エンタープライズ:ニュース | 2003/01/26 23:59:00 更新 |
スーパーコンピュータも水平分業の時代?
パソコンに使われるプロセッサを多数集めて、スーパーコンピュータ並みの性能を発揮させる、HPCCシステム向けのOSとして、Linuxが脚光を浴びている。LinuxWorld New York 2003にも、そうしたシステムが展示された。
パソコンに使われるプロセッサや関連デバイスは、出荷量も多く、ワークステーションなどに使われていたRISCプロセッサに比べると、システムが低価格になるのが特徴。もちろん、インテルやAMDも、高性能だが、価格の高いサーバー用プロセッサを開発しているが、市販されているプロセッサでもある程度の性能を持っている。
だとしたら、これを多数集めれば、低価格で超高性能のマシンを作れるのでは? というアイディアを持つ人間が現れてもおかしくはない。
もともと、スーパーコンピュータの分野には、多数のノードを接続して高速計算システムを作るというアイディアが古くからあった。耐障害性を高めるためのクラスタに対して、こうした高速計算を行うためのクラスタをHPCC(High-performance computing Clusters)と呼ぶ。
クラスタ用ソフトウェアであるBeowulfは、NASAで高速計算用クラスタを構築するために1994年に作られたもの。このためにLinux系では比較的早くから高速計算用のクラスタが構築可能だった。
また、ノード間接続には、クラスタ構築用のMyrinet(ミリネット。ミリコムのノード間接続システム))などが使われているほか、最近では、安価になってきたギガビットイーサーネットチップも使われている。こちらは、汎用の製品であるために価格が安く、1ノードに複数個載せることも可能なため、クラスタノード専用プロセッサボードに最近ではよく使われる。
スーパーコンピュータの速度ランキングであるTOP500 Supercomputer sitesには、2002年にこうして作られたLinuxクラスタシステムが5位と、はじめてベスト10に入った。いままでは、NECや富士通といった専門メーカーが作ったシステムのみが上位を占めていたのに対し、汎用のXeonプロセッサを使って作られたローレンス・リバリモア国立研究所のシステムがそこに割り込んだのである。このシステムは、11Tfropsというピーク性能を持ち、2304個のプロセッサをLinuxで動かしている。
リナックス・ネットワークスがローレンス・リバリモア研究所に納入したものと同じノードを使うユニット。このユニット内にノードが10個入っている。
これを作ったのはリナックス・ネットワークス(Linux NetworX)で、LinuxWorld New York2003のインテルブースに出展されていた。1つのノードは、2.4GHzのXeonプロセッサが2つ、4Gバイトのメモリ、128Gバイトのハードディスクを搭載する。システムは、これを962ノード(システムには、このほかスペア用や開発用のノードも組み込まれている)接続したもの。ノード間の接続にはギガビット・イーサーネットを使っている。
デルコンピュータも高速クラスタ分野に参入している。「PowerEdge 1655MC」ブレードサーバシステムは、最大132ノードまでのクラスタを構築可能。また、科学技術計算分野にも大きなシェアを持つSGIは、独自の高速ノード間接続システムを持つAltix 3000ファミリを発表、こちらは、プロセッサにItanium 2を採用している。
このHPCCは、まだ、大規模なシステムで、導入が可能なユーザーも限られているが、LinuxやPC用の汎用部品で作ることができるため、低価格化や高密度化が進むと予想される。そうなると、より多くのユーザーがスーパーコンピュータクラスの処理性能を利用できることになる。従来、コストなどの問題で利用できなかった新たな利用範囲を生み出すかもしれない。
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関連リンク
リナックス・ネットワークス
LinuxWorld New York 2003レポート
[塩田紳二,ITmedia]