| エンタープライズ:インタビュー | 2002/12/06 20:30:00 更新 |

Interview:「求められるのはシンプルなソリューション」とノキア・ショーテル副社長
チェック・ポイントとの強力なパートナーシップに基づいて、セキュリティアプライアンス製品「IPシリーズ」を展開しているノキア・インターネット・コミュニケーションズ。同社副社長のグレッグ・ショーテル氏によれば、その強みは、ベスト・オブ・ブリードの形でシンプルなソリューションを展開していることだという
「ノキア」というブランドからは、携帯電話を連想するユーザーのほうが多いに違いない。だが同社は、セキュリティという言葉がこれほど広く認識されるようになる前から、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズとの協力の下、独自OS「IPSO」をベースとしたファイアウォールアプライアンス製品「IPシリーズ」を提供してきた。ノキア・インターネット・コミュニケーションズのグローバル・セールス担当副社長、グレッグ・ショーテル氏に、その歩みと今後の戦略を聞いた。

「NICは簡素な運用・管理にフォーカスしてきた」というショーテル氏
ZDNet ノキアがセキュリティに携わるようになったきっかけは何でしょうか?
ショーテル ノキア・インターネット・コミュニケーションズ(NIC)が設立されたのは、約5年前のことです。ちょうどそのころから、インターネットにアクセスする人の数が劇的に増え、接続のためのデバイスも多様化してきました。これを支えるためにネットワークセキュリティを理解し、セキュリティ製品を提供する必要があると認識して、NICを設立したのです。
ZDNet ノキアのビジネス全体の中で、NICはどのように位置付けられるのでしょうか?
ショーテル NICには3つの柱があります。1つは競争力のあるIPセキュリティ機器の開発です。この分野では非常にうまくやってきたと自負しており、日本でも、ファイアウォール分野ではナンバーワンのプロバイダーとなっています。2つめは、ワイヤレスやキャリア向けソリューションへの取り込みが可能なセキュリティ技術の提供です。NICのファイアウォールで実現された機能は、ノキア全体のソリューションに組み込まれています。そして最後は、さらなる高速化やマルチメディアメッセージングといった、IP技術へのフォーカスです。これはますます重要性を増しています。
このようにNICのセキュリティ技術は、ノキア製品の中でも重要な役割を担っているのです。しかもわれわれは、セキュリティがこのように流行するずっと前から、5年近くに渡ってこの問題に取り組んでいます。
ZDNet ですが、高速なファイアウォールアプライアンスを提供するベンダーは他にも存在しています。
ショーテル われわれは、ベスト・オブ・ブリードのソリューションを提供しています。中でも大きいのは、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(チェック・ポイント)との協業で、両社の間で600人以上の技術者が取り組みを進めています。他に管理機能や健全な財務体質なども重要な要素といえるでしょう。
ZDNet ですがセキュリティは、ファイアウォールだけで達成できるものではありません。
ショーテル おっしゃるとおりです。ファイアウォールは、ソリューションを形成する要素の1つに過ぎません。このほかにも、不正侵入検知・防止やURLフィルタリング、ウイルスチェックやフォレンジクス(事後の調査)など、さまざまなパーツがあり、セキュリティを考える際にはそれらを含めて考えていかなければなりません。そのうえ、これらを踏まえた上で、さらに有線の世界とワイヤレスの世界の両方に対応していく必要があるのです。
ワイヤードとワイヤレスの世界に精通し、これらすべての要素に取り組んでいる企業は、ノキアの他にはありません。その取り組みの1つとして、「ノキア・セキュリティ・デベロッパーズ・アライアンス」があります。ノキアのプラットフォームとパートナーのセキュリティ関連アプリケーションの連携、相互運用性を検証し、テストをクリアしたものには「Nokia OK」の認定を与えるプログラムで、現在、トリップワイヤやサーフコントロールなど、5〜6社が加わっています。チェック・ポイントとともに進めているファイアウォールを核に、このようなプログラムを通じて複数のセキュリティ製品を提供し、さまざまなセキュリティ上の課題に取り組んでいます。
ZDNet チェック・ポイントが展開しているOPSECプログラムと似ていませんか?
