エンタープライズ:ニュース 2002/07/05 12:09:00 更新


「不十分」な無線LANのセキュリティを改善するアセロスの新チップセット

無線LANチップセット市場のシェアの大半を占めているのが、米アセロス・コミュニケーションズは、IEEE802.11a/b/gという3つの規格に対応したチップセットを発表した。このチップセットには、豊富なセキュリティ機能も組み込まれている。

 無線LANチップセット市場のシェアの大半を占めているのが、米アセロス・コミュニケーションズ(アセロス)だ。

 NetWorld+Interop 2002 Tokyo(N+I 2002 Tokyo)に合わせて来日した、米アセロスのワールドワイドセールス担当上級副社長、トム・フォスター氏は、「アセロスは、IEEE 802.11a/11bのコンボチップ製品を出荷できている唯一の企業だ」と強調。半ば冗談交じりに、「特に802.11aについては、互換性の問題はない。というのも、アクセスポイントもクライアントも、どちらもわれわれのチップセットを利用してるからだ」という。

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 日本は北米と並んで、非常に重要な市場だとしたフォスター氏

 現在では45社以上の顧客が、同社のチップセットを用いて11a/11b対応製品の開発を進めているか、既に出荷しているという。

 7月4日には、WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)がようやく、11a対応製品の認定作業を開始することをアナウンスした。アセロスはこの動きを歓迎しながらも、独自に、アセロス製チップセットを用いた機器の接続テストも行っているという。

 インターシルやNECといった他のベンダーも、11a対応、あるいは11a/11bデュアル対応のチップセットを開発、提供することを表明している。だがそれに先駆けアセロスでは、11a/11bだけでなく、ドラフト段階にある11gのOFDM方式に対応したコンボチップ「AR5001X」を発表した。同社はこのチップセットを、N+I 2002 Tokyoの同社ブースで紹介している。

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 さらにアセロスは、日本市場向けのチップセット「AR5001J」も発表済みだ。これは、総務省によって屋外利用の開放が見込まれている、4.900〜5.0GHzおよび5.030〜5.090GHz帯にも対応したチップセット。AR5001X直行周波数分割多重(OFDM)変調方式を採用しているため、帯域を効率よく活用できるほか、狭帯域チャンネルもサポートする。

「(5GHz帯の屋外利用開放は)アセロスにとって、新しい顧客を獲得する大きなチャンスだ」(フォスター氏)

「WEPは脆弱」

 もう1つ、あまり取り上げられる機会がないが、AR5001X/AR5001Jは複数のセキュリティ機能も搭載している。「エンタープライズにとってセキュリティは最大の関心事」(フォスター氏)。そして、こうしたニーズに対応すべく、アセロスでは包括的なセキュリティプットフォームを提供していくと語った。

 両チップセットでは、大きく分けて4種類のセキュリティ機能が提供される。1つは暗号化だ。802.11bで実装されてきたWEPに加え、TKIPと次世代暗号標準のAESをサポートする。2つめは認証で、802.1xに対応する。3つめはアプリケーションレイヤのセキュリティだ。これはVPNによって実現する。最後はVLANで、これら3つの要素を実現した上でさらに、ネットワークのセグメント分けが可能となる。こうした一連の機能によって、無線LAN環境においてもセキュリティを提供していくという。

 フォスター氏は、「現在の無線LANのセキュリティは不十分。というのも、WEPが脆弱だからだ」と問題点を指摘。その上で、「来年標準化が完了する見込みのセキュリティ標準、802.1iにも対応していく計画だ。だが、今すぐセキュリティが必要だという場合も多い。そうしたユーザーには、TKIPやAESによる暗号化機能を提供していく」とした。

 さらに同氏は今後、「例えば、今VoIPというと有線のIPフォンが使われているが、今後はVoIPも、携帯電話と同じようにワイヤレスで実現されるだろう。家電製品など、あらゆるデバイスがワイヤレスで接続されるようになる」と予測。そのために「業界全体としても、まだまだやるべきことはたくさん残っている」と語っている。

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▼802.11a/b/g、そして開放される5GHz帯に対応したアセロスの新チップセット

関連リンク
▼NetWorld+Interop 2002 Tokyo オフィシャルサイト
▼アセロス・コミュニケーションズ

[高橋睦美,ITmedia]