エンタープライズ:ニュース | 2003/01/21 15:13:00 更新 |
基調講演:短期導入とアウトソーシングでE-Business SuiteのTCOを引き下げるオラクル
Oracle E-Business Suiteのための年次カンファレンス「Oracle AppsWorld 2003 San Diego」が開幕した。短期間かつ固定料金でE-Business Suiteを導入できる、大企業および中堅企業向けの「Oracle Business Flow Accelerators」を発表したほか、中堅から小規模事業者を対象にしたEBS「サブスクリプションエディション」の概要も明らかにしている。
米国時間1月20日、カリフォルニア州サンディエゴのコンベンションセンターで、Orace E-Business Suiteをメインテーマとするユーザーおよびパートナーのための年次カンファレンス「Oracle AppsWorld 2003 San Diego」が開幕した。オープニングの基調講演には、オラクルでCFO(最高財務責任者)を務めるジェフ・ヘンリー執行副社長とマーク・ジャービスCMO(最高マーケティング責任者)が登場し、E-Business Suite 11i導入によって得られる優れたコスト効果をアピールした。
オラクルはこの日、短期間かつ固定料金でE-Business Suite(EBS)を導入できる、大企業および中堅企業向けの「Oracle Business Flow Accelerators」を発表したほか、年商1000万ドルから2500万ドル規模の中堅から小規模事業者を対象にしたEBS「サブスクリプションエディション」(月額制)の概要も明らかにしている。
ヘンリーCFOのスピーチは、これまでの彼のスピーチがそうであったように、同社の利益率改善とそれを支えるオラクルのテクノロジーや製品を印象付けるものだった。また同氏は、最近企業によるIT支出が増加に転じたことやオラクルで進んでいる案件の状況から判断し、「景気は底を打った。(12月から始まった)今会計四半期は上向く」との楽観的な見通しも示している。
しかし、ヘンリー氏は、景気は回復するものの、エンタープライズソフトウェア業界そのものは大規模な整理統合が進み、市場はオラクル、マイクロソフト、IBM、SAPというビッグプレーヤーに収れんされるとみる。
「機能性は成熟してきている。TCO(総所有コスト)が差別化するうえで重要になる」とヘンリー氏。
Unbreakable Linuxに代表されるLinux対応の強化や、この日発表されたOracle Business Flow Accelerators、あるいはEBSサブスクリプションエディションは、ビッグプレーヤー同士の最終戦争に備えたオラクルの切り札といえる。
ヘンリー氏に代わってステージに登場したジャービスCMOは、オラクルのEBSであれば、ハードウェア、ソフトウェア、実装、および運用管理に至るすべての分野でTCOを引き下げられることを強調した。
ジャービス氏は、手始めにハードウェアの具体的なコストを挙げ、IAサーバとLinuxの組み合わせの圧倒的な優位さをアピールする。251同時ユーザーのEBSをRISCプロセッサシステムで構築した場合、5万3330ドルのハードウェアコストが必要となるのに対し、IAサーバとLinuxであれば、8860ドルで済む。ジャービス氏は、既に500以上の企業がLinuxでEBSを稼動させていることも明かした。
ソフトウェアの価格競争力についてこれまでも言及してきたオラクルだが、それに比べるとあいまいだった実装コストについても同社は大胆にメスを入れ、透明性を高めている。基調講演後のプレス向けQ&Aセッションでもジャービス氏が話したとおり、ライバルらは実装にかかるコストを数字を示して明確化できていない。
「だからこそ、期間固定、コスト固定で差別化しようと考えた」とジャービス氏。
統合化されたビジネスフロー
マーケティングを統括する彼は、こうしたEBSのTCO削減に対する取り組みを「Oracle All-In-One」という名称で呼ぶ。それはソフトウェア、実装、および運用保守にわたるコミットメントであり、具体的にはEBS、Business Flow Accelerators、およびアウトソーシングサービスを組み合わせたものだ。
Business Flow Acceleratorsは、どの業界にも共通する業務フローや一部業界に特化したビジネスフローが26種類用意される。これらのビジネスフローの多くは、マーケティング、営業、製造といった異なる組織、異なるアプリケーションを横断的に流れるものだ。Oracle9iデータベースによって単一のデータモデルを実現しているEBSでは2年前から、「統合化されたビジネスフロー」によるユニークなアプローチが打ち出されている。
ジャービス氏によれば、新しいBusiness Flow Acceleratorsによって、「コーヒーを飲みながらコンサルタントとのんびりやっていた」というデザインのフェーズが3カ月から1日に、アッセンブルはカスタマイズからコンフィギュレーションへと質的に変わるという。配備についてもこれまでならコンサルタントが出向いて行っていたが、これもオンラインで短期化を図る。
Business Flow Acceleratorsは、その延長線上にある運用保守のフェーズでアウトソースすることも視野に入れている。基盤となるEBSをノンカスタマイズで利用するため、アウトソーシングに適しているからだ。EBSをオラクルやパートナーらにホスティングしている顧客企業は300社に上り、早くもパフォーマンスやトラブル解決の面で大きなメリットを享受し始めているという。
ただ、ジャービス氏が「アウトソーシングがEBSへの投資効果を高め、IT部門はより専門的な分野にフォーカスできるようになる」と話すとおり、Business Flow Acceleratorsによって打ち出されるオラクルのモデルは、パートナーの存在まで否定するものではない。基本的には、ハードウェアをはじめとするITインフラや基盤となるソフトウェアのコストを節約するもので、ISVやシステムインテグレーターは、EBSの基盤の上にさらに高度なアプリケーションを構築し、新しいバリューを顧客に提供できるようになる。
この日オラクルでは、企業の顧客サービスを代行するリーディングカンパニーのAFFINAが、Business Flow Acceleratorsの「Call to Resolution」を利用し、大手ハードウェアベンダー向けの顧客サポートアプリケーションをわずか81日で構築できた事例も紹介している。ちなみに同社は、オラクルのアウトソーシングサービスも活用し、運用コストの大幅な削減も実現しているという。
こうした幾つかの先行顧客の事例を基にオラクルでは、Business Flow Acceleratorsの効果を、導入期間が66%短縮し、運用まで含めたTCOは33%節約できると見積もっている。
関連記事オラクルが新しいOracle E-Business Suiteを準備中
Oracle AppsWorld 2003 San Diego Report
[浅井英二,ITmedia]