エンタープライズ:トピックス 2002年6月10日更新

Interview:「Oracle9i RACは次世代へのブレークスルー」と日本オラクルの新宅社長

今春から、Oracle9i Real Application Clusters(Oracle9i RAC)を核としたビジネスパートナーとの協業発表が相次いでいる。国内外の有力ハードウェアメーカーだけでなく、新日鉄ソリューションズや伊藤忠テクノサイエンスといったソリューションプロバイダーまでが、検証センターを開設し、優れたアベイラビリティとスケーラビリティ提供できるRACビジネスを開始している。6月12日から中国で行われる「Oracle World 北京 2002」の話題も併わせ、日本オラクルの新宅正明社長に話を聞いた。

ZDNet ビジネスパートナーとの協業によってOracle9i RACソリューションが豊富になってきました。Oracle9i RACの意義について教えてください。

新宅 クラスタリングに関して、オラクルには1980年代後半からコア技術があり、Oracle9i世代で昇華させたものがRACだ。2002年に入ってからOracle9i RACのプロモーションに力を入れましたが、「それではローエンド製品はどうなる?」という懸念もありました。しかし、われわれはOracle9i RACを通じて、オラクルの技術優位性を訴えるべきだと考えました。

 確かに中規模のクライアント/サーバ型RDBでは、Oracleがデファクトになりましたが、メインフレームのようなハイエンド領域ではどうでしょうか。対DB2 UDB、あるいは対SQL Serverではなく、30年間培われてきたオープンシステムが、メインフレームを置き換えられるのか? その答えが、Oracle9i RACです。

この日の新宅社長の口からは「顧客が安心して使えるOracle」という言葉がしばしば聞かれた

ZDNet これまでにもメインフレームを置き換えるようなミッションクリティカルなシステムもOracleベースで構築されてきましたが、それとの違いは何でしょう?

新宅 コールドバックアップやホットスタンバイなど、これまでの技術でも、システムの設計、構築、運用、保守と、個々のビジネスパートナーが作り上げたソリューションによってリライアビリティは高められてきました。このデザインは正しかったが、根本的なデザインはメインフレームと変わりません。

 確かにそうしたデザインによってオラクルも成長してきましたが、「スタンバイサーバのコストは本当に必要か?」といった声が顧客から寄せられ始めています。99.999パーセントという高いリライアビリティは素晴らしいが、企業のIT予算は、ハードウェア、ソフトウェア、構築、運用、保守と、さまざまな面でコスト削減を余儀なくされています。冗長性は減らせない、ならばブレークスルーしなければ、次はありません。

ZDNet Oracle9i RACの検証センターを発表するパートナーが相次いでいますが、当初彼らの反応はどうでしたか?

新宅 ビジネスパートナーのトップは熱心でした。彼らとしては、ハードウェアだけでなく、トータルサービスとしてOracle9i RACソリューションを提案できるようになります。Oralce9i RACの場合は、単なる販売とは違い、センターを開設し、ハードウェアとアプリケーションを用意し、技術的な検証を行う必要があり、その意味でも彼らのコミットが必要でした。

 われわれはNTTドコモに鍛えられました(笑い)。巨大なSMPマシンだけでは24時間×7日のリライアビリティは無理です。Oracle9i RACは、「RAC」と特別に言われなくなったときが成功だと考えています。

中国に進出する日本企業もしっかりサポート

ZDNet 6月12日から中国で「Oracle World 北京 2002」が始まり、日本オラクルとしても、現地で特別プログラムを用意するそうですね。

新宅 アジアの仲間たちのカンファレンスなので賑やかし……というわけではありません。われわれの顧客、例えば松下グループをはじめとする製造業の多くが現地法人をつくり、中国に工場を展開しています。彼らは、本社の会計システムと中国の製造システムをつなぐ必要があり、「日本オラクルはグローバルにサポートできる会社なのか?」という問い掛けを寄せています。

 今回、Oracle World 北京では「Japan Leaders Circle」というプログラムを開催しますが、これは中国に対する日本オラクルのコミットメントです。それに、オラクル・チャイナも既に中国において一定の成功を収めています。彼らがちゃんと日本顧客をサポートできることも知ってもらい、安心してもらえるようにしたいと考えています。

ZDNet 中国におけるビジネスは、日本オラクルの業績に反映されるのでしょうか。

新宅 もちろんです。ビジネスに対する貢献度に応じて、売り上げをシェアするというルールが既にオラクルには確立されていて、日本も中国も協業には積極的です。中国に広がるビジネスに手を付けないというのは、どちらの国のオラクルにとっても大きなリスクとなってしまうからです。

 また、われわれは日本国内においては、ビジネスパートナー制度を整えて成功しました。メーカーやツールベンダー、あるいはシステムインテグレーターである彼らも、ローコストなプロバイダーとして中国のパートナーやエンジニアを必要としているはずです。これを機会に、日本オラクルやオラクル・チャイナがハブになって、安心して中国にビジネスを展開できるようになればとも願っています。

ZDNet 中国は単なる市場ではない、ということですか?

新宅 オラクルも今春、中国開発センターを深せんに開設しましたが、地理的に近い中国のリソースを生かさずに、日本の価値向上はないでしょう。50年かけて製造業の空洞化が進みましたが、ソフトウェアの場合はたった数年で空洞化してしまうかもしれません。

ZDNet Oracle World 北京で、ラリー・エリソンCEOはどんなメッセージを出すのでしょうか?

新宅 紅旗リナックスの例もあるように、中国政府はソフトウェア産業を育成し、この分野でも輸入国ではなく、輸出国になるためにLinuxを支援しています。6月初め、米国でレッドハットやデルと「Unbreakable Linux」を掲げた協業が発表されていますが、同様のメッセージが北京でも明らかにされると思います。

関連記事

▼アジア初、成長著しい中国で「OracleWorld 北京」中国進出する日本企業やパートナーのサポート体制拡充へ

[聞き手:浅井英二 ,ITmedia]