エンタープライズ:トピックス 2002年5月22日更新

BorCon 2002 Keynote:ガソリン給油機もつなぐ,エンドツーエンドソリューションとして進化するJava

 ボーランドは約20年前,「Turbo Pascal」の会社としてスタートした。欧州から米国に渡った創業者のフィリップ・カーン氏は,その成功によってアメリカンドリームを実現したのだが,彼の後継者たちは今やJavaの世界において,それをさらに上回る強固な地歩を築こうとしている。

 1995年,サンフランシスコのモスコーニコンベンションセンターで行われた「SunWorld」でJavaが正式デビューして以来,ボーランドはパートナーとしてサン・マイクロシステムズを支え,デベロッパーコミュニティーに優れたツールを提供してきた。同社のJBuilderは,調査会社によって数字のばらつきはあるものの,40〜45パーセントのシェアを獲得している。日本市場では,さらにデベロッパーの支持が高く,50パーセントを超えているという。

 そのJavaの生みの親,ジェームズ・ゴスリング氏がカリフォルニア州アナハイムの「BorCon 2002」にゲストスピーカーとして招かれ,米国時間5月21日の基調講演に登場した。Javaの功績によってフェローの肩書きが与えられたゴスリング氏は,サンラボのリサーチプロジェクトとしてスタートしたJavaの足跡を振り返った。話はもう十数年も前まで遡る。

「将来のコンピューティングは,伝統的なコンピュータルームではなく,家電製品にチップが組み込まれ,ネットワーク化されるのではと考え,“Star 7”というハンドヘルド型の赤外線リモコンを試作した。だが,われわれはプログラミングツールの問題に直面した」とゴスリング氏。

同じサンのビル・ジョイ氏と並び,カリスマ的な存在のゴスリング氏

 家電にはさまざまなチップが組み込まれ,マーケットが細分化されているため,1つひとつの市場は大きくない。トースターからデジタル家電まで使えるスケーラビリティも必要だ。さらにあらゆるところに偏在するため,もはや物理的な施錠によるセキュリティは何の役にも立たなくなる。

 彼は,異機種のサポートや,拡張性と信頼性,そしてセキュリティなどがデジタル家電用のプログラミング言語に求められると考え,新しい言語としてJavaを生み出した。今や広く知られるJava誕生の「秘話」だ。

「われわれが20年前にサンを設立したとき,ユーザーはとにかくパフォーマンスを欲しがった。でも,今は違う。彼らは,例えば電源も異なる電力会社と契約して,システムの信頼性を高めようとしている」(ゴスリング氏)

 こうして理想のネットワーク型プログラミング言語として開発されたJavaは,1990年代半ばから爆発的に普及したWebの波に乗り,スマートカードやスマートフォンから企業のバックエンドサーバに至るまで幅広く浸透した。

「米国は携帯電話の後進国だが,日本ではクールなゲームも楽しめる。3Dレンダリングエンジンまで搭載して……。みんな,ドゥーム(Doom)をやらなきゃ」とゴスリング氏。

 彼は,携帯電話の話をしたかと思うと,今度はステージ中央の巨大なボックスに掛けられていた布を覆いを取り,ごついガソリンスタンドの給油機を披露した。3月のJavaOneカンファレンスで彼が「展示フロアに面白いモノがある」と話していたのがこれだった。目下のところ,この「e-ガスステーション」が彼のお気に入りのようだ。

ステージに現れたごついガソリンスタンドの給油機

 このe-ガスステーションは,カリフォルニア州オークランドのサイバロニクスが開発したもの。「プロトタイプではなく,リアルシステム。既に顧客は世界中にいる」とサイバロニクスのエンジニアリング担当副社長,ポール・バウマン氏。

 製造業のオートメーションシステムを設計して顧客に納入する同社は,Javaベースのミドルウェアを開発している。給油機には,サンノゼのアジャイルシステムズ(aJile Systems)が開発したJavaチップが組み込まれ,そのPOS情報はJ2EEサーバからWebサービスによって接続されたSAP R/3に送られる仕掛けだ。

 サイバロニクスによれば,世界には30万以上のガソリンスタンドがあり,1カ所当たり25台の接続されていないデバイスがあるという。北米ではシェルやテキサコが導入に動いている。

「これこそ,Javaによるエンドツーエンドのシステム」とゴスリン氏。

 ゴスリン氏は,Javaのデベロッパーコミュニティーに対する賛辞も忘れなかった。

「Javaはコミュニティーによって拡張され,そのロードマップもコミュニティーによって描かれている。Javaはプロダクトではなく,コミュニティーであり,市場なのだ。市場にはさまざまなIDE(Integrated Development Environment)やアプリケーションサーバがあり,ボーランドも優れたソリューションを提供している」(ゴスリン氏)

 現在,オープンなJCP(Java Community Process)のもと,200以上の専門家グループがJava仕様の拡張を行っており,もちろんボーランドも重要な役割を担っている。

関連トピックス

▼JavaOne 2002 San Franciscoレポート

[浅井英二 ,ITmedia]