エンタープライズ:ニュース 2002/11/21 18:40:00 更新


日本IBM、4ブランドの真打ちとしてWebSphereの新バージョン発表

日本IBMは11月21日、WebSphere Application Server V5.0を発表するとともに、「WebSphere Express」の開発意向も表明した。ソフトウェア事業を統括する堀田常務は、全社を挙げて取り組む「e-ビジネス・オンデマンド」の実現に向けた中核プラットフォームと位置付けている。

 日本アイ・ビー・エムは11月21日、J2EEアプリケーションサーバであるWebSphere Application Serverの新バージョンを発表するとともに、WebSphereファミリーにエントリー向けの「WebSphere Express」を開発・追加していくことも明らかにした。

 WebSphereファミリーの中核となる「WebSphere Application Server V5.0」(WAS 5.0)では、オートノミック・コンピューティング(自律型コンピューティング)機能が搭載されたほか、非同期型Bean(AsyncBean)をサポートするなど、EJB(Enterprise JavaBeans)の枠組みの中で顧客のニーズにこたえる機能拡張も行っている。

 都内で行われた記者発表会で、ソフトウェア事業部長を務める堀田一芙常務は、同社が全社を挙げて取り組む「e-ビジネス・オンデマンド」構想について触れ、「ビジネスは、今までにない新しいオンデマンドの世界に進もうとしている。取引先も過去の関係に縛られず選び、なおかつ迅速な意思決定を求めている」と話す。

 企業は、コアコンピタンスへの投資を強め、ほかはネットワークを介してパートナーに任せていくのが大きな潮流となつつある。10月末、IBMコーポレーションの社長兼CEO、サム・パルミサーノ氏は顧客らを前に、「e-ビジネスの新たな段階」と表現している。

 堀田氏は、ITテクノロジーの新しい活用事例として、ヤマト運輸を紹介した。WebSphereファミリーをはじめ、DB2、Tivoliの各製品によって構築されている同社の「荷物お問い合わせシステム」は、Webサービスとして検索システムが公開され、百貨店やセブンイレブンなどのホームページにそのプロセスがシームレスに統合されるという。

 この日発表された新しいWAS V5.0では、こうしたWebサービスの機能が、SOAPプロトコルによる接続の段階から「セキュリティ」や幅広い「相互運用性」を確保する段階へと発展している。WAS V5.0で搭載された「WSIF」(Web Services Invocation Framework)を使えば、社外はSOAPだが、社内のシステムではSOAPとは異なる効率の良いプロトコルによって、社内外のWebサービスを利用できるようになるという。

重要なオートノミック機能

 WebSphereファミリーのビジネスを統括する大古俊輔 WebSphere事業推進部長は、記者発表会の限られた時間の中で、WAS V5.0のオートノミック・コンピューティング機能について特に時間を割いた。中でも熟練した専門家でなくともシステムを最適化できる「パフォーマンス・アドバイザー」については、デモを交えながら紹介している。

「素早くe-ビジネスを提供するには、単に動くだけではダメ。アプリケーションサーバの台数が増えてくれば、スキルのあるITエンジニアにその最適化作業が集中してしまう。チューニングポイントを指示してくれるパフォーマンス・アドバイザーは極めて重要だ」と大古氏は話す。

 また、大古氏は非同期型Beanのサポートについても触れた。これまでの業務システム開発で広く利用されてきた非同期型の処理だが、なぜかEJBの世界にはこれがなかった。このため多くの場合、J2EEアプリケーションサーバの管理外のプロセスとして処理しており、システムの新たな負担となっていた。

 IBMでは、これをEJBの枠組みの中で可能にし、その機能をWAS V5.0に搭載した。大古氏によれば、IBMではこの非同期型BeanをJCP(Java Community Process)に標準提案し、オープンにしていくという。

 またこの日、エントリー向けのWebSphere Expressと同様に開発意向が表明された「WebSphere Studio V5.0」も、オープンソースのEclipseがベースとなっている。また、オープンソースフレームワークとして人気のあるStruts向けのビジュアルなデザイナーも搭載されるという。

 IBMは、J2EE仕様のうち約80%の仕様策定に貢献しているほか、Eclipseは50億円相当の開発資産をオープンソースコミュニティーに寄付したものだ。

 なお、エントリー向けのWebSphere Expressについては、ISVパッケージのエンジンとして組み込まれることを想定しており、将来的には500社近いパートナーの獲得を目指し、これまでIBMがリーチできなかった顧客の取り込みも狙う。

 堀田常務によれば、12月11日に開設する渋谷の「IBM SW CoC(Center of Competency)」がそのための重要な役割を担うという。

関連記事
▼ホットなJ2EEサーバ市場、日本IBMはWebSphere 5.0投入へ
▼IBM、Webサービスに対応したWebSphere 5を11月リリースへ

関連リンク
▼日本アイ・ビー・エム

[浅井英二,ITmedia]