エンタープライズ:ニュース 2002/11/18 15:59:00 更新


基調講演:選択肢の提供やライフサイクル全体の統合を目指すボーランド

ボーランドのデベロッパーカンファレンス「Borland Conference 2002 Tokyo」が開幕した。オープニングのデール・フラー社長兼CEOによる基調講演は、厳しい経済状況の下で生産性の向上を求められているデベロッパーらに、既存資産を生かせ、そして選択の自由がある開発環境の提供を約束した。

 11月18日、都内のホテルでボーランドのデベロッパーカンファレンス「Borland Conference 2002 Tokyo」(BorCon)が開幕した。5月にカリフォルニア州ロサンゼルス郊外のアナハイムで行われたのを皮切りに世界各国で開催されているもの。国内開催も既に13回を数える。今年は「開発技法を磨く」をテーマに、18日、19日の両日で、約50のテクニカルセッションが行われる。

 オープニングのデール・フラー社長兼CEOによる基調講演は、急きょサテライト中継に変更されたものの、「ボーランドは顧客へのフォーカスを忘れない」とし、厳しい経済状況の下で生産性の向上を求められているデベロッパーらに、既存資産を生かせ、そして選択の自由がある開発環境の提供を約束した。

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サンフランシスコの金融街を背景にメッセージを送るフラーCEO

 デベロッパーリレーションを担当するデビッド・インターシモン副社長の質問に答える形で進められた基調講演で、フラーCEOが多くの時間を割いて強調したのが、「インテグレーション」だった。

 同社では単にコーディングだけに留まらず、アプリケーションのライフサイクル全体をシームレスに統合し、生産性を高めることでTCOを削減するソリューションとして「Borland Enterprise Studio for Java」をJava開発のフラグシップ製品として用意している。

「デザイン、実装、テスト、配備、運用といった各フェーズの境界線があいまいになってきていて、ライフサイクル全体をシームレスに統合していくことが重要だと考えている」とフラー氏。

 従来のウォーターフォール型のアプリケーション開発とは異なり、例えば、Enterprise Studioに同梱するラショナルソフトウェアのビジュアルモデリングツール、Rational Roseは、JBuilderと連携することによって、設計情報と実装コードの双方向連動を実現している。

 つまり、Rational Roseによって作成したUML(Universal Modeling Language)モデリング情報からJavaコードを自動生成してJBuilderで効率的に実装できるだけでなく、JBuilderでの変更点もRational Roseにフィードバックされるわけだ。

 また、Enterprise Studioには、プロセス管理やチームコラボレーションなど、開発チームが効率良く連携できる「Rational Unified Process」も同梱する。

スターベース、トゥゲザーの統合

 10月に相次いで実施したスターベースおよびトゥゲザーソフトの買収についてもフラー氏は言及した。スターベースはソフトウェア構成管理の「StarTeam」を持ち、トゥゲザーソフトの「ControlCenter」は、分析、設計、実装、配備、デバッグまで統合したプラットフォームとして知られる。

 フラー氏は、「トゥゲザーソフトやスターベースの技術を統合して単一のソリューションとして提供する。そうすることによって顧客がソフトウェアを市場に出すまでの期間をさらに短縮し、TCO削減も削減できるようにしたい」と話す。

 ただ、こうした統合によって、エンドツーエンドすべてのフェーズでボーランド製品を押し付けようというわけではない。

「BEAのWebLogicやIBMのWebSphereといったJ2EEアプリケーションサーバとも統合できる。これまでの投資を捨てることなく、アジリティ(俊敏さ)を高め、より大きな競争優位を手に入れることができる」(フラー氏)

 こうしたオープンさや既存資産を生かす同社のアプローチは、何もJavaに限ったことではない。マイクロソフトのVisual Studio.NETがすべて同社製品を前提としているのに対して、.NETへの対応を急ピッチで進めるボーランドのDelphiでは、例えばデータベースでは、OracleやDB2もサポートする。

 フラー氏は、絶えず顧客の声に耳を傾けてきた成果として、同社が10四半期連続で売上高を増やしていることを紹介し、今後も魅力ある技術を提供していくとした。

 同社では1999年からJava、.NET、Linux、Webサービス、そしてモバイルという主要な技術にフォーカスしてきた。狙いは特定のプラットフォームや技術に縛られない「ルネッサンス」の実現だ。さまざまなデバイスの登場は、暗黒の時代に終わりを告げ、カラフルな時代を招こうとしている。

「日本では次々と新しいデバイスが生まれている。こうした分野でを日本は得意としている。できるだけ多くの意見を聞きたい」とフラー氏は話した。

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関連リンク
▼Borland Conference 2002 Tokyo サイト

[浅井英二,ITmedia]