エンタープライズ:ニュース | 2002/11/13 16:31:00 更新 |
基調講演:「ITパートナーには信頼できるベンダーを」とEMCのラトガース会長
11月12日、EMCのマイケル・ラトガース会長が、「OracleWorld 2002」の基調講演に登場した。EMCとオラクルどちらも苦境には違いないが、R&D投資に対する積極的な姿勢は崩していない。「ITパートナー選びは慎重に」と話すラトガース氏。再生に向けた自信が顔をのぞかせた。
11月12日、ストレージ業界の巨人、EMCのマイケル・ラトガース会長が、「OracleWorld 2002 San Francisco」の基調講演に登場した。オラクルの盟友でもある同社にとって、2日目の基調講演は「指定席」となっている。
ステージに招かれたラトガース氏は、1995年まで遡る共同開発の歴史を振り返り、オラクルとは「ビジョン」と「顧客」と共有していることを強調した。両社は,エンタープライズストレージや遠隔地間のバックアップソリューションである「SRDF」の共同開発を皮切りに,ネットワークストレージの自動化や「ビジネスの継続性」に取り組んできた。
ラトガース氏はオラクルのエリソンCEOと並ぶ「OracleWorldの顔」
ラトガース氏によれば、フォーチュン100の企業のうち90社を含む、実に2万社を超える共通の顧客を獲得しているという。2000年にシスコシステムズを加えた3社による「ECOstructure」イニシアチブが発足、さらに今年9月には「Joint Services Center」を開設するなど、共同で顧客サポートに取り組む体制を強化したばかりだ。
しかし、同社を取り巻く環境は厳しい。2000年には100ドルを超えた株価も5ドル前後に落ち込んでいる。
「今年、IT予算を削減した会社は手を挙げてください」とラトガース氏が聴衆に問い掛けると約3割が手を挙げたが、彼はドット・コム・バブルと現在のIT投資抑制をどちらも極端だとした。
「振り子は揺れ戻すもの。極端な状況から新しいパラダイムが生まれようとしている」(ラトガース氏)
PCにとって表計算やワープロがキラーアプリケーションだったように、同社がフォーカスするストレージネットワーキングへの需要も「Global Replay」という用途がトリガーとなって爆発的な普及を見せるとラトガース氏は話す。
現在は、フライトレコーダーや通話記録装置などが、過去の事件や出来事を再生する目的で使われているが、彼がGlobal Replayと呼ぶアーカイブシステムは、例えば、医療の分野で患者のデータを管理する用途が考えられる。病院、薬局、保険会社など、医療にかかわるさまざまなプレーヤーがリアルタイムで更新される患者の情報にアクセスできるようにするものだ。
ただ、そうした新しい需要を喚起するためにも、素早く、そして高いROI(Return on Investment)は不可欠だ。ラトガース氏は「少なくとも2006年までにはストレージの7割がネットワーク化される」とし、EMCはその管理の自動化に注力していくと話す。
EMCでは9月中旬、「悪夢のようなストレージのプロビジョニング」(ラトガース氏)を自動化してくれる新しい「ControlCenter」ファミリーを発表した。昨年打ち出された「AutoIS」戦略を具現化してくれる製品群で、同社のSymmetrixやCLARiXだけでなく、ヒューレット・パッカードのStorageWorksもサポートする。
ラトガース氏は、「ダウンタイムのうち85%は人的なミスだ」と指摘する。ストレージのプロビジョニングには、ストレージ、SAN、およびサーバすべての領域で複雑な設定変更を行う必要がある。こうした面倒な作業を自動化することによって人的なミスを排除できれば、ダウンタイムは大幅に減らせる。
第2のEMCを夢見たベンチャー企業は後を絶たなかったが、気がつけばそのほとんどは消え去っている。実は7年前に同社がSymmetrixを発表したときのパートナーリストには、インフォミックスやサイベースも名を連ねていた。
EMCとオラクルどちらも苦境には違いないが、R&D投資に対する積極的な姿勢は崩していない。
「どのベンダーをITパートナーとして選ぶか慎重を期すべきだ」と話すラトガース氏。再生に向けた自信が顔をのぞかせた。
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OracleWorld 2002 San Francisco Report
[浅井英二,ITmedia]