エンタープライズ:ニュース 2002/10/04 20:30:00 更新


Web金融システム開発に新風吹くか、ファイテックラボの「xTrade」

ファイテックラボ・ジャパンは金融業界向けのシステムに共通する基本的なコンポーネントをフレームワークとして提供する「xTrade Version 3.5」の出荷を開始した。同社の松島利幸社長は、金融システムについての常識を打ち破るとして自信を見せている。同社は、松井証券のシステムを開発した実績を持つ。

 米ファイテックラボの日本拠点、ファイテックラボ・ジャパンは9月25日に、金融業界向けのシステムに共通する基本的なコンポーネントをフレームワークとして提供する「xTrade Version 3.5」の出荷を開始した。同社の松島利幸社長は、「独自技術によるパフォーマンスの良さがアピールポイント」と話す。同氏は、高いパフォーマンスと低コストを実現したJ2EEベースの金融システムにより、通常は高コストになるのが当たり前である金融システムについて、常識を打ち破ると自信を見せている。同社は、松井証券のシステムを開発した実績を持っている。

 同製品はJ2EE/J2SE上に構築され、オブジェクト指向のフレームワーク「xTrade Kernel」が基盤となる。そして、認証やスケジューリングなどの機能を提供する階層、その上には注文、ブローカーなどの機能を提供するプラグインで構成される「汎用トレーディング」、さらに預金や債券、株式などのサービスを提供する「アプリケーション」の各レイヤーがある。

 これらは、トレーディングシステムを運営するための基本的な機能の「パッケージ」となっている。導入する金融機関はこれをベースに、各々の業務ロジックへのカスタマイズに経営資源を集中させることができる。結果として、低コストかつ短期間での導入が可能になるという。

 さらに、カスタマイズしたアプリケーションと、外部および自社の基幹システムは、XMLメッセージングを通じて連携を図ることができる。WebサーバやCRMシステム、バックオフィスのデータベース、証券取引所、日銀ネットとのデータ連携も容易に行うことができる。XMLのメリットを示す典型的なシステムとも言えそうだ。

 各クライアントデバイスとの接続も、「Style Converter」によってXMLとの変換を行うことで可能になる。例えば、PCならばhttp、NTTドコモのi-Modeならchtml、ez-webならhdmlに変換されるので、一般ユーザーは携帯電話などから株式の購入や売却などを行うこともできる。

「とにかくパフォーマンスがいい」という同製品を支える独自技術は「xTrade キャッシング」と「xTrade アカウントセグメンテーション」の2つ。

 特許出願中というxTrade キャッシングは、Java分散オブジェクト環境で高速処理を実現するためのキャッシュ技術。分散環境において必要なノードにのみ動的、選択的にキャッシュを置くことができる。また、分散しているデータベース全体を通じて、キャッシュの整合性が保証される。

 例えば、データベースを更新する場合、どのアプリケーションサーバからアップデートをかけたとしても、同じキャッシュデータを参照する。つまり、アプリケーションサーバからデータベースサーバへのアクセスが、共有ディスクのイメージで行えるということだ。xTradeのある本番システムの稼働実績データによれば、キャッシュヒットレートは95%以上にも上ったという。データアクセスをキャッシュで処理すれば、パフォーマンスに重大な影響を及ぼすディスクアクセスの回数が飛躍的に少なくなる。つまり、「全部キャッシュでやってしまおう」というわけだ。

 一方、もう1つの独自技術、xTrade アカウントセグメンテーションは、1000万人規模のユーザー数にも対応するシステム拡張を可能にするという。

 つまり、増えつづけるユーザーのアカウント情報を、分散環境で分散管理することで、パフォーマンスを確保する。通常は、ユーザーアカウントの増加とともにデータ量も増大し、アカウントテーブルへの同時アクセスが重なって起こるようになる。テーブルの物理サイズは増大し、SELECT、UPDATE、DELETE、INSERTXといったいずれの処理も低速化してしまう。xTrade アカウントセグメンテーションでは、この処理を分散させてならし、パフォーマンスを確保する。

 この技術によって、ユーザーアカウント数の増加によるシステム拡張の際には、データベースサーバにCPUを追加することで、リニアな性能向上を実現できることがベンチマーク検証でも実証されているという。

 このほか、Javaのコードとリレーショナルデータベースのリンクを自動化、開発者がDBに保存するJavaクラスを自動生成する「xTrade O/Rマッピング&データバインディング」や、クラスタリング機能である「xTrade ライトウェイトクラスタリング」なども、独自の技術として製品を下支えしている。

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[怒賀新也,ITmedia]