ショーテル いいえ。われわれは厳密にパートナーを選び、そのうえアプリケーションの最適化も行っています。特定の機能に関する製品を選び出し、開発の段階からともに取り組むことで、ポートフォリオを充実させ、ベスト・オブ・ブリードのセキュリティソリューションを提供しているのです。
ZDNet 機能やパフォーマンスだけでなく、運用管理の負担も、現場の管理者にとっては大きな問題です。
ショーテル おっしゃるとおり、管理は非常に難しい問題です。まさにこの問題を解決するためのツールとして、NICは「Nokia Horizon Manager」を提供し、管理者が迅速な導入、設定、リモートからのアップデートを簡単に行えるようにしています。コストと時間の節約につながることから、顧客、特に大規模企業で好評を博していますし、セキュリティアウトソースサービスを提供するマネージドサービスプロバイダーからも高い評価を受けています。NICでは運用・管理を最優先のフォーカスとしてとらえており、独自に開発を行っています。
ZDNet これまでIPシリーズでは、ファイアウォール/VPNやIDS、負荷分散といった機能が提供されてきました。今後はどのような製品が登場するのでしょう?
ショーテル われわれは先日、「Nokia Message Protector」という新しい製品を発表しました。これまでNICが開発した中でも、もっとも面白い製品の1つだといえるでしょう。ノキア自身もこの製品を利用しています。
Nokia Message Protectorは、統計的手法に基づいてウイルスチェックを行います。それも複数のウイルスチェックプログラムを組み合わせ、順にチェックを行うことで、確実にウイルスを見つけ出し、駆除するのです。トレンドマイクロをはじめとする複数のパートナー企業が提供するウイルス対策製品に対応し、付加価値を高めます。
もう1つ興味深い機能に、電子文書のコントロール機能があります。ドキュメントにスタンプを付加することにより、その文書を社内ネットワークの外に出さないようにしたり、ある一定の期限を設けて公開できるようにするといった具合に、さまざまなコントロールを行えるのです。法律事務所や金融業界、あるいは企業経営層など、さまざまなシーンで活用できると思います。たとえば同じ企業の内部でも、最新の技術仕様書は開発部のみが閲覧でき、営業など他の部署に存在してはならないはずです。文書があるべきところにあり、あってはならないところには存在しないようにコントロールしなくてはなりません。
さらにこの製品は、スパムフィルタリング機能も提供します。日本では2003年第1四半期の終わりまでに提供される予定です。
ZDNet 既にNokia Message Protectorを利用している企業もあるのでしょうか?
ショーテル 米国では製薬業の企業がこれを利用し、顧客の投薬暦などがメールで流出するような事態を防いでいます。一般に、これと同じことを実現するには、別々のベンダーから提供される5、6個の製品を組み合わせ、それぞれをメンテナンスしていかなければなりません。ですがNICは、これらをすべて、ノキア・アプライアンスという形に統合し、1つの製品で提供しています。
ZDNet 今後、何がセキュリティ上の課題になると考えていますか?
ショーテル 課題は2つあると思います。1つは、企業顧客はシンプルなソリューションを期待しているということです。簡単に管理や設定が行える、もっと統合されたアプローチが求められているのです。しかもそれは、ベスト・オブ・ブリードのセキュリティでなくてはなりません。こうしたニーズに対応できる企業は非常に少ないといえるでしょう。
もう1つ、企業は現在、インフラに対する投資効果をきちんと評価するようになりました。その意味でセキュリティアプリケーションは、利益や生産性を高め、効率を向上させるポジティブな側面を持っているのです。つまり市場は今、セキュリティアプリケーションによって既存のインフラをフルに活用し、業績を改善させることにフォーカスしているのです。これはなかなか興味深い考察だと思います。
関連記事関連リンク
[高橋睦美,ITmedia]
