立された総合情報サービス会社。現在,東北電力のシステム受託業務を担当するほか,インターネットデータセンター(iDC)や電子商取引を見据えた電子認証サービスなどの事業を展開している。

 TOiNXでは2001年3月より,WINGの再構築プロジェクトをスタート。同社は,新システムの構築にあたり東北電力から,300台のサーバおよび1万4000台のクライアントに搭載されているOSをWindows 95からWindows 2000にアップグレードし,Active Directoryを採用することで,サーバやクライアントを統合管理できる環境を実現することが要求されたという。

 WINGで稼動している業務アプリケーションは約90業務あり,そのうちWindows 2000対応が必要な業務アプリケーションは約50業務。TOiNXでは,最も低コストで,短期間に移行を実現する方法を検討した結果,約40業務をDLL/COMリダイレクションで,約10業務をVMwareの導入により移行することにしたという。

 そこでTOiNXでは,その当時提供されていたVMware 2.1の機能検証を開始した。検証を行ったのは,パフォーマンスおよび外部ネットワークへの接続,ICカードリーダーやバーコードリーダーなどの外部デバイスの動作検証など。検証の結果は,VMware 2.1で業務システムをWindows 2000ベースに移行することは難しいというものだった。

 その理由として,WINGの一般ユーザー権限ではVMwareをインストールできないこと,1台のクライアントにIPアドレスが2つ必要なこと,サポートされていないデバイスがあることなど。中でもゲストOSを起動するときに「Windows保護エラー」が頻発する問題は,致命的だったという。

 そこで,VMwareとネットワールドおは,これらの問題解決を反映したVMware 3.1ベータ版をTOiNXに提供。同ベータ版により,再度同じ検証を行っている。その結果,ほとんどの問題が解決され,VMwareの本格採用が決定されている。TOiNXは現在,バージョン3.0でのシステム展開を実施しているが,今後,同日発売が開始されたVMware 3.1の正式リリースへのバージョンアップを行っていく計画という。

 マイクロソフトは2001年12月31日に,Windows 95を「非サポート対象フェーズ」に移行している。しかし,まだ多くの企業がWindows 95用に開発したアプリケーションをWindows 2000やWindows XP用に移行できていないのが現状という。こうした企業にとって,東北電力の事例は,一筋の光明となることは間違いないだろう。

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関連リンク

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[山下竜大 ,ITmedia]