エンタープライズ:ニュース 2003/01/22 10:52:00 更新


基調講演:ストレージ業界の雄、EMCのルイスCTOが「情報管理の将来」を語る

サンディエゴで開催中の「Oracle AppsWorld 2003」カンファレンスは2日目を迎え、オラクルの長年の盟友、EMCのルイスCTOが登場した。ルイス氏は、情報管理の将来は、「ネットワーク化」「自動化」「コンテント最適化」「自己修復」、そして「キャッシュド・コンテント」にあると話した。

 1月21日、カリフォルニア州サンディエゴで開催中の「Oracle AppsWorld 2003」カンファレンスは2日目を迎え、午前の基調講演にストレージ業界の雄、EMCのマーク・ルイスCTO兼執行副社長が登場した。

 EMCは1995年以来、オラクルとストレージソリューションの共同開発を行っており、長年に渡る盟友だ。この日も、Oracle E-Business Suite 11iの環境をオンラインのまま、丸ごとコピーするTimeFinderのソリューションが両社によって認定され、「Quickly Cloning Oracle Applications Release 11i with EMC TimeFinder and Oracle AutoConfig」と題されたホワイトペーパーもWebで公開された。

 EMCのルイスCTOは、16世紀半ば、スペイン艦隊を率いてサンディエゴに入港したホアン・ロドリゲス・カブリオの話題から話を始めた。カブリオは、「カリフォルニアのコロンブス」と呼ばれ、この地から西海岸開拓の歴史が始まったといわれている。

「カブリオは、失われた(カラ族の)黄金都市、エルドラドを求めて航海に出たのだが、われわれIT業界も同じ。顧客らに優れたバリューを提供するために探検を続けている」とルイス氏。

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ストレージの雄、EMCのCTOを務めるルイス氏


 彼によれば、情報管理の将来は、「ネットワーク化」「自動化」「コンテント最適化」「自己修復」、そして「キャッシュド・コンテント」にあるという。

 ネットワークストレージへの潮流は、ルイス氏が話すとおり、議論の余地はない。ビジネスを遂行していくうえでのイネーブラーといっていい。

「ダイレクトアタッチ型は、家の裏に発電機を据え付けるようなもの」(ルイス氏)

 しかし、ネットワークストレージはその複雑さを中央から管理しなければならないし、ビジネスを継続していくためには情報の保護も必要になる。ストレージが電気、ガス、水道と同じようなユーティリティーになるためには、自動化が不可欠だ。

 EMCが掲げる「AutoIS」戦略は、こうした問題に対処するもので、「人がルールをセットし、ソフトウェアが実行してくれる」環境の実現を狙っている。また、従来、ストレージを追加するだけでも、プロビジョニングに数日間を費やさなければならないが、こうした分野にも自動化は求められる。

SAN vs. NAS、さらにCASの三つ巴?

 業界には、SAN(Storage Area Network)とNAS(Networked Attached Storage)のどちらが盟主の座に就くべきかという議論がある。だがルイス氏は、SANは辞書を引くようなものであるのに対して、NASは特定ファイルの共有を目的としていると話す。前者が情報の更新が少ないのに対して、後者は比較的頻繁に更新される。

「両者は競合ではなく共存すべきだ」とルイス氏。

 さらに彼は、「CAS」(Content Addressed Storage)が極めて重要な役割を担うとする。レントゲン写真、電子メールアーカイブ、デジタルミュージック、デジタルムービー、ホワイトペーパー、マニュアル、バイオメトリックデータ……、オリジナルのまま保存しておきたい、あるいは単にとっておきたい情報の種類は広範に渡る。

 ルイス氏は、CASを「バレーパーキングと同じ」と説明する。

「CASではどこに置かれるのかを知らなくても、必要なときに自分のクルマを持ってきてくれる」(ルイス氏)

 彼によれば、現在のコンテントの半分は、CASに格納することが適しているという。同社のCASソリューションである「Centera」は、個々のオブジェクトにアドレスを付け、それによって容易に必要な情報を引き出すことができる。

 ネットワークストレージは管理するだけでは足りない。物理的な障害に対処しなければならないからだ。コンピュータの場合もそうだが、ユーティリティー化をしたときには、「自己修復」の機能が必要になる。これも情報管理の将来には欠かせない機能だ。

 ルイス氏は、自動車の歴史を振り返りながら、最近ではコンピュータが埋め込まれ、いかに自己診断と障害予知の機能を高めてきたかについて触れた。

 やはりEMCのCenteraには、自己修復の機能も備わっているという。ディスクやノードなどハードウェア障害が発生した場合は、必要に応じて、自動的に再構成とオブジェクト複製を行ってくれるというものだ。ちなみに、Centeraでは、ストレージを追加する場合にも、単に新しいノードを接続するだけで済む。Centeraが、インストールされた新たな容量を自動検出し、構成してくれるからだ。

「ストレージであれば、自動車業界の自己診断機能より先に行けるはず」とルイス氏。

 先の「SAN vs. NAS」よりもずっと根深い論争が業界にはある。それはこの半世紀続いた「分散 vs. 統合」の綱引きだ。ルイス氏は、「そろそろこの論争にも幕を引くべきだ」と話し、その回答は「キャッシュドコンテント」とする。分散環境を仮のコピー情報を置き、中央にはコアとなる情報を格納し、保護していこうという考え方で、「2つの良いとこ取りをすればいいわけだ」(ルイス氏)。

 キャッシュドコンテントは、利便性も大きく高めてくれる。本人確認さえできれば、中央で管理された情報をどこからでも引き出すことが可能になる。

「携帯電話を何個もなくしたが、代わりを買うたびに電話番号リストを入力し直さなければならない」とルイス氏は笑う。キャッシュドコンテントの環境が整えば、そうした必要もなくなる。

 最近のクルマには、運転席のポジションを記憶してくれる機能が備わっているが、将来はレンタカーに乗り込み、本人認証を済ませれば、自動的に最適なポジションに設定されるのも夢ではない。

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[浅井英二,ITmedia]