エンタープライズ:トピックス 2002年5月22日更新

シスコの無線LANアクセスポイント新製品,「ターゲットは家庭以外」

 シスコシステムズは5月22日,無線LANアクセスポイントの新製品「Cisco Aironet 1200」シリーズを発表した。現行機種「Aironet 350」の後継となる製品で,出荷時はIEEE802.11b対応だが,モジュールの追加によって,54Mbpsというより高速な接続を実現する802.11aや,その後に控える802.11gにも対応できる。

本体へのモジュール追加によってIEEE802.11b/a/gへの対応が可能

 無線LANはその利便性から国内でも普及を見せているが,家庭などでの導入が大半だ。だが,同社アクセススイッチング担当部長の大金日出夫氏は,「Aironet 1200は,コンシューマーではなく,あくまでエンタープライズや自治体,教育機関などを対象とした製品。逆に言えば,家庭以外の市場がターゲットだ」と述べている。

 同社は今年に入ってから,「Cisco Mobile Office」(CMO)というコンセプトを掲げ,オフィスだけでなく自宅やホットスポットなどでも,オフィスと同様の環境で,シームレスに仕事を行えるような世界の実現を提唱している。モビリティとセキュリティを両立させた環境を活用してビジネスプロセスそのものを変え,生産性を向上させようというのがそのメッセージだ。

 今回発表されたAironet 1200は,このCMOの実現を後押しする一歩となる。というのも,これまでたびたび指摘されてきた,無線LANのセキュリティを強化する機能を盛り込んでいるからだ。「これまでも顧客と話をしてきたが,企業や大学などで,無線LAN導入の際に必ず障壁となるのがセキュリティだ」(大金氏)

 そこでAironet 1200は,まず,現在市場に投入されている大半の製品と同様に,MACアドレスによる端末認証と40ビット/128ビットのWEPに対応。さらに,802.1xとEAP(Extensible Authentication Protocol)もサポートしている。EAPには複数の方式があるが,シスコ独自の仕様であるLEAP(EAP-Cisco)のほか,EAP-TLSやEAP-TTLSに対応しているということだ。バックエンドの認証を担うRADIUSサーバとして,「Cisco Secure Access Contorol Server」などとの組み合わせが可能である。

 むしろ課題は,クライアント側のサポートになりそうだと言う。「802.1xはAironetのドライバを使えば利用できるが,やはりOSのサポートがあると(普及の度合いは)違う。Windows XPでは802.1xがサポートされているが,企業で全面的にWindows XPを導入しているケースはまだ少ない」(大金氏)

集中管理機能も強化

 エンタープライズでの無線LAN導入をにらんだ機能は他にもある。集中管理機能の強化だ。

 大金氏は「数百,数千といった単位で大規模に展開するには,センター側での集中管理機能が不可欠」と述べ,同社のネットワーク管理ツールである「Cisco Works」によって一元管理が可能なことのメリットを強調した。Aironet 1200はまた,SNMPに対応するほか,TelnetやWebブラウザ経由で,リモートから管理作業が行えるという。

 最後の要素は投資の保護だ。最初に触れたモジュラー設計がそれに当たる。Aironet 1200の本体ユニットはシングルバンド構成とデュアルバンド構成の両方に対応しており,必要に応じてモジュールを入れ替えて高速化を図ったり,802.11bと802.11aの両方を利用したりといった利用法が可能という。

 モビリティの追求という意味では,MobileIPのサポートに期待したいところだ。大金氏によると,AironetにMobileIP機能を搭載する計画はあるものの,具体的なロードマップとなるとまだ未定という。

 Aironet 1200は7月1日に出荷の予定だ。本体の参考価格は13万8000円,802.11b対応のモジュールは2万4000円。本体には別途アンテナを搭載する必要があるが,これは現行のAironet 350シリーズのものをそのまま利用できるという。

 802.11a対応のモジュールは8月ごろをめどに出荷される予定といい,こちらの予定価格は8万円強となる。さらに802.11gについては,2003年春の出荷を計画しているという。

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▼シスコシステムズ

[高橋睦美 ,ITmedia]