エンタープライズ:インタビュー 2002/10/22 23:26:00 更新


Interview:「Itaniumは向こう20年存続できるアーキテクチャ」とインテルの上級副社長

インテルでエンタープライズプラットフォームを担当するフィスター上級副社長は、ItaniumファミリーがこれまでRISC/UNIXシステムが独占してきたバックエンドサーバの牙城に食い込むのも時間の問題だと話す。同ファミリーの「デュアルコア化」についても、「Itaniumは向こう20年存続できるアーキテクチャ」とし、2005年ごろの実現を示唆している。

インテルプロセッサをエンタープライズコンピューティング市場に浸透させたいインテルには、IT投資を慎重にさせている景気の後退は、むしろチャンスなのかもしれない。同社のエンタープライズプラットフォームグループを率いるマイケル・フィスター上級副社長は、「サンほどの打撃は受けていない」と話す。企業によるItanium 2のテスト採用も進み、これまでRISC/UNIXシステムが独占してきたバックエンドサーバの牙城に食い込むのも時間の問題だという。Intel Developer Forum 2002 Fall Japanのために来日したフィスター氏に話を聞いた。

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大柄なフィスター氏はこちらの手が握りつぶされそうなほど握手も力強い

ZDNet 世界的な経済の低迷が続いていますが、フィスターさんが統括されているエンタープライズプラットフォーム分野のビジネスにどのような影響を与えているでしょうか。

フィスター 不景気は、例外なくすべての分野に影を落としています。日本でも、アナリストらが大幅な下方修正を行っていると聞いています。エンタープライズ事業だけを抜き出してお話しすることはできませんが、例えば、RISCのレガシーなサーバ製品で成功していたサン・マイクロシステムズのようなライバルと比べれば、打撃は少ないといえるでしょう。

 実際には企業のIT投資は引き続き行われています。しかし、どのような技術や製品に使うのか、以前よりも慎重になっています。だから、インテルの打撃は少ないのです。企業は支出するからにはベストのバリュー、つまりプライスパフォーマンスを求めています。インテルのプラットフォームは、RISCと比較して、この点では優れているからです。

ZDNet 企業がIT投資に慎重になっている中、Itanium 2の企業への浸透度はどうですか。

フィスター Itanium 2は年初からパイロット版が出荷され、テストが重ねられ、7月に量産が開始されています。性能面ではほとんどすべてのカテゴリーでRISCプロセッサを凌駕し、業界を驚かせています。

 唯一、ベストな結果を出していないのが、搭載システムの絶対的な最高性能を競うトランザクション処理のベンチマークですが、NECの32CPUマシンでテストを重ねており、30万tpm-C以上を叩き出しています。いずれ、こうした記録も認定されるでしょう。

 もちろん、これは絶対的な最高性能のベンチマークであって、既に小さな構成、例えば、4CPUではベストの結果を出しています。

ZDNet ほかの指標、例えば、アプリケーションの対応などはどうでしょうか。

フィスター Windows、Linux、そしてHP-UXが、年末から年初にかけて出てきます。また、既に100のアプリケーションが対応を済ませており、今後も300が準備を進めています。

 もうひとつ、浸透度を測る指標として、ユーザー企業があります。彼らも競合他社に知られるのを嫌っているため、名前を出すのは難しいのですが、日本でも既に多くの顧客がテストを始めています。

ZDNet 名前は難しいとしても、どのような使われ方をしているのか教えてください。

フィスター カテゴリーでお答えしましょう。例えば、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)市場ですね。13テラFLOPSのグリッドを構築しているところもあります。米国の銀行もさまざまな業務に既にテスト導入しています。また、製造業の良い例は、われわれインテルです。新しいコンピューティングを提唱するのであれば、自らベストな例となるべく実践する必要があります。

 日本の製造業では、三菱重工やトヨタ自動車がエンジニアリング部門で採用しています。また、多くの大学、公的な研究機関や計算センターといったHPC分野で実績を重ねています。

企業の基幹を担うのも時間の問題

ZDNet 科学技術分野や製造業が目立ちますが、一般企業での浸透度はどうでしょう。

フィスター 確かに、64ビットのItaniumファミリーが得意とする分野は、科学技術計算だけでなく、データウェアハウスやビジネスインテリジェンスもあると言ってきました。こうした分野では、パイロット導入され、テストを重ね、長いプロセスを経ているところです。

 ただ、SAPを導入している企業などでは、Itaniumファミリーのチャンスがかなり現実味を帯びています。SAPのスケーラビリティを実現したい企業は、システムを3層構造にし、ミッドティアにItaniumを導入して成功しています。われわれ自身もそうしてビジネス上の問題を解決しました。

ZDNet バックエンドまでItaniumファミリーが浸透する可能性は?

フィスター バックエンドでは、単一の大規模なシステムが稼動しており、そこでは絶対的なスケーラビリティが必要となります。そこではUltra Enterprise 10000やSun Fire 15Kといった製品を持つサンがライバルとなります。

 ここでは、先ほども触れましたが、テストを重ね、絶対的な処理性能を叩き出しています。データベースの統合やシステムの統合といった企業のニーズにもこたえられるようになるでしょう。

 われわれは、Itaniumファミリーが企業の基幹業務に浸透していくのは時間の問題だと考えています。かつてPA-RISC、Power、SPARCといったRISCプロセッサが浸透するのにもやはり数年かかりました。それは歴史が教えてくれています。Itaniumはまだ2〜3年です。

 そうはいっても、インテル内部の人でさえ、「急げ、急げ」と忍耐のない人たちもいますが(笑い)。

ZDNet フィスターさんは、9月にサンノゼで行われたIntel Developer Forum 2002 Fall で、Itaniumファミリーのデュアルコア化を2005年ごろに実現すると話をしていますね。

フィスター アーキテクチャのトレンドは、単一のシステムでプロセッサ搭載数を増やす大規模化と、プロセッサに搭載できるトランジスタの高密度化があります。こうしたトレンドからすれば、1つのダイに複数のプロセッサコアを載せていくのは自然な流れといえるでしょう。

 RISCを開発しているライバルらもスレッド化とコアの統合を唱えていますが、われわれも同じ方向性です。2003年に出てくるMadisonのトランジスタ数が5億になり、2007年には10億に達するとみられています。

 ロードマップ上のどのプロセッサでデュアルコア化をするかについては公表していませんが、Itaniumファミリーは向こう20年存続できるアーキテクチャです。2004年のMontecitoの先には驚くべきアイデアがあります。

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[聞き手:浅井英二,ITmedia]