エンタープライズ:トピックス 2002年6月24日更新

「知的財産権は守る」マイクロソフトのシェアードソース

 ソースコードを公開するソフトウェアモデルには、オープンソースソフトウェア(OSS)やリチャード・ストールマン氏のフリーソフトウェア協会など、考え方の異なるさまざまな形態が存在している。これについて、マイクロソフトが取り組むソフトウェアモデル「シェアードソース」について整理してみたい。

 マイクソフトのシェアドソースイニシアティブでプロダクトマネジャーを務める、ジェイソン・マトゥソウ氏は4月末に来日した際、「シェアードソースにより“ソフトウェアエコシステム”を実現する」と話した。ソフトウェアエコシステムは「知的財産権のコントロールを失わない」という同社の姿勢を示しているという。

 OSSでは、ソースコードを公開することで、コミュニティ内でさまざまな種類のコードを共有できることが、ユーザーの利益になるとしている。一方で、OSSでは、ソースコードの開発者自体の知的財産権が守られない場合もあり、マイクロソフトはこれについて、商用ソフトウェアの考え方を交えた解決策を視野に入れているという。

 つまり、マイクロソフトは、OSSのメリットである「コミュニティーやカスタマーのフィードバック」と、商用ソフトウェアが持つ「ソースコードへの商用的価値が明確であること」という利点を融合しようとしていると言える。これにより、政府や大学および研究機関、産業界、カスタマーを循環するソフトウェアのエコシステムを構築し、将来にわたって、ソフトウェアの技術革新のサイクルを維持しようという考えとなっている。

 同社のソフトウェアエコシステムの考えを具体的に説明する場合、インターネットを支えるTCP/IPが参考になるかもしれない。

 ご存知の通り、TCP/IPは元々、冷戦下の1960年代にアメリカ国防省が、核攻撃を受けても通信網全体がダウンしないネットワークの必要性に迫られて構築されたもの。スタンフォード研究所やUCLAなどを中心に通信実験が開始され、やがてARPANETというネットワークが形成されるようになったのが始まりとなり、現在はインターネットの基盤技術となっている。

 こうして、TCP/IPは、政府主導から学術界へとバトンが渡され、オープンな技術として、例えばFTPのように自前の技術として出そうとする企業も現れた。やがて、ゼロックスやIBM、マイクロソフト、アップルなどの民間企業も関与するようになり、TCP/IPのサイクルが完了したと言える。

 シェアドソースイニシアティブでマイクロソフトは、ターゲット別にソースコードを提供する。ソースアクセスプログラムの目的別にユーザーが権利を選択するような形だ。

 同社の「シェアドソースプログラム」では、Windows 2000/XP/.Net Serverの全バージョン、サービスパックおよびベータ版を対象に、ソースコードを提供する。マイクロソフトは、サポートや導入、セキュリティ/個人情報の保護、カスタムアプリケーション構築支援という観点から、ユーザーをサポートしていく。

 具体的に同社は、C#/Jscript/CLI Implementationsシェアドソースライセンシングプログラム、エンタープライズソースライセンシングプログラム(ESLP)、ガバメントソースライセンシング(GSLP)、システムインテグレータソースライセンシング(SISLP)、Windows CE シェアドソースアカデミックカリキュラムライセンスなど、ユーザーの目的別にプログラムを用意している。

 例えば、C#/Jscript/CLI Implementationsシェアドソースライセンシングプログラムは、Windows XPやFreeBSD上で稼動するCommon Language Infrastructure(CLI)を実装する際のソースコードの参照例となる。C#やJscript、JITコンパイラをベースとするコンパイラの中身を閲覧したり、ECMA仕様と実装を使ったAPIデザイン、XMLベースの分散コンピューティング環境を構築する場合に、研究プロジェクトのスタート地点にもなるとしている。

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▼マイクロソフト

[怒賀新也 ,ITmedia]