ノベルがディレクトリ製品を強化,さらにWebサービスへのコミットも
【国内記事】 | 2002.4.30 |
米ノベルは3月,ソルトレークシティで開催された「BrainShare 2002」にて,同社ディレクトリ製品の新バージョン「Novell eDirectory 8.7」を発表し,4月15日より公開ベータ版を提供している。
この新バージョンでは,従来より提供されていた管理コンソール「ConsoleOne」に加え,新たに管理ユーティリティ「iManager」が搭載される。これにより,PC上のWebブラウザだけでなく,携帯電話端末などからも,各種管理・設定作業が行えるようになる。また,XMLサポートが強化され,新たにSOAPによるWebベースの管理も実現される。
ただし,ノベル日本法人,営業マーケティング本部のプロダクトマーケティングマネジャーの高橋克也氏によれば,実はeDirectory 8.7に搭載される機能の多くは,1つ前のバージョンとなる「eDirectory 8.6」で実現されているものだという。
eDirecory 8.6はNetWare6に同梱された形で,既に市場に提供されている。単体での正式なリリースは,5月半ばとなる見込みだ。
拡張性やパフォーマンスを最適化
eDirectry 8.6では,目新しい機能の搭載よりも,むしろ,バックエンドのアルゴリズムなどの最適化を通じてスケーラビリティやパフォーマンスを向上させ,より大規模なシステムへの適用を容易にしている。
その1つが,データベース容量の拡張だ。各データベースの容量が2GBから4GBに倍増したほか,格納可能なファイル数も2048まで拡大した。結果として総データベース容量は,従来の1TBから8TBに拡張されるという。
これにより,各オブジェクトに付随するプロパティ――各ユーザーの細かな情報や機器に関する説明といった属性情報――を詳細に設定し,1つのディレクトリで管理できるようになる。
またパフォーマンスの点では,レプリケーション(同期)の高速化が図られ,複数のディレクトリに対する同期化を並行して行えるようになる。また従来は,同期化作業が何らかの原因により途中で失敗してしまった場合,最初から同期化をやり直す必要があったが,eDirecory 8.6ではこれが改善され,中断した個所から作業を継続できるという。
さらに,新機能として「ダイナミックグループ」が追加される。これは,eDirecrotyに格納されたプロパティの中から,特定の条件に合致するものを拾い出し,リアルタイムにグループ化するという機能だ。
「先ほど触れたデータベース容量の拡張は,ダイナミックグループ機能によって生かされることになる。例えば,プロパティに通勤経路や住所といった情報を格納しておけば,台風が近づいたときには“○○線沿線のユーザー”を抜き出してグループ化し,運行情報に関する告知メールを送信するといったことが可能になる」(高橋氏)
この機能はeDirecoryのエンジンサイドに実装されるもの。APIが提供されるため,同時のLDAPアプリケーション開発も可能である。
さらに,同様にLDAPアプリケーション開発に利用できる新機能として,ディレクトリ内の更新部分や変更部分のデータのみを抜き出し,提供する「パーシステントサーチ」も追加されることになっている。
ノベルによれば,国内ではまずeDirectry 8.6を正式にリリースし,その後eDirectry 8.7を提供していく予定という。eDirectry 8.7では,8.6に搭載された機能に加え,SNMP対応などのさらなる拡張が施される予定だ。また,ダイナミックグループ機能も強化され,8.6では1つしか指定できなかった検索条件を,複数指定できるようになるという。
Webサービスへのコミットを強化
ノベルがその次に見据えているのは,Webサービスへの対応である。同社ではeDirectory 8.7に続き,UDDIサービスをサポートする「Novell Workspace」という製品を投入する計画である。
ノベルは2000年の時点で,「Novell XML Integration Services(XIS)」というXMLサポートのための枠組みを公開済みだ。Novell Workspaceは,それをWebサービスという形で提供するための製品といえる。
Novell Workspaceは,バックエンドのレポジトリとしてeDirectoryと連携し,フロントエンドとして情報ポータル構築のためのツールである「Novell Protal Services」を利用する。またNovell WorkspaceとNovell Protal ServicesはSOAPを介して連携し,これらに対するアクセス制御やセキュリティは,Novell iChainで実現するというアーキテクチャだ。
同社は先に米BEAシステムズとの提携も発表しており,今後もこれらパートナーとの連携も含めて,Webサービスへのコミットを強めていく方向だ。また,かなり先の話となるが,NetWare 7もこのアーキテクチャを反映したものとなり,J2EEエンジンを高速化し,プラットフォームに依存せずにWebサービスを実現できる形を目指すという。
なお,取材を行った時点では,国内におけるNovell Workspaceの具体的な展開は白紙だったが,5月半ば以降,具体的な戦略を明らかにしていくという。
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[高橋睦美 ,ITmedia]