エンタープライズ:ニュース 2002/12/20 05:23:00 更新


NTTデータ、日本初のグリッド・コンピューティングの大規模実験を開始

NTTデータは、日本IBM、インテル、NTT東日本、マイクロソフト、米ユナイテッドデバイスの協力を得て、日本で初めての、PC数十万台規模のグリッド・コンピューティングの実験を開始する。

 エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)は12月19日、都内で記者発表会を開催し、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、インテル、東日本電信電話(NTT東日本)、マイクロソフト、米ユナイテッドデバイスの協力を得て、数十万台の一般家庭のPCをCPUリソースを利用したグリッド・コンピューティング「cell computing」の実験を12月20日より2003年3月20日までの3カ月間実施すると発表した。このような大規模なグリッド・コンピューティングの実験は日本で初めてという。

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(左から)NTTデータ技術開発本部cell computingプロジェクトリーダー鑓水訟氏氏、同技術開発本部副本部長山本修一郎氏、日本IBMグリッド・ビジネス事業部技術理事関孝則氏、米ユナイテッドデバイスCEOエド・ハバード氏、東亞合成化学名古屋研究機構新製品開発研究所主席研究員吉田徹彦氏、NTT物性科学基礎研究所量子物性研究部フォトニックナノ構造研究グループ新家昭彦氏

 グリッド・コンピューティングには、企業内LANなどに接続されたPCを使うようなクローズドなもの、インターネットに接続されたPCを使うようなオープンなものなどがあるが、NTTデータのcell computingは、後者のタイプになる。この実験のためのミドルウェアに関しては、NTTデータが米ユナイテッドデバイスと協力して開発した。米ユナイテッドデバイスは、SETI@HomeCancer Research Programなど、数百万台規模のPCを利用したグリッド・コンピューティングシステムを手がけた実績を持つ。

 グリッド・コンピューティングは、PCの普段使われていない演算能力を多数まとめることで、スーパーコンピュータ並の処理能力を得ようとするもので、1つのプログラムで膨大なデータを処理するようなアプリケーションや、分割実行可能なプログラムで膨大なデータを処理するようなアプリケーションに向くという。

 NTTデータでは、この実験を通じて日本でPCグリッド・コンピューティングを認知させ、いずれはこの処理能力を企業などに提供するビジネスとして成立させたいとしている。

 今回の実験において、日本IBMはデータをとりまとめるサーバやデータベース、インフラ構築の技術支援、インテルは技術課題の解決サポート、プロモーション活動、NTT東日本は地域ネットワーク利用時の技術的課題解決とプロモーション活動、マイクロソフトは「.NET」インフラを使用したコミュニティWebサイトサポート、プロモーション活動などをそれぞれ行う。

 実験における解析テーマは、東亞合成化学の名古屋研究機構新製品開発研究所による「ヒト遺伝子情報からの周期性の発見(BOLERO:Bio Odyssey of Lateen Explorer for Repeated Objects)」と、NTT物性科学基礎研究所の「光学的に新たな特徴を持つ材質の設計図を作成(OPAL:Optical Property AnaLyzer)」の2つ。

 東亞合成化学によると、ヒトゲノム中には、さまざまな繰り返し配列が存在する。このうち、比較的短い繰り返し配列と疾病の因果関係は、近年の研究により明らかになっている。しかし、1万塩基以上にもなるような長大な周期性の探索研究と疾病との関係はこれまで行われていないという。BOLEROは、ヒトゲノムの長大な周期性を探索・特定し、病因遺伝子との関係を解析することが目標となっている。

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cell computingプログラムでOPALプログラムを実行しているところ

 またNTT物性科学基礎研究所によれば、将来の光マイクロプロセッサ開発においては、光素子の小型化において、光が漏れてしまうことによる技術的課題があるという。この光素子の小型化において期待されているのが、「フォトニック結晶」と呼ばれる光素材。フォトニック結晶は、屈折率が異なる光の波長ほどのサイズの物質を、光の波長程度の間隔で規則正しく配置した人工構造物で、構造をうまく設計することにより、任意の光の反射や集中を行う結晶を作り出せるという。OPALでは、仮想的なフォトニック結晶にさまざまな周波数の光を当て、どんな方向からでも反射する(内部に光が入らない)結晶構造を探索することを目標にしている。

 実験の参加資格は、個人・企業を問わず、インターネットに接続できるPCを持つ人で、対応するOSはWindows 98/Me/NT 4.0/2000/XP。cell computingのサイトで登録を行い、ソフトウェアをダウンロードすれば参加できる。参加費用は無料。参加者に対しては協賛各社からのプレゼントなどの「見かえり」も用意する予定という。

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[佐々木千之,ITmedia]