エンタープライズ:ケーススタディ 2002/10/03 16:26:00 更新


Case Study:Teradataで「唯一の真実」を手に入れたシアーズ

ラスベガスの「PARTNERS 2002」は、Teradata導入企業によるユーザー事例を紹介する多数のセッションが特徴だ。10月2日、米小売り業界の老舗、シアーズ・ローバックがその成功事例を紹介するセッションを行った。同社はTeradataによって統合されたデータウェアハウスを構築し、「唯一の真実」を手に入れることができた。

 ネバダ州ラスベガスの「PARTNERS 2002」カンファレンスは、Teradata導入企業によるユーザー事例を紹介するセッションが50にも上るのが大きな特徴だ。10月2日、3日目を迎えたTeradataユーザー年次総会では、米小売り業界の老舗、シアーズ・ローバックがその成功事例を紹介するセッションを行った。

 Teradataは、意思決定支援のためにデザインされたエンタープライズデータウェアハウス製品。コンピュータメーカーからテクノロジーソリューションプロバイダーへの移行を進めるNCRが、その柱として社運を賭けている事業だ。米国では、流通、金融、通信に強いほか、国内ではデパート業界でも多くの顧客に支持されている。

 シアーズ・ローバックは、アパレル、家電製品、および自動車用品の小売り分野における大手企業。年商400億ドル以上の同社は、全米でシアーズ・ストアなどを2700店舗展開しているほか、Webサイトでも膨大な商品やサービスを提供している。また、6月にはアパレルの直販会社として知られている「ランズエンド」を買収したばかり。sears.comとlandsend.comを相互に連携させるほか、ランズエンドの商品をシアーズの店舗にも並べていくという。

 米小売り業界の「老舗」ながら、シアーズはそのIT活用の革新性がメディアから高く評価されている。昨年、Information Week誌の「IT活用の革新的な企業500社」で14位、InfoWorld誌の「Top 100」では4位にそれぞれランクされた。大規模なエンタープライズデータウェアハウスを構築し、そのレポートと分析を正しい意思決定に結びつけている。

 システムの中心となる「SPRS」(スパーズ:Strategic Performance Reporting System)が最重要プロジェクトとしてスタートしたのが1994年。戦略的な情報システムを構築する5カ年計画の一環だった。

 PARTNERS 2002でセッションを行った同社マーチャンダイズ情報担当ディレクターのジョナサン・ランド氏は、「当時は複数のシステムに情報が分断され、しかも食い違うことが多く、“唯一の真実”を手に入れることができなかった」と振り返る。

 シアーズでは、幾つかの選択肢の中からNCRおよびTeradataの超並列技術を採用することを決め、販売、在庫、顧客に関するデータを全社的規模のTeradataデータウェアハウスに統合している。システムもデータウェアハウスの急速な成長に合わせて次々と追加され、今ではPentium III Xeon/900MHzを搭載するNCR WorldMark 5255サーバを44ノード接続し、データウェアハウスの規模は70Tバイトに達している。WorldMark 5255は、Xeonプロセッサを4基搭載したSMPモジュールをNCR独自の高速接続機構であるBYNETで疎結合している超並列コンピュータだ。

 最終的には23のレガシーシステムからデータを受け取っており、フロントエンドアプリケーションは、PowerBuilderで開発した。開発を指揮しているシニアプロジェクトマネジャーのハンク・スティアマン氏は、「これまで使い慣れていたレポートにGUIでアクセスできるようにしたり、やはり見慣れていたカテゴリー別のレポートにドリルダウンの機能を追加したりして、“なかなかいいね”というユーザーの支持を得るように工夫した」と話す。プロジェクトスタート時は500人に過ぎなかったユーザーも5000人に達している。

 ちなみにスティアマン氏は、PARTNERSカンファレンスのプログラムを決める運営委員会のメンバーでもある。

 当初は、ユーザーが絶えず意思決定のためにレポートを必要とすると予想していたが、ほとんどのマーチャンダイザーは週単位のレポートを重視していることが分かったも紹介した。このため同社では、月曜日の朝までにウイークリーレポートが間に合うよう日曜日にレポート処理を行うスケジュールに切り替えた。月曜日の朝のレポートを読んだマーチャンダイザーが早速さらに複雑なクエリを行うといった傾向もはっきりと表れたという。

 スティアマン氏はCPU稼働率のグラフを示しながら、「計画的にリソースを最大限活用できている」と話す。

 レポートには通常、すぐに必要とされるものと、ある程度時間がかかってもよいものがある。シアーズでは、Teradata Warehouseスイートに含まれている「Priority Scheduler」を導入し、クエリの優先付けを行っている。

「午前中にはSPRSのレポートに対して優先度を高め、お昼を過ぎると別のリクエストのために空けていくといった具合だ」とスティアマン氏。

 ディレクターのランド氏も「ユーザーも急いでいるレポートとそうでないものをちゃんと意識することを学んだ」と話す。

「朝7時に連絡があり、午前の取締役会までにレポートを作成するように依頼されたが、Priority Schedulerでその処理を最優先に切り替え、ちゃんと時間までに届けられた。こういうのは全社を救った例だね」とスティアマン氏は笑った。

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[浅井英二,ITmedia]